【解説】以下に紹介する論稿は、これまでも何度もこのサイトで紹介しているジュヌヴィエーブ・グラッグさんによるもので、いわゆるシシーポルノ(女体化ポルノ)がトランス・アイデンティティをつくり出すことに貢献しているかを明らかにしたものです。グラッグさんはすでに3年前の論稿でも、SNS上のトランス当事者たちの諸言説を分析して、ポルノとトランスイデオロギーとの深い関係について明らかにしていましたが、その最新バージョンです。著者の許可を得てここに全訳します。
ちなみに、ポルノグラフィに対して深い批判的洞察を加えたキャサリン・マッキノンが、自分のこのポルノ理論を別の方面から証明するこのシシーポルノの存在とそれがトランス運動に与えた影響について分析するどころか、こうした現象にいっさい目を閉じ、トランス運動に全面的に迎合したことは、真に驚くべきことであると言えるでしょう。
ジュヌビエーブ・グラック
Spiked!, 2023年8月16日
ジェンダー・アイデンティティ運動とポルノグラフィの影響とを切り離すことは不可能である。どちらも性産業の一側面を現わしている。ジェンダー・アイデンティティ産業は、名詞としての「セックス(性別)」を売り物にしており、手術やホルモン剤によって、男性が女性に「なる」(あるいはその逆)ことができるとされている。一方、ポルノ産業は動詞としての「セックス(性交)」を売っている。
ジェンダー・アイデンティティは概念上、女性を性差別的なステレオタイプに、あるいは男性の頭の中のファンタジーに貶めている。それはまた、女性性を、そしてより低い程度ではあるが男性性を、ポルノグラフィの生きた具体物として独自に再定義するイデオロギーでもある。
トランスジェンダリズムとポルノとは深く絡み合っている。「ジェンダー・アイデンティティ」という言葉を生み出した張本人であるジョン・マネーは、「性別移行」を助けるために、若い男性に露骨なポルノを見せるべきだと主張した(それでいて、「男である、女であるという感覚は生まれつきのものであり、幼少期に固定される」という、それとはいささか矛盾した主張もしていたのだが)。マネーにとって「ジェンダーロール(性役割)」という概念は、フェミニストたちがそれ以前に「性別役割のステレオタイプ」と呼んでいたものに大いに依存したものだったが、それだけでなく、性的な相互作用そのものに大きく依存していた。
マネーはニュージーランド系アメリカ人の心理学者、性科学者であり、ジョンズ・ホプキンス大学の教授であった。「露骨な性的写真の使用」について、彼は1975年の著書『性の署名(Sexual Signatures: On Being a Man or a Woman)』の中で、「ポルノは子供の性教育の一環として使うことができるし、使うべきである」とし、子供に性的な内容を紹介するのに最適な時期は、思春期が始まる前だと述べた。「思春期前の子供たちは、知的にセックスを理解する能力がある」とマネーは書いている――「子供たちは間違いなくこれらの写真にエロティックな刺激を感じるだろうが、目新しさがなくなれば、すぐに冷めるだろう」。
マネーはまた、幼い子供たちに大人が性交する様子を見せることを勧め、それを「大人がする遊び」として説明すべきだとし、こう付け加えた。「適切な指導があれば、この経験は子どもの性教育に組み込まれ、その子自身のジェンダー・アイデンティティを強化するのに役立つだろう」。
この発言は、マネー自身がライマー家の双子の男の子に対して行なった悪名高い実験、つまりブルース・ライマーを「ブレンダ」という女の子として育てようとした実験に照らすなら、とりわけ問題含みである。自分が男ではなく女であることをこの少年に受け入れさせようと、マネーはブルースと弟のブライアンに、彼が「交尾プレイ」と呼ぶ演技をさせ、子どもたちをさまざまな性的体位にさせて写真に収めた。
マネーが『性の署名』を書いた当時、ポルノはまだマスメディアの主流に組み込まれていなかった。今ではもちろん、想像しうるほとんどあらゆる行為を描いたポルノが、ネットで検索すればすぐに見つかるし、年齢制限もなく、ネットの一部で広く入手できる。
