【解説】以下は、Nordic Model Now!による、ネット上の売買春広告サイトの禁止ないし規制を求める請願署名です。宛先はイギリスの政府高官などですが、インターネットのサイトはどの国からでもアクセス可能であり、このようなサイトが及ぼす影響はイギリス(より厳密にはイングランドとウェールズ)にとどまりません。また署名それ自体も、イギリス人に限定したものではなく、どの国に在住していても署名可能なものとなっていますので、みなさんもぜひご署名ください。
署名の発信者:Nordic Model Now!
開始日:2023年10月29日
署名の宛先:James Cleverly MP(Secretary of State for the Home Department)、他15名
はじめに
商業的な性風俗サイトは、今日の赤線地帯であり、メガ売春店である。そのおかげで、性的な目的や虐待のために女性を買うことが、かつてないほど簡単になった。男性はもはや、車に乗って通りを徘徊して買う女性を物色したり、街の中心部の脇道にある地元の売春店まで行く必要はない。オンラインで女性のカタログを閲覧し、まるでピザを注文するかのように、自分のアパートやホテルの部屋まで女性を送り届けさせることができるようになったのだ。
これは売買春をノーマルなものにし、売春業界の急速な拡大を招き、少女や若い女性たちが売買春の中でより残忍な扱いを受け、より多くの破滅的な人生を送ることになった。そのつけを社会全体が支払わされている。
現在イギリスでは、商業的な性風俗サイトは自由に運営されている。こうしたサイトが法律で取り締まられるどころか、警察は彼らと協力関係にあり、こうしたサイトに掲載された女性たちから金を巻き上げているピンプや人身売買業者を起訴することに、ほとんどないしまったく関心がない。
私たちは、性産業ロビイストの「セックスワークは本物の仕事だ(sex work is real work)」という主張を受け入れないし、性産業に反対できるのは道徳的に堅物だけだという彼らの主張も受け入れない。これは女性の尊厳と平等に対する人権に関わる問題である。今こそ社会は、この非人間的な産業にフリーハンドを与えることを望むかどうかを真剣に考える時である。
この請願書に署名し、商業的な性風俗サイトを閉鎖し、ピンプや性的人身売買の責任を問うべきだと考えていることを示そう。
ミーガンの物語
20代前半のミーガン(仮名)は、幼少期に受けた性的虐待の後遺症が重なり、危機の真っ只中にいた。憂鬱と孤独から抜け出そうと、彼女はオンラインの出会い系サイトに登録し、そこでポール(仮名)と出会った。彼はミーガンをパーティに誘った。彼女はそれで元気が出るかもしれないと思って、承諾した。しかし、ポールはパーティーに連れて行く代わりに、人里離れたB&Bに連れて行き、そこで彼女を、金と引き換えにセックスするつもりの別の男に引き渡した。逃げ場がなかったので、彼女はそれを受け入れざるをえなかった。
そうしている間に、ポールは彼女の知らないところで、また彼女の許可も得ずに、別の女性の写真付きIDを使って、ある大手の商業的性風俗サイトに彼女のプロフィールをアップした。こうして、彼はミーガンにさらなる売買春を強要した。そのたびに、彼は料金の50%を懐に入れた。
それがミーガンの人生で最も暗いエピソードの始まりだった。毎日の日課は、お金と引き換えにセックスし、ベッドで泣きながら人生の終わりを願うというサイクルになった。幸いなことに、彼女は最終的にポールと業界の魔の手から逃れ、人生を立て直すことに成功した。
後に彼女は、彼が同じような手法で他の若い女性たちを何人も売春させて、それによってかなりの財産を築いていたことを知った。彼の成功は、AdultWorkやVivastreetといった大手商業性風俗サイトへのアクセスに完全に依存していた。
ピンプの夢
イギリスでは、オンライン売春広告の大半は、数少ない大手商業性風俗サイトに集中している。これにより、広告主は膨大な数の潜在的顧客(買春者)に素早くリーチすることができる。一人の広告主が複数の女性の広告を掲載することができ、広告に掲載される各人には写真付きIDが要求されるが、チェックは甘く、そのIDが広告の裏で売られている実際の女性のものであることを確認する方法はない。成人女性を装った広告の裏で子どもを売るピンプのケースも確認されている。
このため、誰かがピンプになって、手っ取り早く莫大な利益を上げることは容易である。疎外された少女や若い女性を見つけて広告を出せば、あとは金が転がり込んでくるのを待つだけだ。そして、彼が複数の女性に売春させ、昼夜を問わず何度も売りさばくことを止めるものは何もない。
計算してみてほしい。ピンプ行為〔女性に売春させて金を儲ける行為〕や性的人身売買を取り締まる法律がほとんどまともに施行されていないイギリスでは、ピンプは驚くほど儲かる商売であり、リスクはほとんどない。
