【解説】よく翻訳させていただいているイギリスのジャーナリストでフェミニスト・アボリショニストのジュリー・ビンデルさんの最新記事の翻訳です。セックスワーク派の売春ロビーとトランス活動家がなぜ仲良く手を結んで活動しているのかについて、簡単に考察しています。
ジュリー・ビンデル
2023年11月16日
毎年恒例の「トランス殺害モニタリング」報告書だが、その統計を見て、拙著『売買春の美化――セックスワーク神話を根絶する』(2017年)の一章の要約版を公表する気になった。報告書によれば、「世界的に、殺害されたトランスの人々のうち職業が判明している人のほぼ半数(48%)がセックスワーカーだった。これはヨーロッパだと4分の3(78%)に跳ね上がる」とのことだ。

私は20年以上にわたってグローバルな性売買について研究してきた。このトピックに関する私の著書は、現在でも最も網羅的なものの一つである。私は性売買の中にいる女性、男性、トランスジェンダーに対する殺人、暴力、その他の深刻な被害の割合について詳しく調査し、トランス女性の殺害が主に売買春の中のピンプや買春者によるものであり、ミソジニーによって動機づけられたものであることに強い確信を持っている。これらのトランスの人々がトランスフォビアのせいで殺害されたと言うのは、まったく軽率でミスリーディングである。どんな殺人も悲劇だが、このように枠づけすることは真実を捻じ曲げることになる。
売買春に関わった多くのトランス女性が殺害され、深刻な被害を受けているのら、当然、トランス活動家たちは性売買の廃止を求めるキャンペーンを行なうと人は思うことだろう。しかし、実際にはまったく逆である。なぜトランス・ロビーとセックスワーク・ロビーがこれほどまでに密接に絡み合っているのか、以下の考察はそのことの理解に役立つかもしれない。
ジュリー・ビンデル
トランス運動と「セックスワーカー権利」運動との同盟(2017年)
「私たちは近年、直接セックスワークをしているか、セックスワークに関係している非常に多様な人々を、私たちの運動に結集させることに成功している。女性、男性、トランスジェンダー、ストリップやBDSMなど、さまざまなタイプのセックスワークをしている人たちだ。共通の障害は、セックスワーカーが犯罪者扱いされていること、国家当局による虐待や汚職、暴力があること、安全で快適な住居がないこと、あるいはそれへのアクセスが受けられないこと、である。だから、そうした共通の障害を特定することで、同盟関係を築き、組織を成長させることができる」(イリーナ・マスロヴァ、シルバーローズ、ロシア、2015年)。
トランスジェンダーのアイデンティティ政治の台頭は、売買春といわゆる「ジェンダー・クィア」のアイデンティティを融合させようとする激しい試みをもたらした。トランスジェンダーであることと売買春の経験は、同じものではないにせよ、非常によく似ていると主張するために使われる議論がいくつかある。ひとつは、トランス女性の多くが正規の雇用を見つけることができなかったり、手術費用を支払うために早急に現金が必要であったりするため、性売買に走るというものだ。もうひとつは、私たちはみなひとつの大きな幸せな虹の同盟の一部であり、「セックスワーカーの権利」、トランスの権利、そしてクィアの権利はひとつであるというクィア的主張である。この議論が見失っているのは、女性に対する男性権力の分析である。実際、「トランス女性」は別とすれば、女性は方程式から完全に排除されている。
「SWERF」と「TERF」という最近作られた略語は、トランスジェンダー問題と「セックスワーカーの権利」問題は、文字通り、一方を支持しなければもう一方を支持することができないほど融合してしまっているという私の持論を裏づけている。SWERF(セックスワーカー排他的ラディカル・フェミニスト)とTERF(トランス排他的ラディカル・フェミニスト)は、どちらもうまく韻を踏んでいる。どちらのグループも、自分たちの関心を融合させることがいかに重要かを理解しているようだ。売買春推進のロビイストはトランスジェンダー・ロビーからの支援を頻繁に利用しており、逆もまた然りである。私は、英国議会で性交渉の対価を支払う者〔買春者〕を処罰する法律の導入を求めるキャンペーンを行なった際、両者の協力が両グループにとっていかに好都合であるかを思い知った。当時は2009年で、人身売買やその他の方法で強要された相手からのセックスの購入を犯罪とする法案が審議されていた。ピンプによる支配や強要を受けたことを証明できる女性たちと、性売買の中で別のやり方で虐待や搾取を受けている女性たちとを区別することになり、取り締まりが事実上不可能になるため、多くの人が懐疑的だったにもかかわらず、この法案を成立させることが重要だと考えられていた。