そして、トランスを自認する女性とトランスを自認する男性の間で異なる傾向があるものの、ポルノが「性別移行(トランジション)」という概念と結びついていることが明らかになりつつある。
女性、とくに若い女性たちにとって、自分が男性だとか、ノンバイナリーだと宣言する傾向は、女性の性的客体化から逃れたいという願望に駆り立てられている可能性がある。「脱移行(デトランジション)」した、つまり異性を自認することをやめた何人かの若い女性は、アイデンティティが混乱した原因にポルノが影響したことを指摘している。
しかし、男性にとって、女性としてのアイデンティティを自称したいという衝動は、しばしば、性的な女装や身体改造フェチをフルタイムで実行したいという願望の隠れ蓑となっている。Redditのようなオンライン・コミュニティでは、男たちは互いに、相手がトランスジェンダーであり、ずっとそうであったことを確信させるために、「からを破る」ことを奨励し合っている。男性や10代の少年がトランスジェンダーであることを示す指標としては、トランスポルノを視聴すること、女性に嫉妬すること、女性の服を着て自慰行為をすることなどだ。
手術やホルモン剤で体を「女性化」した男たちは、トランスポルノへの需要の高まりから、業界のポルノ女優の2倍の収入が得られると言われている。さらに、女性になりすました男性が、自作のポルノグラフィをOnlyFansやSNSで独自に販売するという新たなトレンドも生まれている。
2018年、オーストラリア国立大学の学生ソフィー・ペツット(トランスジェンダーを自認する男性)は、人類学の博士号を取得するためにネバダ州とカリフォルニア州を訪れ、ポルノグラフィを調査した。翌年、彼の研究「ポルノ・パフォーマーからポルノ起業家へ(From Porn Performer to Porntropreneur)」は『インターナショナル・ジャーナル・ジェンダー・スタディーズ』に掲載された。ペツットは、トランスジェンダーをテーマにしたポルノグラフィの検索数が2014年から2017年の間に4倍に増加したこと、「トランスポルノの圧倒的多数はトランス女性(つまり、女性を「自認する」男性)を中心に発展している」ことを指摘している。
ペツットはまた、性産業が美容整形、特に男性の豊胸手術のための収入源になっていることも指摘している。「インタビューに応じた多くのパフォーマーたちは、少なくとも部分的には性別移行のための資金を得るためにこの業界に入った。彼らにとってセックスワークは、非常に儲かると同時に、〔性別移行という〕自己実現に向けて自己をエンパワーさせる手段でもあった。というのも、性別移行のための手術は途方もなく高価であり、セックスワークで稼いだお金はその資金に充当されたからだ」と彼は言う。
大手ポルノサイトであるポルノハブ(Pornhub)が提供した2022年のデータによると、「トランスジェンダー」というカテゴリーに掲載されたポルノグラフィの人気は同年に75%も増加し、世界で7番目、米国では3番目の人気カテゴリーとなった。2017年、ポルノハブは「トランスポルノ」というカテゴリーに特化したデータを発表し、このカテゴリー内のコンテンツの視聴者が近年爆発的に増えており、2015年から顕著に増加していることを明らかにした。
自らを「女体化」する男性を主人公にしたポルノ動画は、通常、自分自身を異性愛者だと考えている男性によって閲覧されている。その内容は、男性と同じ性欲を持つ女性を主人公にしており、女性でなければできない、あるいは不可能ではないにせよ身体的に困難であると思われる行為に進んで取り組むことになっている。
ポルノグラフィがトランスジェンダーを自認するきっかけになったと主張する著名なアメリカの学者が、今年5月にピューリッツァー賞(文学批評部門)を受賞した。このことは、SNS上で、ジェンダー・アイデンティティ・イデオロギーを批判する人々から大きな反発の声が上がった。アンドリュー生まれのアンドレア・ロング・チューは、2014年にデューク大学を卒業した。2021年に『ニューヨーク・マガジン』の書籍批評担当者に任命され、その功績により2023年のピューリッツァー賞を受賞したのだ。
