なぜイギリス政府は、子どもを性加害者から守るという約束を反故にしたのか?

【解説】以下は、われわれがいつもお世話になっている Nordic Model Now! の最新投稿を翻訳したものです。NMNの管理者からの許可を得たうえで、以下に掲載します。

2026年2月18日
Nordic Model Now!

 背景

 イギリス国民の多くは、性交同意年齢が16歳であり、16歳未満の子供へ性行為は法定レイプとみなされると考えている。つまり、その行為が証明されれば、加害者はレイプ罪で有罪となる、と。しかしイングランドとウェールズでは事情が異なる。イングランドとウェールズでは、性行為が自動的に法定レイプとみなされるのは相手が13歳未満の者にかぎられる。

 被害者が13、14、15歳の場合、警察・検察庁・司法機関・被告側はいずれも「被害者が同意していた、したがって犯罪は成立しない」と主張することができる。あるいはより軽い罪に減刑される可能性がある。さらに被告は、相手が16歳以上であると「確信する合理的理由があった」と主張することができ、検察側はこれが虚偽であることを合理的な疑いの余地なく立証しなければならない。

 検察庁(CPS)の同意に関する指針には、児童性搾取(CSE)事件における同意に関する長文の節があり、控訴院(刑事部)の判決例へのリンクも含まれている。しかしこうした事件では同意は関係ないはずだ。陪審員への指示に関するイギリス王立裁判所判事向け指針であるイギリス王立裁判所要覧の「性犯罪と児童へのグルーミング」の項では、理論上の被害者が12歳の児童である場合の同意に関する事例すら挙げられている。

 こうした状況下で、13~15歳の児童に対するレイプ罪の起訴率が、通報された犯罪件数(実際の犯罪規模のごく一部に過ぎない)の中でも極めて低い割合であることは、果たして驚くべきことだろうか。起訴が行なわれた場合でも、罪状はより軽い罪に減軽される可能性が高い。こうした理由から、13、14、15 歳の子供に対するレイプやその他の重大な性犯罪の有罪判決を確保することは困難であり、多くの場合不可能である。

 グルーミングギャングに関するケイシー報告書

 2025年1月、当時の首相キア・スターマーと内務大臣イヴェット・クーパーは、いわゆる「グルーミングギャング」または「レイプギャング」として知られるようになった事件に対する国民の大きな懸念に応え、ケイシー女性男爵(「男爵」の爵位を持つ女性のこと)に「児童に対する集団的な性的搾取と虐待」に関する迅速な全国監査の実施を委託した。彼女は2025年6月に報告書を提出した。

 この報告書は厳しい内容であり、イギリス政府が迅速に全面的な実施に合意した 12 の提言が含まれていた。最初の提言は、同意年齢に関する法律の抜本的な見直しであった。これは、私たちが長い間求めてきたものである。ケイシーは報告書でこう述べている。

性交同意年齢が16歳であるにもかかわらず、13歳から15歳の子供が加害者と「恋愛関係にあった」、あるいは「性行為に同意した」という理由で、児童性的搾取犯罪事件が不起訴処分となったり、レイプ罪からより軽い罪状に減軽されたりする事例が多すぎることをわれわれは確認した。

これは法律上の「グレーゾーン」によるものだ。13~15歳との性的行為はすべて違法だが、起訴の可否や適用罪状の判断は解釈の余地が大きい。

この目的は主に、相手が実年齢より上だと確信する合理的理由があった者を刑事罰の対象としないこと、あるいは十代の間の関係を犯罪化しないことに置かれている。しかし実際には、この法律の微妙な解釈が、未成年を性的目的で誘い込んだ年上の男性たちに有利に利用されている。

この法律は改正されるべきだ。13~15歳の子供を性的目的で誘い出し性行為を行なう成人男性には、フランスなどの国々で取られている手法と同様に、レイプ罪の強制起訴を適用すべきである。

 2021年4月に施行されたフランス刑法の改正では、成人と15歳未満の者との性的行為において、同意がないと推定されることが明文化された。これにより、従来の強制・脅迫・暴力の立証要件が撤廃された。

 ケイシー女男爵は、イギリスでは店舗が18歳以上であることを身分証明書で確認することなしに若者に酒類を販売することが違法である一方、「成人男性が『子供をもっと年長だと思った』と主張して性行為を正当化できる法制度が存在する」という事実を指摘した。彼女はさらにこう述べている。

子供の脆弱性を守るため、16歳になるまで携帯電話を持たせるべきではないかどうかについて公の議論が行なわれている一方で、はるかに年上の男性が「13歳の子供が性行為に同意した」と主張できる法制度が存在している。

 彼女はさらにこう続けている──「だからこそ、私はレイプに関する法律を厳格化したいのだ。16歳未満の子供に対する成人の性交は、言い訳も抗弁も許されないレイプとみなされるべきである」。そうだ!「言い訳も抗弁も許されない」。これこそが子供を真に守るために必要なことだ!

 では英国政府は何をしたのか?

 イギリス政府は現在、上院で審議中の犯罪・警察法案に改正案を提出している。これはケイシー報告書の「勧告1を実施するため」である。改正案の内容は以下の通りだ。

成人による16歳未満の児童へのレイプその他、挿入を伴う性行為を新たな犯罪として規定すること。ただしその成人が、当該児童が16歳以上であると合理的に確信する理由がなかった場合にかぎる(ただし児童が13歳以上であること)。児童の同意があったかどうかや、同意があったと合理的に信じたか否かは、これらの犯罪の構成要件とはならない。当然ながら、それは無関係である。新たな犯罪の最高刑は終身刑とする。これらの新犯罪は、児童との性行為(2003年性犯罪法第9条)など既存の犯罪と並行して適用される。

 まあ、同意が問題にならなくなるのはいいことだ! とはいえ、現行の児童性犯罪の大半は実際には「同意」について言及していない──その要素は同法の制定後に追加されたものだ。当時それができたなら、再び同じことをするのを止めるものは何もない。だが、新たな犯罪規定ではそうならないことを願おう。

 しかし…しかし…加害男性は依然として「相手が16歳だと確信していた」と主張することができる。検察がそれが真実でないことを証明できなければ、彼は無罪放免になる。誰かが何かを信じていなかったことを、どうやって証明できるというのか? 言い訳も抗弁も許されないという原則はどうなったのか?

