ジャスミン・グレース「セックスワークは『仕事』ではない」

【解説】これは、コロナ危機に便乗して売買春の合法化を進めようとする最近の論調に抗して、自身のサバイバーとしての経験に基づいて売買春の現実を明らかにしている短いが非常に有益な記事です。筆者のジャスミン・グレースさんは、サバイバーの経験を生かしてサバイバー支援や啓蒙活動などに従事しています。

ジャスミン・グレース

『ニューハンプシャー・ユニオンリーダー』2020年5月18日

 5月7日、『ニューハンプシャー・ユニオンリーダー』紙は、裏面にロイターの記事を掲載している。”Streetwalkers to Sweet Talkers “というキャッチーなタイトルで、チリの売春女性が新型コロナのもとで直面しているジレンマについて紹介している。今や、自分たちの仕事の「親密」な側面に従事できなくなっているという話だ。

 売買春の性的・身体的トラウマのサバイバーである私は、『ユニオンリーダー』がこのようなミスリーディングな記事を読者と共有しているのを見て憤慨している。売春女性を解放された独立したビジネスオーナーとしてみなし、唯一の悩みはいかにクライアントと連絡をとるかであるかと描き出すことで、彼女たちの生活のひどい現実を無視している。お金のためにセックスを売買することを「深い親密さ」などと語ること自体、本質的に女性を搾取し人間性を奪う行為を美化するものだ。

 18歳の私が、売春が職業の選択だと思うかと聞かれたら、笑っていただろう。当時の私は作家になるのが夢で、コミュニティ・カレッジに通っていた。そのいっさいが変わったのは、ある男と会ってからだ。そいつは私の弱さを見抜いて、見知らぬ他人に体を売ることで彼のために「働く」よう根気よく私を訓練した。彼は売春婦の生活を、他のどこで稼ぐよりも多くのお金と贅沢品で満たされた華やかなものとして描いた。そして、お金は良いもので、私にエンパワーメントと安心感を与えてくれるという誤った感覚をもたらした。しかし、長い間そのお金はけっして「私のもの」ではなかった。私はすぐにこのような人生とおさらばしたいと思ったが、トラウマのスパイラルに巻き込まれ、自己嫌悪に陥り、自分を欺き、自分の身に起こっていたことに自分自身を麻痺させた。そのいっさいは私のピンプ〔女性に売春させて金を稼ぐ男〕の支配(と拳)のもとでなされた。私が自由になるための強さと支援を見つけ出すのに6年もかかった。私が見知らぬ男たちに自分の体を提供していたあいだ一度として、解放された自営業のセックス起業家といったあの美化された例に会ったことはない。私たちはみなやめたがっていた。

 売買春をただの自営業の一形態のように描き出すことで、この記事は、売買春を合法化することがこれらの勤勉な女性を支援することになるのだと私たちに思わせようとしている。そしてアメリカでは、ここニューハンプシャー州を含め、全国的に「セックスワーク」を合法化ないし非犯罪化しようとする大きな動きがある。ピンプたちは、自分たちの利益を推進するためにロビーイング会社を雇った(それが「エンパワーメントされた」売春女性の団体だと思っているのなら、「金の流れを終え」と言っておきたい)。

 実際には、自分の身体を商品として売買されている女性たちにとっては、売買春はけっして持続可能なビジネスにはなりえない。それをビジネスにしているのは、彼女たちの身体を〔他の男に〕売っているピンプや人身売買業者、そして彼女らを性的に使用している買春者たちである。彼らがが何より望んでいるのは、売春行為には何の問題もなく、女性が家族を養うための一手段であると人々に思わせることである。彼らが望んでいないのは、売買春を合法化ないし非犯罪化した国や州で起きていることを人々が直視することである。彼らが人々に知ってもらいたくないのは、いかに合法化が性的人身売買を増大させ、違法市場の活動さえもいっそう繁栄させることにつながるかということだ。彼らが人々に知ってほしくないのは、いかにこの産業が増大した需要を満たすために、かつての私のような弱い立場の女性(と子供)を誘い込んだり、あるいは露骨に女性たちを拉致したりしているかということだ。私の言葉を鵜呑みにしなくてけっこう。30年近くも「屋内」売春が非犯罪化されていたロードアイランド州で起きたことを見てほしい。ピンプ、人身売買業者、買春者たちはそこを「買春者の楽園」にした。そこでは、人身売買業者と犯罪組織が国家の保護のもと、自由に何も恐れることなく活動していた。

 それは、需要と供給の問題だ。売春を非犯罪化ないし合法化すれば 需要が増えるだけであり、新しい買い手を引き込むことになる。需要が増えれば増えるほど、多くの身体が求められるようになり、弱い立場の若い女性たちが罠にはめられ奴隷化される危険性がますます高まる。知っている。私もその一人だったからだ。しかし彼らは、私のような真実の物語を人々に知ってもらいたくないのだ。

 『ユニオンリーダー』紙がわざわざ掲載したロイターの編集記事は、こうした売春女性たちの全体像について語っていない。売春女性たちへの直接のインタビューがいくつか掲載されているが、彼女らの話には単なる自営業以上のものがたくさんあるはずだ。たとえばカミーラは高層アパートに住んでいるが、月に715ドルしか稼げていない。チリの生活費がいくら安いといっても、計算が合わない。人々は物語の一部を見ているだけであり、私は、残りの部分がけっして「素敵(プリティー)」ではないことを知っている〔売買春を美化したハリウッド映画『プリティ・ウーマン』をもじっている〕。

 『ユニオンリーダー』紙はもっとよく知っておくべきだ。これは単なる新型コロナウイルスの話なのではなく、もっと大きくて醜いものの一部だということを。これらの女性たちは助けを必要としているが、それはそこにとどまる方法を見つけ出すためではなく、そこから抜け出すのに必要な助けを得るためだ。

 ジャスミン・グレースは、ジャスミン・グレース・アウトリーチの創設であり、ジャスミン・グレースの日記――人身売買され、回復し、贖罪した女性の物語』の著者

出典:https://www.unionleader.com/opinion/op-eds/jasmine-grace-sex-work-is-not-work/article_e18c259f-7292-5eae-8747-87ddcae3288b.html

投稿者: appjp

ポルノ・買春問題研究会(APP研)の国際情報サイトの作成と更新を担当しています。

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