チュウが初めてジェンダー・アイデンティティについて書き始めたのは2018年、『N+1』誌に「女性を好きになることについて」と題したエッセイが掲載された時だった。ここでチュウは、トランス自認する作家が好む、常に人気のある個人的な物語形式と、著名なフェミニスト作家数名に向けられた批判を融合させている。彼は、自分がレズビアンであることに気づいたと告白してきた女の子に高校生の時に恋心を抱いたことを、自己形成的な経験として述べている。
「実のところ、私は女性が好きであることと、女性のようになりたいと思うことを区別することができなかった」とチュウは書いている。「私がトランスしたのは、ゴシップや褒め言葉、口紅やマスカラのためであり、…..性具のため、セクシーな気分になるため、ブッチに口説かれるため、どのレズに気をつけるべきかという秘密の知識のため、ショートパンツやビキニ・トップやすべてのドレスのため、そして、胸のためであった」。(強調は筆者)。
この記事がきっかけとなり、チュウはジェンダー・アイデンティティをテーマにした学術論文を書くようになった。その年、彼はカリフォルニア大学バークレー校やコロンビア大学など、評判の高いいくつかの大学に招かれ、「シシーポルノが私をトランスにしたのか」というタイトルで講演を行なった。そこで彼は自信満々にこう断言した。「犯されることで人は女になる。なぜなら犯されることこそが女の女たるゆえんだからだ。貫通は女性性(femaleness)を付与する。……シシー・ポルノでは、ペニスそのものが去勢の象徴なのだ」。
翌年、チュウの最初の著書『女(Females)』がヴァ―ソ(Verso Books)から出版された。94ページのこの短い本のテーマは、誰でも女になれるというもので、セックスで挿入されることが女性であることを定義するのだという。
「ポルノグラフィは、自分が対象を持っていると思っているときに感じるものだが、本当は対象があなたを持っているときに感じるものだ。それゆえ、それは女性らしさの真髄の表現なのだ」とチュウは書いている。「シシーポルノが私をトランスにした」。
その後数年間、チュウは女性ホルモンを服用したいという自分の願望、さらには手術を受けたいという願望に与えたポルノグラフィの影響を繰り返し言及するようになる。2018年、彼はNYCトランス・オーラル・ヒストリー・プロジェクトに次のように語っている。「私のポルノ中毒は、シシーポルノのようなものをずっと待っていた。…..それは……ポルノを見る経験を、自分を女性に変える何かとして想像するよう要求する。人が女にされるのを見ているだけでなく、見るという行為が自分を女にするのだ」。
シシーポルノ――シシー化(女体化)ポルノグラフィの短縮形――は、強制的な女性化という広範なテーマを取り入れたいくつかのジャンルのひとつで、ホルモン剤の投与であれ、化粧やランジェリーの着用であれ、男性が表向き「強制的に」女性に変身させられる。
Reddit、Tumblr、4Chan、種々のアダルトサイト、さらには、Pinterest、Flickr、フェイスブック、YouTubeなど、一見ポルノではないウェブ上でさえ、シシーポルノや強制女性化ポルノ、そしてそれに隣接するコンテンツが、驚くほど大量に見出せる。コンテンツの圧倒的多数は、男性が女性に変身するというテーマに関わっている。男性は化粧やランジェリー姿の写真を投稿し、自分を性的に客体化するよう視聴者を誘う。フェイスブックの個人アカウントでは、自らを「シシー(尻軽女)」や「トランス」と呼ぶ男たちが、最近、何万人ものフォロワーを獲得している。
場合によっては、レイプや性的人身売買さえも、自分が女に「なる」という妄想に耽る男たちにとっては、自分を正当化するための手段だと考えられている。コロンビア大学の出身で作家のジュリア・セラーノは、2007年に出版した『ウィッピング・ガール』の中で、女性化に対するエロティックな想像についてこう書いている。「性奴隷として売られ、見知らぬ男たちに利用される自分を想像する。……それは強制的な女性化と呼ばれるものだ……それは、自分が感じる屈辱を快楽に変え、男性特権の喪失を最高のファックに変えることなのだ」。
