イギリス労働組合会議(TUC)は売買春の搾取者ではなく被害者を支援せよ

【解説】イギリスの労働組合や左翼団体、LGBT団体の多くはセックスワーク論に支配され、売買春ないし性産業の完全非犯罪化(合法化)をあたかも労働者のための政策であるかのように主張していますが、それは、あらゆる資本家の中で最も下劣で悪辣な資本家を支援するものです。今回の記事はイギリス共産党系のメディアである『モーニング・スター』に最近掲載されたもので、2人の筆者のうちルバ・フェインはイギリスのラディカル・フェミニストの団体FiLiAの活動家、ヘレン・オコンナーは労働組合活動家です。筆者の許可を得て、ここに全訳を掲載します。

ルバ・フェイン&ヘレン・オコンナー

『モーニング・スター』2024年9月9日

 イギリス労働組合会議(TUC)〔1868年結成の労働組合で組合員数は500万人〕の第156回年次大会が今週、ブライトンで開催される。新型コロナ、経済の不安定さ、新自由主義的政策の台頭による持続的な影響によって労働者の諸権利はますます危機に瀕しており、この大会は、苦労して勝ち取ってきたこの諸権利を祝福する極めて重要な祭典である。

 こうした厳しい状況の中で、労働組合はこれまで以上に不可欠な存在となっている。FiLiAに集うイギリスのフェミニスト活動家は、労働組合が「セックスワークの非犯罪化」なるものを推進しようとする労働運動界隈のますます強まる傾向に抵抗してくれることを期待している。

 この政策のお題目は、事情に通じていない人々の目には問題のないものに見えるかもしれない。そういう人は、「セックスワークの非犯罪化」を、弱い立場の女性たちを法的迫害から守るための試みだと解釈しているのだ。しかし、この言い回しは操作的なものであり、グローバルなピンプ〔性産業・売春業者〕ロビーが広めた3つの大きな嘘を隠している。1.売春は単なる労働(ワーク)の一種だという嘘、2.「セックスワークの非犯罪化」は売春をしている人々を助けることを目的としているという嘘、3.性産業を合法化すれば彼女たちの生活が改善されるという嘘である。どれも真実ではない。

 何よりもまず、売買春は「ワーク(労働)」ではない。女性と女児に対する暴力に関する国連特別報告者リーム・アルサレムは、最新の報告書で売買春を「女性の平等達成能力に影響を与える暴力、不平等、差別のシステム」と表現した。アルサレムの言葉の選択は正確だ。経済的に生きのびるために、売買春をしている女性たちは平均して、お金と見返りに毎日5人から20人の見知らぬ男たちから自分の体に性的なアクセスを受けることを許容しなければならない。そのような仕事は他にはない。客が労働者の最も私的な部位を使用するような仕事は他のどこにも存在しないし、その間、労働者が身体内部に挿入されたり、つねられたり、体液をかけられたり、不快な臭いやしばしば言語的・身体的・性的暴力に耐えなければならないような仕事も他にはない。

 さまざまな国の売買春従事者を対象に行われたメリッサ・ファーリー博士の調査によると、これらの人々がPTSDに罹患している割合は、治療を求める退役軍人、レイプ被害者、シェルターを求める被虐待女性、国家による拷問からの難民などと同程度であることが明らかになっている。労働組合の代表者には、売春従事者を固有の虐待や暴力から適切に保護するようなリスク評価を実施したり、安全衛生対策を実施したりすることなどできはしない。

 第2に、「セックスワークの非犯罪化」を求める声は、思いつきのアイデアではなく、むしろ組織的でグローバルな取り組みの一環である。この政策の正式名称は「セックスワークのあらゆる側面の非犯罪化」であり、これは虐待者と不正利得者(買春者ととりわけピンプ)を合法化するものである。

 このアプローチが、売買春の中の女性たちの「スティグマ化された職業」をノーマルなものにすることで支援するという主張は嘘である。被虐待者を支援するために加害者を正当化する必要がないばかりか、売買春の中の女性たちのほとんどは、自分たちの不利な状況をノーマルなものにすることを求めていないからだ。ほとんどの売春婦が求めているのは、売買春から抜け出すことなのだ。

 イギリスでは売買春自体は違法ではないし、犯罪化することなく既存の女性保護を改善する方法は他にもあるのだから、「セックスワークの非犯罪化」が目指しているのは、ピンプの営業許可取得を支援するという一点であることは明らかだ。

 第3に、売春店を合法化すれば売春従事者に団結権を与え、労働者の権利を利用できるようになるという主張も嘘である。ドイツ、ニュージーランド、オーストラリアの大部分、オランダ、スイスなど、売春店がすでに合法化されている国や地域があるが、売買春の中の女性たちの「労働者の権利」が、組合結成や労働法の適用によって実現され繁栄している様子はまるで見られない。

 こうした国でも、売買春を避けられる女性たちは売買春に参入したりしない。その結果、売春に携わる人々の大半は不法移民やその他の搾取被害者であり、それによって広大な闇市場が作り出されている。合法的に売春に従事する人々は、売春店主から部屋を借りる「個人請負業者」に分類されることが圧倒的に多い。ピンプが求めるのは合法的な営業許可証であり、雇用主の法的責任ではない。売春従事者は税金を負担しているが、労働法の保護の恩恵は受けていない。

 非犯罪化ロビイストが求める「無規制の」売買春が合法化されれば、合法売春店、街娼、未成年者や不法移民の人身売買など、あらゆる形態の性売買が拡大するのは必至だ。女性に対する暴力がすでに蔓延している現在、本質的に虐待的な行為を合法化することは、女性に対する社会の見方をいっそう荒廃させ、女性の権利をさらに損なうことになる。

 ドイツのような国における合法的な巨大売春店は、そこに閉じ込められている女性たちに繁栄を提供することはなく、むしろ彼女たちの身体を商品化し、屈辱と暴力にさらしている。売買春がノーマルなものとなったこの社会では、ピンプはどこにでも売春店を作ることができる。イギリスでも、リーズのホルベックに設けられた売春管理区域は、この地域を犯罪の拠点に変え、誰も住みたがらない場所にした。

 良いニュースは、労働組合がピンプを援助する代わりに、弱い立場の女性を支援するためにとることのできる有意義な行動がたくさんあるということだ。労働組合はフェミニストやサバイバーと協力し、北欧モデルを英国に導入することができる。北欧モデルとは、被害者を保護し加害者を罰する法的枠組みであり、すでに導入されている9つの国と地域ですでに成功を収めている。

 組合はまた、売買春サバイバーが職業訓練を受け、合法的で公正な賃金の仕事に就けるよう、雇用主と提携することもできる。最も弱い立場にある人々をエンパワーさせ、尊厳ある生活を再建する機会を提供することに重点を置くべきである。

 継続的な努力にもかかわらず、女性は同一価値労働に対して男性より低い賃金を支払わされ続けている。労働組合は、この不公正に対する闘いを強化し、女性の要求をその使命の中心に据えるようにしなければならない。これには、「セックスワークは労働だ(sex work is work)」という有害でミソジニー的な考えを支持することは含まれない。

出典:https://morningstaronline.co.uk/article/supporting-vulnerable-women-not-their-exploiters

投稿者: appjp

ポルノ・買春問題研究会(APP研)の国際情報サイトの作成と更新を担当しています。

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