ジュリー・ビンデル「有料レイプを『セックスワーク』と呼ぶ『ガーディアン』紙」

【解説】本稿は、イギリスのジャーナリストでアボリショニスト活動家であるジュリー・ビンデルさんのブログの最新記事の翻訳です。売買春の被害者を「セックスワーカー」と一律に表現する習慣はかなり以前から『ガーディアン』や『BBC』のような欧米のリベラル系・左派系のメディアや学術記事で一般化していますが、そのことに改めて抗議の意思を示した記事です。

ジュリー・ビンデル

2024年2月29日

 1999年から、そしておそらくそれ以前から、イアン・パッカー(現在51歳)は、グラスゴーの路上で売春している女性たちを中心に、最も弱い立場の女性たちをレイプし、虐待してきた。2005年、彼はエマ・コールドウェルさんをレイプし殺害した。そして今週、彼はその犯罪に加えて、他の女性たちに対する20件もの暴力的・性的犯罪で有罪判決を受けた。

 読者のみなさんは、この事件については、事件当時からではなくとも、少なくとも裁判とその後の有罪判決に関する報道で読んだことがあるだろう。パッカーは、問題を抱え薬物を用いている女性たち――その多くはホームレスで、自暴自棄で選択の余地のない女性たち――とのセックスを日常的に金で買っていた常習の買春者だった。

 買春者というのはそもそも暴力的で虐待的である。さもなくば、お金のためでなければ自分とのセックスに少しも興味のない女性たちの身体の内部にアクセスするために金を払うようなことはしないだろう。パーカーは買春者の中でも最も恐ろしいタイプの一人で、「非常に暴力的で攻撃的で危険な男」と言われていた。不運にも彼に利用された被買春女性たちが言うには、彼は「ノー」という言葉が大嫌いで、状況を完全に支配したがったという。

 だが警察は驚くほど無能で、エマをはじめ、パッカーがターゲットにして危害を加えた他の女性たちをも裏切った。警察は彼女たちを信頼できない目撃者とみなして、彼女たちの証言に耳を貸さなかったのだ。これは明白なミソジニーである。

 それだけではない。さまざまな報道における言葉の使い方にも大いに問題がある。なぜこれらの被害を受けた女性たちは「セックスワーカー」と呼ばれているのか? 男に虐待されることは本当に「仕事」なのか? そして、なぜ『ガーディアン』紙はこれほど長い間、このようなノーマルなものにし、粉飾するような表現を率先して用いてきたのか?

 私は昨年、この問題について読者編集部に手紙を書いた。それを以下に転載したので読んでほしい。

 そして、エマ、どうか安らかにお眠りください。あなたはもっとずっと素晴らしいものに値する人だった。

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2023年6月14日(水)

『ガーディアン』読者編集部へのメール

 私が執筆したアイリーン・アイヴィソンさんの追悼記事を貴紙編集部が「セックスワーク」というタグで分類したことについて、最大限の強い言葉で抗議したい。

 『ガーディアン』紙は以前、この言葉を軽率に使ったことで問題になったことがある。たとえば、ある記者が、同意年齢に達していないだけでなく、人身売買された子どもたちを「セックスワーカー」と表現したのだ。

 「セックスワーク」はイデオロギー用語である。性売買サバイバーはもちろん、フェミニズムの立場から運動を展開している人たちも、この言葉が女性や少女への虐待をノーマルなものにするがゆえにこの言葉を忌み嫌い、それをできるだけ避けている。

 『ガーディアン』紙がこの言葉をあえて使う決断をしたのは間違いないところだが、それにしても、商業的性搾取をなくすために精力的にキャンペーンを展開してきた女性の追悼記事をこのような言葉でカテゴリー分けするという発想は、あまりにも侮辱的で無礼であろう。

 アイヴィソンさんの娘は14歳から人身売買され、その後、17歳で買春者に殺害された。アイヴィソンさんは売買春がもたらす被害について人々に啓蒙するキャンペーンを行なってきたのだ。

 今回の「セックスワーク」という言葉の使用は、リベラルな機関や出版物がこの用語を一律に使用することに対していかに無批判で無分別であるかを示す好例である。どうかこのような言葉を削除し、代わりに「売買春」という言葉を使うことを検討していただけないだろうか?

敬具

ジュリー・ビンデル

出典:https://juliebindel.substack.com/p/how-did-the-guardian-newspaper-end

投稿者: appjp

ポルノ・買春問題研究会(APP研)の国際情報サイトの作成と更新を担当しています。

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