元自由民主党の上院議員のベリンダ・ブルックス=ゴードンは、イギリスにおける主要な売買春肯定派の学者の一人で、彼女のイデオロギーに賛同しない人々による性売買に関する著作を頻繁に批判している。ブルックス=ゴードンは、私が共同執筆者として行なった大規模売春店に関する調査に対して、『ガーディアン』紙に掲載された攻撃文の署名者である。私はケンブリッジ大学やBBCラジオ4の番組『ウーマンズ・アワー』などで、彼女と何度も討論したことがある。
新法案について下院と上院で討論が行なわれる間、ブルックス=ゴードンは法案に反対する勢力の結集に深く関わっていた。彼女は、売買春の買い手たちが被買春女性を「レビュー」するサイトなどにメッセージを投稿した。スティーブ・エルロンドは常習の買春者であり、売買春の包括的非犯罪化をめざすロビイストであり、他の買春者に女性を広告するウェブサイトの所有者でもある。エルロンドはブルックス・ゴードンからのメッセージを当時の彼の個人ウェブサイト(今はもう存在しないが、アーカイブサイトにアクセスすることができる)に掲載した。
「ベリンダ・ブルックス・ゴードン博士(ママ)は私たちの権利のためのロビー活動に秀でており、以下のメッセージを広げるよう求めている」とエルロンドは書いている。ブルックス・ゴードンのメッセージには、売買春の中の女性たち(彼女が言うところの「セックスワーカー」)と買い手(「クライアント」)の双方が、あらゆる政党の国会議員に働きかけて、需要を犯罪化する法律の導入に反対票を投じさせるべき理由が書かれていた。彼女は次の行動を説明する前に、さまざまな問題で同盟を結ぶことがいかに重要かについてこう説明している。
「木曜日の夜、私はトランスジェンダーのグループと話をして、彼らが法案に反対すべき理由を説明するつもりだ(このことについては、揺れている人(ママ)もいる)」とブルックス=ゴードンは、書いている――「彼らがストーンウォール賞におけるノミネートの際に反ビンデル・デモをしたのは結構なことだが、セックスワークはまた別問題だから、彼らにこの問題にも取り組むよう働きかけるつもりだ。このデモを通じて良いつながりができた。もし誰かいっしょに来たい人がいたら、歓迎するよ」。
前年、私は毎年恒例のストーンウォール賞の『ジャーナリスト・オブ・ザ・イヤー』部門にノミネートされ、最終候補に残った。私のノミネートが発表されるやいなや、トランスジェンダーのコミュニティと多くのゲイ・プレスは大騒ぎになった。2004年に『ガーディアン・ウィークエンド・マガジン』に書いた記事を根拠に、私はことあるごとに「トランスフォビア」と非難されている。私はこの賞にノミネートされることを希望していなかったが、抗議が始まるとすぐに、私はイベントに出席しなければならないと思った。
到着してみると、100人をはるかに超える抗議者たちが、私のノミネートは撤回されるべきであり、私が「ヘイトスピーチ」を売り込んでいると主張していた。トランス活動家たちの傍らには、売買春推進派のロビイストたちや、学者たちもちらほらいた。このデモは、当時、イギリスにおけるトランスジェンダー活動史上最大のものであり、それに関する多くの宣伝が行われた。
デモの主な組織者の一人は、ブルックス=ゴードンの同僚であるサラ・ブラウンだった。このストーンウォールでの騒動を見て、ブルックス=ゴードンは、買春需要を犯罪化する法律に反対する運動にトランスジェンダー・ロビーのメンバーを引き入れ、性売買の全面的非犯罪化を求めていっしょに運動を展開する好機だと考えた。
興味深いのは、少なくともブルックス=ゴードンによれば、2009年当時、トランスジェンダーのロビイストの何人かは、売買春推進路線に対する支持を表明することに関して「揺れていた」ということだ。今日、彼らはまったく揺れておらず、売買春に反対するトランスジェンダーのロビイストを見つけられないほどだ。