業界の拡大
商業的性風俗サイトは、第三者がほとんどリスクを負うことなく新しい女性や少女を性産業に参入させることを容易にするため、イギリスでは性売買が大きく拡大した。この拡大は、過去15年ほどの間にこうしたサイトが発展したのと軌を一にしている。
こうしたサイトを通じて行われるピンプ行為や性的人身売買の規模は、どの警察も適切に対処できる能力をはるかに超えている。
ノーマライゼーション効果
イギリスは、アムステルダムのような飾り窓売春店も、ドイツのような巨大な高層メガ売春店もないと自負しているかもしれない。しかし、同じような問題を抱えていないと考えるなら、私たちは自分自身を欺いている。
大手の商業的性風俗サイトは、イギリスのメガ売春店である。そこでは、使い捨ての女性たち(多くは若いか、非常に若い)が性的に利用可能であり、男性のあらゆる性的気まぐれや性的フェチを自ら進んで満たそうとしているかのように見える。このことは、女性は常にセックス用に準備されている、女性は時間貸しできる商品であることを示唆し、そしておそらく女性は男性とセックスする義務がある、ということさえ示唆している。これこそ、これらのウェブサイトが少年や若い男性に教えている論理である。
これは社会にとって破滅的である。このような態度が女性や少女に対する暴力と関連していることは、長年にわたる調査で明らかになっているからだ。したがって、女性や少女に対する男性からの暴力がエスカレートしているのを目の当たりにしても、何ら不思議ではない。
そして、商業的な性風俗サイトは、少女や若い女性にどのようなメッセージを送っているだろうか? 男を喜ばせることが、すべての女性や少女にふさわしいことだということか? 性は金儲けや出世のために使うべき商品だということか? 売買春は悪いことではないし、それを利用しないのは愚かだということか? 売買春が有害なら、政府はこのようなウェブサイトを許可しないはずでは、ということか?
このことはすべての女性を苦しめ、女性を標的にしやすい存在にする。
しかし、このようなウェブサイトは、当事者女性にとってより安全なものにするのではないのか?
もし本当にそうだったなら!
生活の多くがインターネットを通じて行われるようになった今日、これらのウェブサイトを安全にするのは簡単なはずだと思うだろう。銀行口座を開設したり、Airbnbで部屋を予約したり借りたりする場合、パスポートや運転免許証をスキャンした画像をアップロードしなければならないことに、私たちは慣れている。
しかし、そこに問題がある。Airbnbでは、広告主と顧客の双方が写真付き身分証明書をアップロードして本人確認をしなければならない。これは、何か問題が起きた場合に両者を保護するものだ。双方が相手の身元を証明できるため、最悪の場合、法的措置を取ったり、警察に通報したりすることも可能だ。
前述したように、商業的な性風俗サイトでは、広告を出す相手に写真付き身分証明書の提示を求めているが(ミーガンの話が示すように、これも安全とは言いがたいが)、買春者には同じことを求めてはいない。
なぜそうしないのか不思議に思うかもしれない。その答えはもちろん、ビジネスに悪影響があるからだ。サイト側は、このような措置を導入すれば、買春者のほとんどが他のところに行ってしまうことを十分承知している。買春者たちは特定されることを望んでいない(だからこそ、彼らはしばしばパートナーのスマホや電子メールアドレスを利用したり、現金で支払ったりする)。そして彼らのほとんどは何よりも、自分が困窮した女性にお金を払ってセックスしていることを妻や雇用主、地域社会に知られたくないのだ。
そのため、双方がお互いのレビューを書くことはできるが、もし買春者が悪いレビューを受けた場合、Airbnbとは異なり、彼は新しいプロフィールを作成してやり直すことができる。
つまり、スクリーニングの仕組みは弱いか、存在しないということだ。昨年、マーク・ブラウンが登録ユーザーだったアダルトワークを通じて知り合った2人の女性を殺害した罪で有罪判決を受けたとき、その効果の低さが実証された。
しかし、広告の多くは、ログインしていない人に女性の連絡先を表示している。つまり、(そのような)スクリーニング・オプションは完全に無意味になっている。営利目的の性風俗サイトは女性を安全にはしないのだ。
コントロールとハラスメントのメカニズムとしてのレビュー
これらのサイトに登録する際、買春者は写真付き身分証明書を提示する必要がないため、レビューの仕組みには、売買春のシステムそのものと同じように、力の不均衡が組み込まれている。