 つまりこの国では、13歳、14歳、15歳の子供たちが、レイプや性虐待を企むキモい男たちから守られるよりも、アルコールやタバコから守られる方が依然として手厚いという状況が続くのだ。政府はこう主張する──「われわれはケイシー女男爵と緊密に連携しこの方針を策定した。彼女の提言を実行に移すわれわれの取り組みへの支援に感謝している」。

 ケイシーは考えを変えたのか? それとも政府が真実を都合よく解釈しているのか? イギリス政府はなぜ性犯罪者から子供を守るという約束を果たせないのか? これらの改正案で、検察庁は、「14歳の少女を16歳と確信していた」という男の主張が不合理だと証明しやすくなるのか? そうは思えない!

 誤解するなかれ、これは児童に対する性犯罪が依然としてほとんど取り締まれない状態が続くことを意味する。政府はどうやってこれを正当化するつもりなのか? 明らかに実行していないのに、どうしてケイシー女男爵の提言を実施していると主張できるのか?

 われわれが求めるもの

 われわれは、法律が児童に対して明確で現実的かつ効果的な保護を提供し、すべての児童性犯罪に対する取り締まりが理解しやすく執行しやすいものであることを求める。したがってわれわれは、新たな犯罪規定と既存の児童性犯罪規定の両方に対し、以下の変更を求める。

  • 被害者が16歳以上(児童性搾取犯罪では18歳以上)であると被告が「信じる合理的な理由があった」と抗弁できる項目を削除すること。
  • 被害者が同意したか、同意しているように見えたかは関係ないと明示的に規定すること。
  • 挿入が「意図的」なものである必要があるとされた文言を削除すること。男性が意図せず児童の膣、肛門、口にペニスを挿入する可能性は極めて低く、むしろあり得ないことだと考えるため、そもそも言及する必要はない。

 政府はなぜこの改正をこれほど遅く導入したのか?

 政府は2025年6月中旬にケイシー女男爵の提言を実施することを約束した。しかし実際に修正案が提出されたのは2026年2月中旬、つまり8ヶ月後である。しかも議会審議の最終段階で法案に先の修正が追加されたのである。

 本法案はすでに下院を通過済みだ。現在は上院で審議中であり、2026年2月25日から報告段階を経て、その後第三読会が行なわれる予定である。

 修正案は両段階で提出可能だが、上院の委員会段階もしくは報告段階ですでに審議・採決済みの事項については、第三読会での修正は認められない。第三読会後、法案は上院で加えられた修正案の審議のため下院に送り返される。下院は上院の修正案を承認も否決もできる。

 これは、これらの修正案が変更される余地がほとんどなく、下院が変更を加える余地(例えば「合理的確信」条項の削除など)がまったくないことを意味する。これらの修正案が法律となれば、今後何年も再検討される可能性は低い。

 したがって政府は、ケイシー報告書の最初の(そしておそらく最も重要な)提言を完全に実施するという公約を反故にしただけでなく、シニシズムと非民主的な方法で行なったと言える。

 結論

 私は自分の娘が10代前半から中盤だった頃を思い出す。なんて無邪気で脆かったことか。成長すること、彼氏ができるかもしれないという期待に胸を躍らせていた。そして大人の男性が彼女や同年代の少女たちに及ぼす危険性、法律が提供する保護の少なさに、どれほど無知だったことか。思春期に入ったばかりの彼女が、同年代の少年との合意に基づく性行為のリスクを完全に理解できるはずがない。ましてや悪意ある大人の男性との行為などなおさらだ。

 生物学的な「生命の事実」や性感染症(STI)については知っていたかもしれない。だが、その年齢で妊娠することの影響を、彼女はどれほど理解していただろうか? それが人生全体に及ぼす影響を? あるいは性感染症が自身の生殖能力を損ない、将来子どもを望むようになった時にそれが何を意味するかを? あるいは性的暴行や男性の強制的支配が、自己認識や学業への集中力に与える影響を? 端的に言えば、彼女は理解できていなかった。その年齢の子供がすべての影響を理解できるはずがない。だからこそ、少なくとも16歳未満の子供には性行為への同意能力がないとみなされるのだ。だからこそ、明確な法定レイプ法が必要なのだ。

 政府がケイシー女男爵の提言実施を約束した時、まさにそれを約束していたのだ──つまり適切な法定レイプ法をである。今や政府がこれを黙って反故(ほご)にし、しかも反故にしていない振りをしているとは、なんと恥ずべきことか。

 多くのサバイバーが、怠慢と妨害とに直面しながらも、他の少女たちが自分たちと同じ苦しみを味わわないよう、変化をもたらすために懸命に闘ってきた。まるで政府が彼女らを嘲笑っているかのようではないか。

出典:https://nordicmodelnow.org/2026/02/18/why-is-the-uk-government-reneging-on-its-promise-to-protect-kids-from-predatory-men/

投稿者: appjp

ポルノ・買春問題研究会(APP研)の国際情報サイトの作成と更新を担当しています。

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