デューク大学出版局は『トランスジェンダー・スタディーズ・クォータリー』(チュウはこの季刊誌の編集に携わっている)を発行しており、ポルノグラフィとトランスジェンダリズムとの関係を頻繁に研究しているアメリカの代表的な学術誌のひとつである。それは、「ジェンダー・アイデンティティ」を発達させるための道具として露骨な内容のポルノを推進しているのだが、いささか逆説的なことに、ジェンダー・アイデンティティは生得的なものだともみなされているのである。
『トランスジェンダー・スタディーズ・クォータリー』2020年5月号に寄稿したトランス自認の男性アスター・ギルバートは、「シシー・リミックスド――トランス・ポルノのリミックスとトランス主体の構築(Sissy Remixed: Trans Porno Remix and Constructing the Trans Subject)」というタイトルの論文で、「女体化(シシー化)と女性化」を「ジェンダー・プレイの諸形態」と定義している。
「シッシー・フェチの実践では、シス男性はしばしば、強制的な女性化ファンタジーを演じるSMの女王様によって辱められる」とギルバートは書いている。「男性は、他の男性とのセックスを想像するよう勧められるが、伝統的なゲイポルノのように男性としてではなく女性としてである。視聴者は男として始まり、シシーや女に変身する。……このプロセスを通じて、ビデオはシシーの主体をトランスの主体として構築する」。
これはジェンダー・イデオロギーの世界では、およそ周縁的な行為や視点などではない。ロンドンのタヴィストックにあるジェンダー・アイデンティティ・クリニックの著名な心理学者でさえ、以前は「女体化(シシー化)」だけでなく、「幼児プレイ」、獣人フェチ〔女体化した獣に性的興奮を覚えるフェチ〕、さまざまなサドマゾ的な性行為を「セクシュアリティ」としてノーマル化するよう呼びかけていた。女性を自認する男性であり、現在ロンドンのジェンダー・アイデンティティ・クリニックの主任心理学者であるクリスティーナ・リチャーズ博士は、セクシュアリティとジェンダーに関する専門的ガイドを共著で著わし、フェチ的な性実践を異性愛、同性愛、両性愛と同じスペクトルに位置づけている。
リチャーズは、幼児プレイをする大人が、子供服を含む児童関連のさまざまなグッズや衣服をどのように蓄えるかを説明している。多くの場合、ある大人が幼児期から10代まで、あらゆる年齢を演じる一方で、別の大人が支配的な性的役割に参加することがある。
「ここで遭遇する可能性のある用語には、年上男性の『攻め(top)』が年下MtFの『受け(bottom)』を被養育児童として扱うDLG(daddy’s little girl)などがある」とリチャーズは詳しく説明する。「『女体化(シシー化)』という用語は、緊縛SM(BDSM)シーンの一環として、成人男性が同意の上で少女の服を着て、少女のように振る舞うことを『強制』されるもので、幼児プレイと交差する。成人男性が若い女性の格好をさせられることで感じる屈辱感が、エロティシズムの源なのだ」。リチャーズは、欧州トランスジェンダーヘルス専門家協会(EPATH)の理事であり、世界トランスジェンダーヘルス専門家協会(WPATH)の特別理事も務めている。
先月、ノッティンガム・トレント大学の研究者たちは、シシーポルノ(女体化ポルノ)を「オートガイネフィリア(男が自分を女だと想像することで性的快感を得ること)」という性的フェチを助長するものとして、「オートガイネフィリア誘導ポルノ」(AGPP)と命名した。
調査に参加したほとんどの人が、AGPPは「自分のセクシュアリティの女らしさを表現するのに役立った」と述べている。AGPPが移行する動機になったという人もいた。この研究の著者たちは、「女らしさと性的服従との関連性が頻繁に見られる」ことを強調している。
