【解説】2021年1月8日、ソウルの中央地裁は、日本政府に対する損害賠償を求めた日本軍「慰安婦」とその遺族たちの訴えに対して、請求通り1人1億ウォンの支払いを命じました。日本政府は問題は決着済みで、主権免除を盾に裁判を無視してきました。これは実に画期的な判決であり、人権運動の歴史に新たな地平を開くものです。以下に、一貫して日本軍「慰安婦」に取り組んできた韓国の女性団体による声明の日本語訳を掲載します。
日本軍「慰安婦」問題の新たな地平を切り開いた歴史的な勝訴判決を歓迎する!
本日、ソウル中央地方裁判所(第34民事部、裁判長キムチョンゴン)は、日本軍「慰安婦」被害者たちが日本国を相手に起こした損害賠償請求訴訟で原告らに対する被告日本国の損害賠償責任を認定する記念碑的判決を言い渡した。今回の判決は、大韓民国の憲法秩序に合致するだけでなく、国際人権法における人権尊重の原則を確認する先駆的な判決である。これによって、国内の裁判所はもちろん、全世界各国の裁判所が模範とする人権保護の新しい地平が開かれた。大韓民国の裁判所のこの判決は、被害者の切羽詰った訴えに対して、誠意をもって「人権の最後の砦」としての責務を果たしたものであり、私たちはそれを心から歓迎する。
これまで被害者たちは、日本軍「慰安婦」被害事実を何回も公開証言して、被害者中心のアプローチに基づいた解決を要求してきたが、その都度、そっぽを向かれた。日本の裁判所は1965年の請求権協定を口実に被害者たちの訴えを退けた。2015年のいわゆる「韓日合意」でも被害者は徹底して排除された。「2015韓日合意」後も、日本政府は歴史的事実を歪曲し、日本軍「慰安婦」被害自体の存在を否定してきた。さらに、世界各国で女性の人権と平和の象徴である「平和の少女」像の建立を組織的に妨害し、撤去を要求し、日本軍「慰安婦」問題を抹消することに血眼になっている。
このように加害者が持続的に犯罪事実を否認し、他の救済手段が阻まれている状況で、被害者たちは最後だという気持ちで大韓民国の裁判所の扉をたたいた。今回の判決は、その最後の訴えに背を向けなかった大韓民国裁判所の回答だ。日本軍性奴隷制の場合のように人権を深刻に侵害された場合には、人間としての尊厳と価値および裁判請求権と普遍的人権尊重の原則は主権免除の抗弁よりも優先されなければならないという明快な宣言だ。
裁判が進められているあいだに、相当数の原告の方が亡くなられ、現在、被害生存者は5人に過ぎない。時間はない。日本政府はただちに判決に従って賠償しなければならない。さらに、今も20世紀最大の人権侵害犯罪とされる日本軍「慰安婦」問題を率直に認めて、心からの謝罪と追悼、持続的な真相究明、正しい歴史教育に乗り出すことにより、全面的な「法的責任」履行のために乗り出さなければならない。
今日の歴史的な判決が日本軍「慰安婦」問題の正しい解決のための羅針盤となって、1月13日、被害者らが提起した他の損害賠償請求訴訟(ソウル中央地方裁判所第15民事部、裁判長ミンソンチョル)の1審判決でも再現されるだろうと私たちは信じている。
日本軍性奴隷制問題解決のための正義記憶連帯、日本軍「慰安婦」歴史館(ナヌムの家)、日本軍「慰安婦」研究会、日本軍「慰安婦」ハルモニと共にするトンヨン・コジェ(統営・巨済)市民の会、日本軍「慰安婦」ハルモニと共にするマチャンジン(馬昌鎭)市民の会、挺身隊ハルモニと共にする市民の会、平和蝶ネットワーク、一同
2020年1月8日