チェルシー・ゲデス「買春者と業者を非犯罪化しても、私たちの安全と生活は改善されない」

チェルシー・ゲデス

Nordic Model Now!, 2018年8月26日

 チェルシー・ゲデスさんは、ニュージーランドの合法的な売春店で長年経験を積んできた。ニュージーランドでは、性産業に対する完全な非犯罪化アプローチが、売春に対する最も賢明な解決策であるとよく言われる。 この記事で、彼女はそれに同意せず、逆に客の要求がより厳しくなり、より権利を主張するようになり、彼女のような女性たちにとってより安全な環境を作ることはできなくなったと説明している。――NMN編集部

 かつて男たちは、私たちに対してなされるセックスが私たちの望むものではなく、ただお金が必要なだけだと知っていた。だからといって、彼らがお金を出して私たちを助けようとか、私たちをレイプすることなしに立ち去ろうという風には考えなかった。とはいえ、彼らは私たちを搾取していることにわずかでも罪悪感を抱くことで、私たちをほんの少し優しく扱うようになり、自分たちの欲望を満たしたら、私たちにそれ以上の迷惑をかけることなくさっさと帰るようにしていた。

 しかし、現行の非犯罪化立法が施行され、セックスワーク派のプロパガンダがメディアにあふれることで、ますます多くの男たちが、私たちが合意の上でセックスをしていると思い込むようになり、私たちが彼らにお金を請求するのは、痛苦への報酬でも被害の補償でもなく、単にそうすることができるからだと信じるようになっている。そのせいで、男たちはお金を不当に巻き上げられていると感じている。「2人の成人が同意の上でセックスしているのに、なぜわれわれ男が金を払わなければならず、女の方はただお金を受け取るだけなのか?」。こうして、男たちはいっそう怒りっぽくなり、いっそう暴力的になっている。

 男たちはますます多くを要求し、ますます少ない金額を支払うようになっている。

 申し訳ないが、そうじゃない。私たちはあなたたちとセックスしたいわけでも何でもない。私たちはあなたたちの求めに応じて性器を酷使し、他のレイプ事件と同じようにレイプによる肉体的、精神的な影響を受けているが、違うのは、私たちの場合、そのトラウマが何度も繰り返されることだ。そう何度も何度もだ。家賃分が手に入るまで何度も何度も、食費が手に入るまで何度も何度も、ベビーシッター代が手に入るまで何度も何度もだ。そして、繰り返される性的虐待という現実に耐えるために依存するようになった薬物の代金を売人に払うために何度も何度もだ。来週も再来週も耐えなければならないと思いながら。その次の週には、生理中になんとか休みを取れるかもしれない。あるいは、スポンジを体内に押し込んで、目立たないように手を伸ばして取り出し、2時間ごとに洗い流すことになるかもしれない。その間、すでに痛んでいる女性器を男たちに繰り返し酷使され、生理やその他の人間的機能があることを〔客が萎えるので〕けっして口にしないよう求められる。そして、笑いと従順さとが私たちに許される唯一の自己表現だ。

 もし私たちが、最低でも生活賃金が支払われ、セクハラがなく、男性と同等の仕事をすれば同一賃金が得られるような、まともなキャリアを持っていたら、あなたたちに触れさせはしない。もし私たちが完全な人権を持つ完全な人間として扱われる社会に生きていたなら、あなたたちに指一本触らせはしない。もし、私たちが性差別や階級差別、そしてしばしば人種差別によって抑圧されていなかったら、あなたたちに指一本触らせはしないだろう。

 そして私たちは、自分が性的に惹かれ、興味を持った人たちとだけ、そして相手の悦びのためだけではなく、私たち自身の悦びと満足のために、セックスをするだろう(あるいはしないだろう)。

 自分自身の性欲に駆られて、次々と見知らぬ男たちとセックスするような女性にただの一度も会ったことはない。すなわち最低限の安全対策を必死に守りながら、見知らぬ男たちの欲望に応えることで、局部が痛くなったり、腫れたり、擦れたり、裂けたりするまで我慢する、そんなことを自分自身の性欲に駆られてする女性にただの一度も会ったことがない。

 いや、これは同意ではなく、強要なのだ。これはセックスワークではなく、レイプだ。これは経済的な搾取だ。これは女性への抑圧なのだ。私たちは、同意にもとづくセックスに料金を請求して男からお金を巻き上げているわけではない。

 買春客や業者を非犯罪化しても、私たちの安全や生活は改善されない。コンドームを配布するだけの売春婦団体ではまったく不十分だ。本当の支援サービスが必要なのだ。私たちは、自分の国に対してもっと多くを求めるに値する存在だ。

出典:https://nordicmodelnow.org/2018/08/26/no-decriminalisation-of-johns-and-pimps-has-not-improved-our-safety-or-lives/

関連記事(ニュージーランド)

投稿者: appjp

ポルノ・買春問題研究会(APP研)の国際情報サイトの作成と更新を担当しています。