シシーポルノのシーンで、男性が女性への変身に成功したことを証明する行為はペニスを挿入されることである。これは、チュウが『女』の中で「シシーポルノの中心に尻穴がある。それは 普遍的な膣のようなものであり、そこから女性性に常にアクセスできる」と書いたときに示した見解である。
不愉快なことに、このような信念が、いわゆる「トランス・インクルーシブ」な言語を支えており、そのような言語が、現在、女性の解剖学的構造を表現するために推奨されている。昨今、女性の性器について提案されている用語には、「フロントホール」や「ボーナスホール」などがあるが、これらはいずれも外陰部と膣を、肛門に付随し、単に貫通するための「穴」と定義するものだ。
しかし、女性性の完全なポルノ化をロマンチックに描き出し、それを内面化しているのは、チュウだけではない。これは何らかの逸脱なのではなく、ジェンダー・アイデンティティの信念体系の中核をなすものであり、女性を商品化された――そして改造された――部品やパーツに還元するものである。
自身もトランスジェンダーを自認するリオ・ソフィアは、2020年にプリンストン大学(米国で最もエリート的な学術機関のひとつ)で行なった講義で、強制的な女体化ポルノについて論じ、自身が作った女体化コンテンツの例を紹介した。ソフィアは、歴史的に、BDSMをテーマにした出版物の巻末のページには、しばしば「女性化」ホルモンの広告が掲載されていたと指摘した。
「強制的な女性化やシシーポルノという文化がある。……だが移行には別の方法もある。フィクションであれ現実であれ、この種の話をすると、豊胸手術を強要したり、夫に貞操帯を半年間装着させたり、夫にホルモン剤を投与したりするところまで行く人もいる」。
実際、エストロゲン(女性ホルモン)の不正販売に基づく闇市場が存在し、数十年前にポルノやフェチ雑誌を通じて男たちにエストロゲンが売りつけられた。同様に、現在「ジェンダー肯定ケア」と呼ばれるものの他の側面も、性産業と連動して発展してきた。
整形手術は、必ずしも性的に動機づけられた事業ではなかった。初期の施術のいくつかは、第一次世界大戦のサバイバーたちのニーズに応えて開拓されたものだった。塹壕から帰還した兵士たちは、顔に傷跡があり、外観が損なわれていた。負傷した男性に対する実験的な手術がブームになった後、医師たちはすぐに女性の健康な体にメスを入れるようになった。
ポルノや性的人身売買の影響のもと、女性の美容整形は主に男性の性的欲求を満たすことが中心となった。最初のシリコン豊胸手術は、第2次世界大戦後のアメリカの対日占領下で、性的奴隷として人身売買された日本人女性に行なわれた。船着き場から盗まれたシリコンは、彼女たちの乳房に直接注入され、壊疽や「シリコン腐敗」を引き起こし、場合によっては死に至った。
その後、この施術はカリフォルニアに持ち込まれた。アメリカでは1940年代から1960年代にかけて、推定5万人もの女性がシリコンを直接注入され、その多くは娯楽産業に携わっていた。規制当局である食品医薬品局は、シリコン注射の目新しさにもかかわらず、この処置の長期追跡調査を要求しなかった。女性の肉体の特定部位のフェチ化を促すために、女性の身体を改造することができるという発見は、ポルノ業者やピンプにとって不可欠なものとなった。
カリフォルニアは、ポルノ、シリコンバレー、ハリウッドの本拠地であり、全盛期には世界有数のポルノ生産地であったが、そのカリフォルニアがジェンダー・アイデンティティ運動の非公式の発祥地でもあることは、単なる偶然ではない。
カリフォルニアは、「トランスジェンダー」という言葉を世に広めたヴァージニア・プリンスが、自身の雑誌『トランスヴェスティア』を通じて、男性のエロティックな女装を公表した場所でもある。
「ドレスを着たエロティックに興奮した男性という段階を越えて成長しなければならず、その結果、最終的にオーガズムに達する」と、アーノルド・ローマン生まれのプリンスは1985年に語っている。「しかし、オーガズムが終わっても、ドレスを着たままでいると、自分の中に別の部分があることを発見し始める。エロティックに興奮した男性であることをやめ、単純に、女の子らしさには何かいいものがあって、それを体験するのが楽しいと認識する男性になるんだ」。
カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)もジェンダー・アイデンティティ運動の中心である。同大学は1962年に米国初の「ジェンダー・アイデンティティ・クリニック」を設立した。ジェンダー・イデオロギーを米国内外の学術機関に押し込んだ哲学者ジュディス・バトラーは、カリフォルニア大学バークレー校に所属している。同じくバークレー校のトランス自認講師、グレース・ラヴェリーは、ポルノハブで見つけたシシーポルノを含む学生向けカリキュラムを公開したことがある。
トランスジェンダーのプライド旗をデザインしたアメリカ海軍退役軍人は、カリフォルニアのドラァグ・クラブに通ううちに、エロティックな女装を追求するようになった。その後、モニカ・ヘルムズことロバート・ホッジはアダルトビデオ店で働き、そこで義乳をつけた「女装」をしていた。当時、週末にセックスクラブやレズビアンバーに通っていた彼は、自分がレズビアンの女性だと信じていると宣言した。
おそらく、手術のセクシュアル化の最も心をかき乱す側面は、身体改造フェチの大人の世界に子供たちが取り込まれていることだろう。2016年、14歳にして「自分は実は女の子だ」と宣言してセンセーションを巻き起こした少年コリー・メイソンは、今では自作ポルノを制作している。思春期に投与された思春期ブロッカーの効果は、不気味なほどに子供っぽい外観を生み出しており、それが成人後も続いている。
また、小児性愛者の去勢フェチ・フォーラムに参加する男性たちが、化学的去勢や外科的去勢に関する生々しいフィクションを書いたり、その種のイベントを主催したりしているのだが、そうした男性たちの匿名での回答をもとに実施された調査によると、その半数近くが子どもに関するもので、最も人気があるのは未成年を強制的に去勢する話である。
「去勢アーカイブ」は、トランスジェンダー・ヘルスのための世界専門家協会(WPATH)の最新の『ケアの基準』に引用されている。WPATHは昨年、子どもに対する医療的「ジェンダー」介入〔思春期ブロッカーや異性ホルモンの投与や去勢手術など〕に関して、年齢制限を撤廃した。
ポルノグラフィを通じて、商品となるのは行為としてのセックスだけではない。性化された身体そのものが、見世物であり商品となるのだ。私たちが人間関係をパソコンの画面上に求め、ポルノグラフィが現実の人間関係をますます代替するようになると、フェティシズムは強力な社会的感染症として猛威を振るい、その実践者たちは、何かの手段ではなく自己目的と化した自己決定のための水路としてそれを称賛する。
ジェンダー・アイデンティティ哲学は、マーサ・ヌスバウムがジュディス・バトラーに対して行なった批判である「パロディの教授」の中で書いているように、「悪に協力する」信念体系である。それは、本物の自己を、作られた自己に置き換えてしまう。それは確かに「からを割る」ことであり、私たちの身体を開放し、資源、製品、広告と化し、それらすべてをひっくるめたものと化すのだ。
ジェンダー・イデオローグたちは、このような外在的で購入可能なアイデンティティが自由をもたらすと、事情に通じていない人々に語る。しかし彼らは、このポルノ化されたプロセスが、私たちの集合的な人間性と、とりわけ女性と子どもたちに与える巨大な影響については黙して語らない。トランスジェンダリズムを通じて、女性のアイデンティティ、尊厳、安全がばらばらの断片にされる。そしてそれらは、スクラップとして最高入札者に売られるのだ。
出典:https://www.spiked-online.com/2023/08/16/how-pornography-forged-the-trans-movement/
「ジュヌビエーブ・グラック「いかにしてポルノはトランス運動を作り上げたか――商品化されるアイデンティティと女性身体」」への1件のフィードバック