買春者のレビューによって、女性がどれだけの料金を請求できるのか、どれだけの買春者を惹きつけることができるのかが決まる。買春者はこれを自分たちのために利用する。たとえば、女性により暴力的でより危険な行為をするよう強要したり、料金を割り引いたりするのだ。独立した買春者フォーラム(たとえば「UKパンティング」など)は、男性が自分たちの意に沿わない女性に報復するさらなる機会を提供する。時には、男性グループがこのようなプラットフォームを利用し、個々の女性に対して組織的な攻撃を加えることもある。
もちろん、ピンプは、自分が支配する女性が悪い評価を受けたときに、しばしば暴力を伴う独自の報復システムを持っている。
サイト運営者は警察と提携することで影響力を得る
商業的性風俗サイトは、広告に掲載される女性の売買春を可能にし、利益を得ている。つまり、彼ら自身がピンプをしているのだ。
恥ずべきことに、イギリスの法執行当局はこれらのウェブサイトを、人身売買や性的搾取と闘うパートナーだと考えている。これは、麻薬密売との闘いにおいて麻薬王と提携するようなものだ。このため、商業的性風俗サイトを運営する企業は、法執行機関との関係を利用して自分たちの地位を向上させ、信用を得ることができる。そして、自分たちの利益になるような法律や政策を求めてロビー活動を行なうのだ。
彼らは、サイトをより安全なものにするために努力していると主張するが、実際に変化をもたらす可能性のある、買春者に写真付き身分証明書のアップロードを義務づけることについては、まったく考慮していないようだ。
これらのサイトを閉鎖すれば、すべてが地下に潜ることになるのではないか?
よく主張されるのが、商業的性風俗サイトを閉鎖すれば、男性からの需要レベルは変わらないから、性産業は他の場所、たとえばダークウェブなどに移動するだけで、女性たちはより危険にさらされることになるというものだ。
しかし、ダークウェブはオープン・ウェブよりもアクセスが少ないため、一部の売春広告サイトがダークウェブに移動したとしても、オープン・ウェブのような規模の効果はないだろう。法執行機関や支援サービスは、買春者と同じようにダークウェブでも見つけることができるが、規模が小さくなるため、適切に対処できる可能性が高くなる。
買春というのは多くの点で日和見的である。それがあからさまに目の前にあり、それが、合法的な広告サイトで取り囲まれ、当局によって黙認されていると、売買春がノーマルなものとされ、それが容認されているというメッセージが発信される。その結果、このような行為に手を出す男性が増え、少女たちは男性の性的利用や虐待のために利用される人生を受け入れるようになる。
米国のエビデンスによれば、こうしたサイトに対する効果的な法律が導入されると、業界の規模は大幅に縮小する。
法律はテクノロジーに追いついていない
2001年、イギリスの労働党政権は電話ボックスの中や近くに売春の広告を出すことを犯罪とした。当時、そうした広告が屋内売春の主な宣伝方法だった。カードやステッカーは今でも一部の地域では一般的だが、もはや屋内売春の主な宣伝方法ではなく、主に大手の商業的性風俗サイトのオンライン広告に取って代わられている。
この新しい現実を反映するために、法律が更新されるべき時期に来ている。
イギリスは国際法に違反している
CEDAWとパレルモ議定書を批准したイギリスには、売買春の中の女性たちから利得を得ている第三者と闘い、売買春や 性的搾取を助長する需要を阻止する措置をとるという、国際法上の拘束力ある義務が存在する。
商業的性風俗サイトは、第三者が女性の売買春から利益を得るのを助長しているだけでなく、彼ら自身も女性の売買春から直接利益を得ている。さらに、売買春を可能にし、助長し、常態化させることで、売買春や性的搾取のための人身売買を助長する需要も促進している。
つまり、イギリスはこうしたウェブサイトを容認・合法化していることで、CEDAW(第6条)とパレルモ議定書(第9条)の両方の義務に違反しているのだ。
私たちが求めるもの
イングランドとウェールズにおける主なピンプ犯罪は、「売春を営利目的で行ない、または扇動すること」と「営利目的で売春を管理すること」であり、2003年性犯罪法の第52条と第53条がそれである。これらは起訴が容易ではなく、実際にはほとんど用いられていない。
そのため私たちは、(a)第三者の売買春を可能にする、または促進すること、(b)情を知ってそのことから利益を得ること、という新たな犯罪規定を導入し、この法律に違反するウェブサイトを閉鎖し、またはそれへのアクセスを制限し、その利得を差し押さえる仕組みとともに、商業的性風俗サイトの背後にいる者たちに対して積極的に同法を適用することを求めている。
これは、売買春の中の女性たち(およびその他の人々)に対する、実行可能な代替案や、売買春から抜け出すための真のルートを提供するサービスのための、独立の資金と組み合わせる必要がある。サイトから差し押さえられた利得は、これらのサービスの資金に充てられるべきである。