現在イギリスでは、いくつかの地方支部と2つの主要政党が、性売買春に関する政策の立案と実施に関する責任をLGBT議員連盟に与えている。たとえば自由民主党では、トランス女性が定期的に会議で発言し、性売買の全面的な非犯罪化を支持する動議を可決しようとしている。これは緑の党(ただし、LGBTIQA+と名乗っている)や労働党のいくつかの地方支部も同じだ。
たとえば、労働党イズリントン支部のLGBTコーカスの主要メンバーは、キャサリン・スティーブンスである。スティーブンスは国際セックスワーカーユニオン(IUSW)の創設者である。IUSWは、売春推進派の学者、買春者、ピンプ、売春店主、その他性売買の非犯罪化を求めるロビイストが集う偽組合である。過去10年間、私はスティーブンスを会議やその他の公的な会合で見かけてきたが、彼女がレズビアンやバイセクシャルであると宣言するのを聞いたことがない。しかし、彼女は現在、バイセクシャルだと自認しており、これは彼女がLGBTグループ内で正当性を認められたことを意味する。
「セックスワーク」に対するトランスの影響力
サラ・ノーブルは自由民主党の活動家で、売買春推進派のトランス女性だ。2014年、ノーブルは売買春の非犯罪化を求める演説を行なった。同じくトランス女性であるブラウンも、非犯罪化を求めるスピーチを会議で行った。
ジャネット・モックはMtFのトランスジェンダー活動家で、2014年にトランスジェンダーとしての人生を振り返った回顧録『現実を再定義する――女性への道、アイデンティティ、愛、その他』を出版し、一躍有名になった。この本に添付されたビデオの中で、モックは子どもたちが性売買に入ることを祝福しているように見える。「私が初めてマーチャント・ストリート(性売買するトランス女性の「散歩道」と呼ぶ人もいる)を訪れたのは15歳の時だった。当時、私は医学的に移行(トランジション)を始めたばかりだった。そこは私の友人や私のような若い女の子たちがたむろし、男たちといちゃつき、ふざけ合い、私たちのコミュニティの伝説である年配のトランス女性と交流するために行く場所だった」。
モックはさらに、ポルノやストリップクラブで使われていた女性たちを含め、その地域の売買春の中のトランス女性たちをいかに「偶像化」していたかを説明する。「彼女たちは私が出会った最初のトランス女性たちであり、私はトランス女性であることとセックスワークとをすぐに密接に関連づけるようになった」とし、トランス女性にとっての「通過儀礼」としての性売買の役割を理解するようになったと説明する。
モックは、売買春を「恥ずべきもの、貶めるもの」として描き出すメディアの役割について軽蔑的に語る。多くの売買春推進ロビイストと同様、モックは売買春につけられたスティグマを極めて有害なものと考え、そのことを買春者、ピンプ、売春店経営者が被買春者に与える害よりも優先している。それどころか、モックは性売買を非難すれば、性売買をする人々への暴力につながると強く示唆し、性売買に否定的な見方をする人は売買春をする人々の「人間性を奪う」とまで主張している。
モックは言う。「セックスワーカーはしばしば軽視されており、このことのせいで最もリベラルな連中でさえ、性売買の中の女性たちの人間性を否定し、価値を下げ、貶めるようになる。性売買の中の女性たちに対するこの広範な非人間化は、多くの人々がセックスワーカーが直面している口封じ、残忍さ、取り締まり、犯罪化、暴力を無視し、彼女たちがすっかりダメになっていて、淫乱で、無価値だとさえ非難することにつながっている」。
モックが先に述べたように、彼女は売買春をトランスジェンダーであることと結びつけることを学び、売買春が恥ずべきことであるとみなされていることを学んだため、トランスジェンダーであることも恥ずべきこととみなされるようになったと主張する。「私は、トランスであること、褐色であること、貧しいこと、若いこと、女性であることを、自分のボディ・イメージの問題、自己意識、内面化された羞恥心から切り離すことができなかった」。
これは奇妙で危険な議論だ。モックは事実上、性売買を完全にノーマルなものとして脱スティグマ化しないかぎり、自分のようなトランス女性が「女性であること」に誇りを感じることはできないと言っているのだ。ここでの議論の意味について考えてみよう。まず、売買春とトランスジェンダーであることを完全に混同している。そして売買春を「エンパワーさせる」ものだと理解しなければ、トランス女性は自己嫌悪に陥るという、かなり操作的な議論である。
