『モーニング・スター』の社説―「売買春の非犯罪化は女性と少女を救わない」

【解題】イギリス共産党系の老舗の日刊紙である『モーニングスター』は、イギリス最大の労働組合ナショナルセンターであるイギリス労働組合会議(TUC)の女性会議が、セックスワーク論に基づいて、売買春の非犯罪化の動議を大会で提出していることを受けて、売買春の非犯罪化が事態をいっそう悪化させると警告する「社説」を発表しました。本ポストはその全訳です。TUCは、組合員数650万人を誇る巨大ナショナルセンターで、同国のほとんどの労働組合が加盟。歴史的に労働党の母体になった労働組合連合でもあります。

『モーニング・スター』2025年3月5日

 イギリス労働組合会議(TUC)の女性会議の代表者たちは、売買春の非犯罪化を支持するかどうかについて投票を行なう予定である。会議に提出された動議では、性産業を犯罪化することは「セックスワーカー」を「搾取、虐待、その他の暴力の大きなリスク」にさらすことになると主張している。

 ここでの用語の選択は重要だ。「売春婦」という用語には、道徳的な非難を伴うなど、否定的な意味合いがあると信じられているため、「セックスワーカー」という用語の使用を主張する人もいる。しかし、これは性産業に従事する女性の少数部分が採用している用語を一般化するものである。2023年に欧州議会もそう指摘している。

 売買春の廃止を求める決議(その決議は、ドイツ社会民主党の欧州議会議員マリア・ノイヒルによって提出され、可決された)は、「これを職業として捉えている人々は…売春に従事する人々のうちの少数派である」と認識している。また、「売春に従事する人々の大半は…これを普通の仕事やキャリアの機会とは考えておらず…可能であればセックス産業をやめたいと考えており…売春を暴力の一形態であると考えている」と指摘している。

 ノイヒル氏がドイツ選出の欧州議会議員であることは重要である。ドイツでは20年以上前から売春は合法だからだ。非犯罪化を主張する人々は、この業界が犯罪化されていることこそが売春を危険なものにしているという主張を根拠としている。その犯罪性を除去すれば、売春婦の虐待を防止し、人身売買や性的奴隷制に依存する性産業を断ち切ることが容易になるはずだというのだ。

 しかし、売春を非犯罪化した国々では、そのような経験はしていない。ドイツやオランダでは、売買春の合法化により、性を買うことへのスティグマが減り、需要が増加した。

 そして、予想に反して、合法化によって性産業の犯罪性はなくなっていない。合法化から20年が経った今でも、ドイツでは売春に従事する女性の90%が人身売買の被害者である。同じく合法化されているオランダでは、当局の推定によると、売春婦の70%が暴力によって売春を強要されたか、「ラバーボーイ」(搾取を目的に、弱い立場の人を誘惑し、売春に引き込むピンプ)によって引き込まれた被害者である。

 アナリストのメリッサ・ファリー博士は、合法化された業界では需要が増加し、その需要を満たすために人身売買が増加したこと、また、合法売買春と並行して違法売買春も増加したことを発見した。世界開発ジャーナル誌で2012年に発表された研究では、売春の合法化が人身売買の流入を増加させていることが明らかになった。とくに高所得国においてはそうだ。

 つまり、売買春の非犯罪化が業界をより安全にするというエピデンスは存在しないということだ(実際、オランダでは人身売買された女性たちが、売買春の合法化は警察が自分たちの窮状を無視しやすくなったと報告している)。 単にその規模が大きくなるだけだ。

 これに対して、北欧モデル(最近ではフランスなど、採用する国が増えている)では、売春の売買のうち買春のみを犯罪としている。これにより、売買春は減少しており、スウェーデンでは10年間で街頭での売春が半減した。

 北欧モデルは売春婦の犯罪化を廃止するが、包括的非犯罪化とは異なり、この産業が本質的に搾取的であることを認識している。そのため、売春から離脱する女性たちへの支援を優先している。

 これはヨーロッパだけでなく、イギリスでも同様の方向に向かっている。労働党は成人の売買春を「成人に対する性的搾取」と定義する方向へと動いている。性産業を強制や暴力から切り離すことは不可能だ。

 また、男性の買春の権利を合法化することによる社会的影響も軽視できない。それは女性に対する男性の態度に影響を及ぼす。それが一つの理由となって、実験的に設置されたリーズのホルベック地区の赤線地区は、その地区の女子生徒に対するセクハラの増加という結果をもたらした。

 貧困の増加、ますます厳罰的になっているイギリスの社会保障制度(求職者が仕事を断った場合に厳しい罰則を受けることになる)は、売春を職業としてノーマル化する状況を作り出し、女性や少女にとってさらに大きなリスクをもたらす。

 労働運動は女性の商品化を支援すべきではない。女性の商品化はネットポルノによって加速され、そしてこのネットポルノ自体、増加するセクハラや虐待の一原因となっている。労働党政権は、女性と少女に対する暴力が大規模になっているのを国家の緊急事態であると宣言した。私たちの運動は、家父長制、女性嫌悪、そしてそれらによって煽られている性産業との闘いを優先すべきである。

出典:https://www.morningstaronline.co.uk/article/decriminalisation-prostitution-does-not-help-women-and-girls

投稿者: appjp

ポルノ・買春問題研究会(APP研)の国際情報サイトの作成と更新を担当しています。

コメントを残す