【解説】以下は、欧州議会が2023年8月30日に加盟国に対して「北欧モデル」(アボリショニスト・モデル、平等モデル)を採用するよう求める報告書を出したことを受けて、国際的なアボリショニスト団体であるCAPインターナショナルが発表した最新のプレスリリースです。このプレスリリースは、これが国際アボリショニスト運動(売買春の廃絶を求める運動)にとって大きな勝利であると述べています。
CAPインターナショナル――28ヵ国で活動する35の草の根団体とサバイバー団体からなる連合体であり、昨年は約1万8000人の被買春者を支援――は、欧州決議になる予定の「EUにおける売買春の規制に関する報告書――その国境を越えた意味とジェンダー平等と女性の権利への影響」の採択を歓迎する。この報告書は、売買春の中の人々にとって大きな勝利である。それは、売買春を暴力の一形態として認識し、EU加盟国にアボリショニスト・モデルのすべての構成要素を採用するよう求めている。
まず欧州議会は、売買春は仕事の一形態でも個人の選択でもなく、複数の差別パターンに基づく暴力のシステムであると述べている。売買春は、人が金銭のために自己の身体をレンタルするという個人的行為ではなく、本質的に暴力的で差別的できわめて非人道的な組織された利潤追求システムあり、ビジネスとして運営され、それ自身が市場をつくり出す。ピンプ〔他人に売春させて、あるいは斡旋して利益を上げる業者〕はこの市場を確たるものにし、それをいっそう拡大するために計画的に行動しており、買春者は彼らにインセンティブを与える上で重要な役割を果たしている。
さらに欧州議会は以下のことを強調している。売買春とその搾取におけるジェンダー的性質が、支配的な力関係を反映し、それを再現していること、複合的な差別がこの力の不均衡をさらに悪化させていること、売買春の中にいる人々の大半は女性であり、それが男女間の不平等を広げていること、さらに、売買春と性的搾取が、男女の不平等な取り扱い、性差別、人種差別、能力差別、貧困、社会的排除の原因であると同時にその結果でもあること、男性、女性、他のジェンダー、周辺化された集団全般に対するステレオタイプを再現し永続させていること。
欧州議会は、アボリショニスト・モデルのすべての構成要素を採用することを求めている。
第1に、性行為の購入の犯罪化を求めている。欧州議会は加盟国に対し、報酬、報酬の約束、現物給付の提供、またはその約束と引き換えに、人に性的行為を勧誘したり、それを受諾したり、またはそれを取得することが犯罪として処罰されるようにすることを求めている。
第2に、欧州議会は、あらゆる形態のピンプ行為〔他人に売春をさせて、あるいは斡旋して金銭を得る行為〕の犯罪化を求めている。欧州議会は加盟国に対し、他人に売春させてそれを搾取することが犯罪として処罰することを求めている。
第3に、欧州議会は、とりわけアボリショニスト団体が求めフランスなどの国々で実施されているように、被買春者の非犯罪化と包括的な離脱手段へのアクセスを求めている。欧州議会は加盟国に対し、売春の防止、被買春者の非犯罪化、特に被買春女性の非犯罪化の分野で行動を起こすよう求めている。売買春の中の女性たちの大多数は売春をやめたいと望んでおり、離脱を希望する女性たちが暴力と売買春から解放された生活を築けるよう、国家からの支援を含めた信用と支援を得られるよう、代替案や退出経路の促進に努めるべきである。
最後に第4に、欧州議会は、ドイツ、オランダ、ベルギーで実施されている、ピンプ行為や買春行為を非犯罪化しノーマルなものとする「セックスワーク」アプローチを強く批判するとともに、北欧/平等モデルの肯定的な影響を高く評価している。欧州議会は、ピンプ行為と買春行為の非犯罪化が需要を増大させ、需要側をエンパワーさせ、買春をノーマル化させることを指摘し、他方で、それが売買春の中の人々をスティグマ化させつつ、この制度を維持していることを強調している。需要を減らしてこそ、売買春で搾取される人々の数を減らすことができると指摘する。欧州議会は、児童性的虐待を含む性的搾取を目的とした人身売買が、需要そのものの増大によって増加していることを強調する。このことは、リベラルな規制モデルを持つ国々でとりわけ顕著であるのに対し、フランスその他の北欧/平等モデル・アプローチに従っている加盟国は、もはや人身売買の大きな市場ではなくなっている。また、北欧モデルが、売買春の中の人々、とくにその中の女性たちの諸権利、社会における規範的効果、人身売買に対する闘争にプラスの効果をもたらしていることを強調している。
売買春が暴力のシステムであることの認識、性行為の購入(買春)とピンプ行為の犯罪化、被買春者の非犯罪化と、離脱手段の提供による被買春者への支援など、欧州議会は、ヨーロッパにおけるアボリショニスト・モデルのすべての構成要素を広範に採用することへの強い支持と、売買春システム全体を非犯罪化・合法化する規制制度への明確な拒否を表明した。
この決定は、女性と男性の平等、社会正義、マイノリティの保護の観点からして一歩前進を意味する。これはアボリショニスト運動にとって大きな勝利であり、スウェーデン、アイルランド、フランスですでに行なわれているように、加盟国に対してアボリショニスト型の立法を採択するよう明確に呼びかける。
これはまた、欧州人権裁判所においてフランスのアボリショニスト法に対する訴訟が進行中であるという状況に対しても、強いシグナルとなる。アボリショニスト・モデルの肯定的な影響はヨーロッパで認められており、民主的に選出されたヨーロッパ諸国民の代表の大多数がこのモデルを支持している。
プレス連絡先 Jonathan Machler, Director, jonathan@cap-international.org / +33651267771 ; Héma Sibi, EU Advocacy Coordinator, hema@cap-international.org / +33698394074
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