モックはこう書いている。「これらの女性たちは私に、私や私の体は何も悪くない、望めば道を示すよと教えてくれた。低所得で周辺化された女性たちによって作られた資源の地下道があったからこそ、16歳の私は初めての客と一緒に車に乗り、自分の生存と解放への道を選ぶことができたのだ」。
売買春は解放のためのものであり、それを非難することは、周辺化された女性や少女が生き残れなくなることを意味する、というわけだ。
「トランスフォビア」――アボリショニストへの中傷
2011年にデンマークのコペンハーゲンで開かれた会議では、売買春のロビー団体とトランスジェンダーの権利団体の両方が高度に組織化されており(両者はラディカル・フェミニズムへの憎悪で結ばれた)、私は性売買の中の暴力に関するスピーチの最中に、「トランスフォビアをなくせ」「セックスワーカーの権利はトランスジェンダーの権利」といったスローガンが書かれたプラカードを持った男女たちから罵声を浴びた。
私は、1979年に『トランスセクシュアル帝国』を著したジャニス・レイモンドとともに、フェミニズムのアボリショニスト団体とデンマーク政府が共同で開催したこの会議でスピーチをしていた。レイモンドは、私やその他多くのラディカル・フェミニストたち――性売買に反対するとともに、ジェンダーは生まれつきのものだとか、生物学的な性別と結びついているという考え方に反対する立場をとっている――とともに、多くのプラットフォームでしばしば発言を妨げられている。
先に述べたように、この原稿を書いている現在、私はノルウェーのオスロで開催される売買春と人身売買に関する会議の基調講演を拒否されたところだ。私の講演は、国際的な売買春ロビーの戦術と主張に焦点を当てる予定だった。国際会議を主催したのはノルウェー社会主義左翼党(SV)である。イベントの1週間前、SVと協力してイベントを企画していたフェミニスト団体「女性戦線(Women’s Front)」は、「トランスフォビア」を理由に私を招待しないよう告げられた。トランスの人々から、私が彼らの「安全な空間」を脅かすという苦情が何件も寄せられていたという。この苦情を出した連中は会議に参加するために登録していたが、私の登壇が撤回されたと発表されると、すぐに参加登録を取り消した。これらの連中はみな、この会議に参加していたフェミニストや、私の参加禁止を報道したジャーナリストによって、売買春推進派であることが確認された。
SVは、少なくとも公式には、2008年にノルウェーで導入された買春を犯罪化する法律を支持している。しかし、『フェミニスト・カレント』の創設者であるフェミニスト・ジャーナリストでブロガーのミーガン・マーフィーらが調べたツイッターのスレッドによれば、私に対する抗議は、ノルウェーの買春者を非犯罪化する法律およびそれをSVが支持することに不満を持つSVの男性メンバーによって組織されたものであることが明らかになった。
さらに、これらの男たちが、トランス女性を実際に傷つけている連中、すなわち男による暴力や、私が議論しようと思っていた性売買の中でなされている男による暴力について、文句を言ったり抗議したりしたことがないことは明白だった。トランス女性を最も効果的に保護する法律を弱体化させるための策略としての有用性を除けば、トランス女性の生活に影響を及ぼす現実の問題に対して、この男たちが何の関心も抱いていないことは自明だった。
左派の日刊紙『階級闘争(Klassekampen)』に掲載された私の登壇禁止(ノープラットフォーミング)に関する記事に続いて、私の登壇を阻止するキャンペーンの主唱者の一人でノルウェーの売買春推進団体PIONと親しい団体FRI(ジェンダーとセクシュアリティの多様性を考える会)のリーダー、イングビルド・エンデスタッドによる手紙が同誌に掲載された。その中でエンデスタッドは、この記事を書いたジャーナリストが私にインタビューしたことに明らかに不快感を示している。「SVは、ビンデルのトランスジェンダーに対する意見に異議を唱える場を作ることができたはずだ」とエンデスタッドは書いている。「そうする代わりに、彼女は自分の差別的な意見について責任を問われることなく、自由に話すことができる舞台を提供された」。おそらくエンデスタッドは、公的なイベントでスピーチする人で、トランスジェンダーに関して彼女の同意しない意見を持っている人は、何について話すにしてもトランス問題をめぐってボコボコにされるべきだと提案しているようだ。
