【解説】すでにこのサイトで以前に紹介したように、国連女性差別撤廃委員会(CEDAW委員会)が本年2026年にオランダに関して出した報告書では「セックスワーク」という言葉が使われるとともに、それを容認するような提案が出されていました。そのことに抗議した国際署名が取り組まれ、CEDAW委員会は若干用語を変えましたが、その趣旨を変えることは拒否しました。以下は、このことに関する、女性人身売買反対連合(CATW)の事務局長テイナ・ビエン=アイメさんの最新の論考の全訳です。
テイナ・ビエン=アイメ
CATW、2026年4月14日
国連女性差別撤廃委員会(CEDAW委員会)は、オランダ王国に関する2016年報告書において、2000年以降で同国における性的人身売買件数が過去最高を記録していることについて懸念を表明した。ちなみに、この2000年こそ、オランダ政府が売買春を合法化し、売春店やピンプの禁止を解除した年であり、それは偶然ではない。
以前の報告書において、同委員会はまた、売買春に関連する深刻な被害や健康危機、および人身売買との直接的な関連性を評価するようオランダに強く求めていた。
今年、2026年2月に公表された最終所見において、ナフラ・ハイダー委員長率いるCEDAW委員会は、売買春が移民やその他の社会的弱者である女性にとって価値ある職業上の選択肢であるというオランダのイデオロギーを支持し、世界中の女性権利擁護者や性売買サバイバーに衝撃を与えた。
これに対し、1400人を超える市民社会の活動家がCEDAW委員会宛ての公開書簡に署名し、人権原則ではなく数十億ドル規模の商業的性産業を擁護する委員会の姿勢を削除するよう、報告書の修正を求めた。
具体的に言うと、国際書簡は、国際法に反する性売買の中で造語された「セックスワーク」という用語への言及をすべて削除すること、およびオランダの性売買をさらに拡大するという提案を削除するよう委員会に求めている。
現状では、報告書はオランダに対し、「在宅セックスワーク」を許可し、売春店の営業許可数を増やすよう求めている。また、オランダ領キュラソーでは、選りすぐられた少数の外国人女性のみに「規制されたセックスワークに従事する」許可が与えられている点についても不満を表明している。
新型コロナ以前、キュラソーには「カンポ・アレグレ」という世界最大の野外売春店があり、ラテンアメリカやカリブ海諸国からの移民女性たちが集まっていた。この施設は1日あたり700~1000人の買春者を迎え入れ、女性の安全、健康、自由を犠牲にしてオランダの国民総生産を押し上げていた。
規制を緩和するという委員会の勧告は、カンポ・アレグレのような性的搾取の場を再建することしか招かないだろう。
オランダには、売買春を制度化し、植民地化したあらゆる土地へそれを輸出してきた数世紀にわたる歴史がある。国家の利益と男性の性的快楽のために、女性という一つの階級全体を人種的に隷属させ、性的奴隷として扱ってきたのだ。CEDAW委員会の責任は、この背景を理解すること、そして売買春が性的人身売買、強制、債務奴隷、組織犯罪と不可避的に結びついていることを理解することにある。
国連機関が発行する報告書は不変のものではない。報告書を修正することは可能である。反発を受けて、CEDAW委員会は当初、性的人身売買された少女たちを「未成年セックスワーカー」と表現していた部分を2ヵ所削除した。
しかし現在、委員会はさらなる修正を拒否し、国内法や変化する基準・用語を尊重しなければならないと主張している。これは人権条約機関としては、はなはだ説得力のない主張だ。
毎日、各国政府は、偏見に満ちた社会文化的・宗教的規範を名目に、女性と少女の不可侵の権利を蹂躙する法律を制定している。女性器切除の推進、少女婚の容認、教育の禁止、そして女性から生殖に関する権利を奪うことなどがそれだ。
基本的人権は、国連の独立専門家の気まぐれな意見を測る風見鶏ではない。国際的な法的文書や多くの国連事務総長は、売買春が人間の尊厳や個人の価値と相容れないものであると定めている。
オランダのあらゆる近隣に売春店を開設するよう委員会が奨励していることは、女性の身体の商品化やオンラインでの性的勧誘に対する社会の許容度が揺れ動くことに基づいて、「女性と少女に対する暴力」に関する国連の分類が変化しうるという危険な傾向を示している。
性売買への同委員会の支持は、オランダに対する同委員会の指針の大部分とも矛盾している。同指針は、オランダの政治における意思決定過程での女性の過小代表、民間主体による性差別に対処する措置の欠如、司法へのアクセスにおける根強い障壁、そして女性の権利を損なう不十分なデータ収集を指摘している。
それにもかかわらず、委員会が、時に死に至ることもある売買春という暴力的な慣行を、「女性差別撤廃条約」(「女性の国際人権宣言」として知られる)に対するオランダの不履行の範囲から除外するのは、理不尽きわまりない。むしろ、政府がなぜ、脆弱な女性に対して性暴力、ハラスメント、非人間的な扱いを行なう力を購入する男たちを擁護するのかを検証しなければならない。
1987年から2017年の間に、オランダ政府は売買春の中の女性たちに対する殺人事件127件を公表しており、そのうち85件は未解決の暴力による死亡事例である。2022年には、買春したウクライナ人女性を自宅で残忍に殺害したとして、買春者とされる男が起訴された。これこそが、CEDAW委員会がオランダ政府に容認を求めている「自宅でのセックスワーク」の実態である。
生きていれば有罪判決を受けたであろう性犯罪者ジェフリー・エプスタイン──数十年にわたり、自身や富裕層の友人たちのために自宅での売買春を助長し、処罰を免れてきた人物──は、自分が数千人の女性と少女たちに加えた言語道断の虐待や性的暴力を、あろうことか、女性の権利に関する国際監視機関〔CEDAW委員会〕が単なる自宅での「仕事」だと結論づけたのを見て、大喜びすることだろう。
同委員会がオランダに関する報告書を公表したのと同じ週、国連人権高等弁務官のフォルカー・テュルクは、「エプスタイン・ファイル」を、制度的な人権侵害の明白な実例として挙げ、権力構造がいかに搾取を可能にするかを説明した。彼は、女性に対する暴力というグローバルな緊急事態に対処するため、国家の説明責任を求めた。
テュルク氏は、CEDAW委員会に対しても、被害者を保護すべき国際機関が加害者をエンパワーさせることを選んだ場合、性売買の被害者やサバイバーは誰に助けを求めればよいのかと問うべきだ。
CEDAW委員会は、性産業で売買されるすべての女性の不朽の権利を、処罰や犯罪化、警察による嫌がらせや暴力の恐れなしに保障するよう各国に強く求める必要がある。また、広範でトラウマに配慮した支援、住居、経済的代替手段への道筋を緊急に必要としているサバイバーたちと連帯しなければならない。
女性と少女の生活を破壊する、政府公認のミソジニーの仕組みを無視するのではなく、CEDAW委員会は、女性と少女が平等と尊厳を享受し、暴力のない生活を送る権利を擁護しなければならない。
委員会がこの報告書を修正するまで、CEDAWの使命と正当性には消すことのできない汚点が付きまとうだろう。
出典:https://catwintl.substack.com/p/a-love-letter-to-jeffrey-epstein