ジョー・バートッシュ「ポルノは暴力的ミソジニーをノーマル化する」

【解説】以下は、ポルノ買春問題研究会の『論文・資料集』第12号でも登場したことのあるイギリスのジャーナリストでGCフェミニストのジョセフィン(ジョー)・バートッシュさんの最新記事です。彼女は現在、『ポルノクラシー(ポルノ支配)』という著作を準備中であり、本稿は、その一環として『アンハード』にアップされたものです。

ジョー・バートッシュ

『アンハード』2025年4月17日

 「パートナーに窒息プレイをしても大丈夫でしょうか?」「窒息プレイを安全にやるにはどうすればいいですか?」「窒息プレイを拒否しても大丈夫でしょうか?」――これらは、バーツ・ヘルス NHS トラストのトラウマ外科医マーティン・グリフィスが若者からよく聞かれる質問だ。今週開催されたタイムズ誌「犯罪と司法サミット」で講演したグリフィスは、性的窒息行為(首絞め)が「大きな問題」になってきていて、その傾向はポルノグラフィによって助長されていると警告した。

 「今起こっていること、人々の目の前で起きていることを見れば、女性に対する侮辱的な行為、BDSM、緊縛など、暴力的なポルノグラフィの蔓延が背景にあることがわかる」とグリフィスは言う。「それは、人々の性的行動の一部としてノーマル化しつつある」。

 過去1年半、私はポルノの影響に関する本を書くために調査してきたが、彼の言っていることが正しいことが確認できた。この数十億ドル規模の産業は、ポッドキャストでわめき散らすどんなマノスフィア〔男性中心社会〕のインフルエンサーよりも、ミソジニーを深く根づかせてきた。しかし、「有害な男らしさ」に関する数多くの論考があるにもかかわらず、ポルノの害について論じるとき、主流派の評論家たちは不思議なほど沈黙を守っている。

 2000年代半ばのオンラインポルノの爆発的な普及のおかげで、複数の世代がまるごと、欲望をエスカレートさせるよう設計されたアルゴリズムによってそのセクシュアリティを形成されてきた。こうしてポルノは、単に欲望を反映するだけでなく、欲望を作り上げるのである。

 トランスの流行ほど、ポルノの文化的影響が明白なものはない。世界最大のポルノ・プラットフォームであるポルノハブ(Pornhub)の数字によれば、2023年、「トランスジェンダー・ポルノ」は、世界中で6番目に多く閲覧されたカテゴリーだった。「シシー・ヒプノ」や「強制的な女性化」コンテンツの無限のスクロールに迷い込んだ一部の男たちにとって、女性を自認することは自己実現のクライマックスなのだ。これは変態の域を超え、アイデンティティの一形態となり、何よりもポルノ・コンテンツによって形作られる。

 その一方、女であること(womanhood)が貶められることや首を絞められることと同一視される世界に直面している若い女性たちは、ますます女であること(womanhood)から逃れようとしている。イギリスの国勢調査によれば、彼女たちは「アセクシュアル」、「デミセクシュアル」、「クィア」などを自認する傾向が最も強い層である。彼女らを責めることができるだろうか?

 ポルノは、私たちが誰に好意を抱くかにさえ影響を与えているかもしれない。クーリッジ効果(新しいパートナーを求める生物学的衝動)の機先を制しようと努力する中で、ストレートの男性はゲイ・ポルノに目を向けると報告しているし、その逆もまた然りだ。しかし、これは性の解放ではなく、ドーパミンに後押しされた一種の軍拡競争である。あるポルノ脚本家が潜入調査中にジャーナリストに認めたように、彼の仕事の目的は、「トランス男性やトランス女性をシーンに登場させるなど、あまり受け入れられていないものをスタッフにプッシュすることだ。[…] 試してみて、より多くの視聴者を獲得できるかどうか見てみるんだ。誰かを改心させることができるかどうか試してみる」。

 しかし、おそらくポルノの最も危険な部分は、それが奨励する行為にあるのではなく、そのイデオロギーにある。ポルノは人を教化する。それはこう教えている。男は支配的存在であり、女は従属的存在である、そして、暴力は許されるだけでなくセクシーであると。

 そして、その結果ははっきりしている。男たちは自分の父親や祖父の世代と比べてさえ男女平等に対してより退行的になっている。1980年以降に生まれた人たちは、子供の世話をする男性は「男らしくない」と考える傾向が強く、男女平等はすでに「行き過ぎ」ていると考えている。しかし、このバックラッシュの一部は、平等はすでに達成された、あるいは是正されすぎたという認識から生じている可能性があることもたしかだ。特に、それ以前の世代が直面した、より露骨な形の男女不平等を目の当たりにして育っていない人々の間ではそうだ。

 一方、2024年に英国政府が男女3000人のイギリス人成人を対象に行なった調査によると、被害者が反撃しなくてもレイプになる可能性があることに74%が同意しているのに対し、Z世代では53%しか同意していなかった。また、結婚が永続的な性的同意を意味しないことを理解しているのは、65歳以上の87%に対し、Z世代ではわずか42%だった。

 これは単にセックスのあり方の問題ではなく、私たちがお互いをどう見ているか、そして自分自身をどう見ているかの問題なのだ。つまり、評論家たちが「マノスフィア」のポッドキャストにパニックを起こしている間に、本物のイデオロギー的破壊球(レッキングボール)は、私たちの心、私たちの関係、そして私たちの社会を破壊しつつある。グリフィスが若者の間で流行っている危険な窒息プレイに警鐘を鳴らすのは正しいが、ポルノグラフィが残した痕跡は、首の傷にとどまらないのである。

出典:https://unherd.com/newsroom/porn-is-normalising-violent-misogyny/

投稿者: appjp

ポルノ・買春問題研究会(APP研)の国際情報サイトの作成と更新を担当しています。

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