【解説】以下のポストは、アメリカのサバイバー中心のアボリショニスト団体「Rights4Girls」の事務局長であるヤスミン・ヴァファさんが書いた、エプスタイン(エプスティーン)事件に関する最新記事の翻訳です。
ヤスミン・ヴァファ
USA Today, 2026年2月25日
小児性虐待や女性・少女への性搾取と闘うことに人生を捧げてきた私たちから言わせれば、ジェフリー・エプスタインはけっして例外ではない。むしろ彼は典型的な事例だ。しかし、彼の死から数年経った今も、エプスタインの物語は世間に衝撃を与え続けている。新たな文書が公開されるたび、過去の写真が再浮上するたび、人々は再び信じられない思いに駆られる。どうしてこんなことが起きたのか、どうしてこれほど多くの人々が知っていたのに何もしなかったのか、と。
性的人身売買は一個のシステムだ
答えは簡単だ。そこに存在するのは一匹の怪物ではなく、一個のシステムなのだ。数十億ドル規模のグローバルな性売買において、権力と富を持つ男たちは、脆弱な女性と少女を利用し、虐待し、使い捨てにする権利があると信じ込んでいる。この衝撃は、エプスタインの犯罪がまれなものであることを示しているのではなく、むしろ、ありふれた風景の中に紛れている大規模な性的搾取と向き合うことを、社会がいかに避けてきたかを物語っている。
たしかにエプスタイン事件は極端な例かもしれない。なにしろテック業界の大物たち、政治家、億万長者、王族が関係していたからだ。しかしエプスタイン事件を可能にした力学は、世界中で毎日繰り返されている。富は〔人間身体への〕アクセスを買う。権力は沈黙を買う。脆弱性は搾取され、金に換えられ、正当化される。そして責任が問われたとき──めったにないが、実際にそうなったとき──、その責任はけっして均等には分配されない。
繰り返し同じパターンが見られる。人身売買業者やピンプは逮捕されるかもしれないが、サバイバーは公の関心と調査に晒され、過去が掘り返され、彼女らのトラウマが彼女らに不利な証拠として扱われる。その一方で、少女や若い女性との性行為に金を払った男たち──名前も経歴も評判もある成人男性──は、金と影響力、そして彼らの行為を虐待と呼ぶことを拒む文化によって守られ、静かに背景の中に消えていく。
この不均衡は偶然ではない。権力を持つ男たちの安楽を、女性や子供の安全より優先させる意図的な盲目と政策選択の結果なのだ。社会は被害者を起訴する方が買春者を起訴するより容易な枠組みを構築した。搾取をセンセーショナルに報じる方が、需要を現実に解体するより容易な構造を築いたのだ。そして、この需要こそが要石なのだ。
グローバルな性売買が存在する理由は、金があれば他人の身体を自由にする権利があると信じている男たちからの絶え間のない需要、そして売り手に莫大なもうけを保障する需要が存在するからだ。エプスタインはこのことを理解していた。アメリカの郊外でマッサージパーラー(売春店)を運営する人身売買業者も、オンラインで若者を勧誘する搾取者も、国境を越えて女性を移動させる組織犯罪ネットワークも同様だ。舞台は変わっても、そのロジックは変わらない。
私たちが直視を避けているもう一つの真実がある。多くの児童性売買被害者は、単に搾取から「逃れる」わけではない。多くの場合、これらの子どもたちは商業的性売買業の中で大人になる──そして自分たちが「選んだ」人生だと信じ込まされ、もっと悪いことに「エンパワーした」と思わされる。私たちの社会は長年のトラウマを軽視し、搾取を彼女らの日常たらしめた状況への責任を都合よく免れている。
搾取は通常のビジネスであってはならない
性売買の文化的受容こそが、エプスタインを長い間上流社会で活動させ続けてきた当のものだ。性の購買がノーマル化され、一部男性の特権ではなくなり、身体が普通に商品として扱われる時、性搾取は犯罪には見えなくなる。それはまさに通常のビジネスに見えるのだ。
私たちは最近、『買春者たちの正体──性を買う男たちの実態&搾取を終わらせるための解決策(Buyers Unmasked: Exposing the Men Who Buy Sex & Solutions to End Exploitation)』という報告書を発表した。そこでは男たちが自分の購入した女性と少女についてどう語っているかが暴露されている。オンラインの「趣味掲示板」に書き込まれた買春者の言葉をざっと読むだけでも、その内容はただグロテスクなだけではない。それらはエプスタインの記録と大きく重なるのだ。
ロサンゼルスの買春者はこうつぶやく。「彼女〔被買春女性〕は社会が私たちのような男のために用意した道具だ。さっと使って捨てて、日常生活に戻る」。ニューヨークの買春者は最近の買春をこう描写している。「彼女は韓国製ベビードールの化身だ」。アリゾナの搾取者は他の買春者に向けて、さっき街の角に女を捨ててきたところだと述べたうえで、こう書いている。「あいつはちょうどいま最高のハイ状態だ。狩りを楽しめよ」。
エプスタインが他に類例を見ない悪党だったと信じる方が、はるかに楽だろう。彼の顧客や仲間が例外ではなく、利益と秘密が守られるかぎり性搾取を黙認する文化の代表者だったという事実と向き合うよりずっと楽なのだ。
エプスタイン事件が本当に重大な問題だと思うなら、この事件をある異常な男の犯罪とだけみなすのではなく、それを可能にしたシステムと向き合わなければならない。つまり、スキャンダルから責任追及へ、覗き見的な興味関心から構造的変革へと移行することが必要なのだ。
変革には道徳的明確さが必要だ。他人の身体へのアクセス権を購入することは無害な行為ではない。それはミソジニー、不平等、虐待の上に築かれたシステムの原動力だ。人身売買業者に対して主張するのと同じ切迫性をもって買春者の責任を問わないかぎり、第二のエプスタインは必然的なものとなるだろう。
※ヤスミン・ヴァファは人権弁護士であり、女性と少女の権利擁護を目的とする全国組織「Rights4Girls」の事務局長。同組織はすべての少女が安全に、暴力や搾取のない人生を送れるよう活動している。
出典:https://www.yahoo.com/news/articles/epstein-scandal-exposes-global-reality-090355680.html