【解説】ドイツ保守系の政党であるCDU/CSU(キリスト教民主同盟/社会同盟)の議員団は、ドイツにおける売買春合法化政策の失敗を正式に認め、それに代えて北欧モデル型立法の導入を目指す政策文書(ポジションペーパー)、『売買春における非人道的状況をなくそう――買春の処罰を』を2023年11月7日に発表しました。それを受けて、同日、ドイツの「北欧モデル連合」はそれを歓迎するプレスリリースを発表したので、ここにそれを全訳します。
周知のように、ドイツでは2001年に、社会民主党と緑の党の連合政権のもとで売買春が全面的に合法化されました(2002年施行)。その際の口実となった論理は、まさにセックスワーク論の言い分そのままであり、売買春を普通の職業として合法化して、その中で何らかの暴力や不当な搾取があればそれを取り締まればいいというものでした。こうして悲惨な社会的実験が行なわれたのですが、それは壮大な失敗に終わりました。売買春そのものが巨大な産業として発達し、人身売買や搾取はなくなるどころか、合法性の看板のもとで半ば大っぴらに行なわれ、ドイツは「ヨーロッパの売春宿」と呼ばれるまでになりました。「売春を普通の職業として確立するという目標は……失敗に終わった」と、議員団の政策文書にはっきりと書かれています。この政策文書を紹介するCDU/CSUのサイトは、さらに次のように述べています。
「売春婦は通常、彼女たちを欺き、操り、虐待するピンプに完全に依存して生活している。貧困と悲惨な売春、そしてしばしば強制売春と人身売買がその特徴である。暴力団や犯罪組織がその大部分を支配しており、強制売春や人身売買によって、麻薬や武器の密売よりも多くの収入を得ていることが多い」。
こうした悲惨な状況を受けて、キリスト教民主同盟(CDU)の女性議員団体(女性同盟)は、合法化政策を根本的に転換して、北欧モデル型立法を導入するよう求めていましたが、この立場はCDU/CSU全体に受け入れられ、こうして今回の政策文書の発表となったのです。
CDU/CSUの政策文書『売買春における非人道的状況をなくそう――買春の処罰を』に関するプレスリリース
「北欧モデル連合」、2023年11月7日
2023年11月7日、CDU/CSU(キリスト教民主同盟/社会同盟)の議員団は、ドイツで北欧モデルの導入を求める政策文書「売買春における非人道的な状況をなくそう――買春を犯罪化すること」を全会一致で採択した。
これにより、欧州議会の勧告と、すでに北欧モデルを導入しているスウェーデンやフランスなど他の欧州加盟国の例にならうことになった。
CDU/CSUの議員団は、ドイツにおける現行の売春法は失敗であり、ドイツの売買春を性的搾取や人身売買から守ることはできなかったと主張している。「立法府によって作られた売買春の合法性という隠れ蓑の下で、人身売買は野放図に蔓延している」。議員団によれば、当事者の苦境につけこんで横暴な行為をした客を罰することもできていないという。
CDU/CSUの議員団は、現行の規制の代わりに、北欧モデルに基づいた新しい法律の制定を求めている。それは3本柱のモデルを提示している。その中には、社会に対する教育と啓発、売春に携わっている人々の非犯罪化と離脱支援、買春客を含むすべての利得者の犯罪化が含まれている。
私たち「北欧モデル連合」は、CDU/CSU議員団の政策文書に対する歓迎の意を表明する。「北欧モデル連合」の運営委員であるシモーネ・クライネルトは、「私たちは、買春客の全般的な犯罪化によって売春市場の規模が劇的に縮小し、ドイツへの人身売買が減少することを期待している」と述べている。私たちがとくに喜ばしく思っているのは、政府が専門のカウンセリング・センターに長期的な支援を提供するとしていることだ。ソーシャルワーカーであり、「北欧モデル連合」の顧問であるケルスティン・ノイハウスは次のように述べている。
「売買春から離脱することは、数年かかることもある長く困難な道のりだ。専門的なアドバイスセンターは、必要な専門知識だけでなく、長期的な財政的安定も確保しなければ、女性の売買春からの離脱を支援することはできない」。
連邦議会におけるCDU/CSU議員団のこの政策文書は、ドイツにおける売春法のさらなる発展のための重要な第一歩である。シモーネ・クライネルトは次のように述べている。
「私たちは、他の議員連盟が参加し、ドイツの売春法ができるだけ早く根本的に改正されることを望んでいる。それゆえ、他党の連邦議会議員がすでに現行の売買春法制の見直しを求めていることは歓迎すべきことだ」。
「ドイツのキリスト教民主同盟/社会同盟(CDU/CSU)が北欧モデルの導入を求める政策文書を発表」への1件のフィードバック