トランスジェンダー活動家と売春ロビー団体のつながりは、多くのトランス女性が主流の労働市場から排除されたために性売買の世界に入ったという主張で説明されることが多い。私は別の関係を提案したい。トランス女性全体のアイデンティティの一部は、自分が超セクシュアルであることを示すことにある。自然な女性など存在しないのだから、ありうるのは理想化されたそのイメージだけであり、そのイメージは男性の視線によって作られる。
トランスジェンダリズム、売買春、人種に対するポストモダンの考え方の滑稽さは、『ソーシャルサイエンス・グラヂュエイト・ジャーナル』(2105年)に掲載されたジェット・ヤングの論文「曖昧化される境界――変化する社会的景観におけるセックスワークの争われる自然」で見事に浮き彫りにされている。同論文のサブタイトルはこうなっている。「中国系ディアスポラのトランス男娼が、セックスワークという争いの場について考察する。帝国主義の戦略としての娼婦フォビア、女らしさの継続的抑圧、そして挿入の不透明な政治について考察する」。
LGBTキャンペーンへの便乗
「LGBTとセックスワーカーの権利が手を取り合う理由」と題するハフィントンポストの記事で、自らを「インターセクショナル・フェミニスト」と称するライターのステファニー・ファーンズワースは、次のように論じている。「LGBTの権利に対する要求の核心は、すべての人が自分の人生と身体に対する自律性を認められるべきであり、誰でも自分が選んだ相手と寝ることが許されるべきであり、それ当事者だけに関係することであって、政府や差別者には関係ないという考えである。これとまったく同じ考え方が、セックスワーカーの闘いの核心にある。なぜ彼ら・彼女らにも同じ自由が認められないのか? なぜ彼ら・彼女らが選んだ相手とセックスすることが許されないのか? LGBT活動家が身体の自律性を求めて闘う一方で、セックスワーカーに対してはそれを否定するのは、単なる偽善だ」。
感情労働からセックスへ、家事から妻や恋人へ、クィア・リベラルの路線は、搾取をワークとして再定義することだ。代理出産と売買春との類似性を痛烈に批判した『存在することと買われること(Being and Being Bought)』を書いたジャーナリストでフェミニストのカイザ・エクマンは、私にこう言った。「クィア運動は、売買春の中にいた一部の人々にとっての避難所なのだ。過剰に酒を飲み、ドラッグを大量にやり、売買春をしていたとしても、クィア運動は裁かないことを知った。その運動には、自分にとって良くない経験を美化する自己破壊がたくさんあり、それはゲイ運動にも当てはまる」。
売買春推進の活動家たちは、より幅広い「秩序攪乱」グループと手を組むことが、自分たちにとって有利であることをよく知っている。2000年初頭に、ごく小さなトランスジェンダーのコミュニティがレズビアン・ゲイ解放運動と手を結んだのと同じように、「セックスワーカーの権利」運動は、この新しく成長し続ける虹の同盟から、より広い支援を得る機会を得たのである。レズビアン&ゲイ運動はLGBT運動となり、さらに拡大し続け、ごく少数のグループ(どうやらそこには異性愛者の大多数が含まれるようだ)を除いて、アルファベットのほぼすべての文字を網羅するまでになった。
新しい同盟の恩恵を受けた活動家の一人が、ロシアのプロジェクト「シルバーローズ」の創設者であるイリーナ・マスロヴァだ。インタビューの中で彼女は、近年シルバーローズは「セックスワークに直接間接に関係している人たち」、つまり非常に多様な人々を集めることに成功していると話した。
マスロヴァによれば、そのような人々は、街頭売買春や屋内売買春をする人々、薬物使用者、そして「独立して自分のために働く人々と第三者のために働く人々」で構成されているという。彼女は続けた。「女性、男性、トランスジェンダー、そしてストリップやBDSM(サドマゾ緊縛)など、さまざまなタイプのセックスワークをしている人たちがいる。だから、彼らは共通項を見つけることによって、この一致団結した運動を作り上げることができたのです」。
出典:https://juliebindel.substack.com/p/a-queer-defence-of-the-sex-trade