イタリアで強制売春させられるナイジェリアの移民女性

【解説】以下の記事はやや古いもので、新型コロナウイルスによるパンデミック前の2018年の3月に掲載されたCNNの記事です。イタリアに関する情報はこれまでこのサイトで紹介したことがなかったので、やや古いですが、1本紹介することにしました。売買春によって助長される性的人身売買の深刻な一端を示すものです。

ミレナ・ヴェセリノヴィチ&イサ・ソアレス

CNN、2018年3月21日

 イタリアのトリノ――凍てつくような秋の夜、若い女性たちがイタリアのトリノ市のさびれた工業団地の街角に立っている。零下近い気温であるにもかかわらず、彼女らは短いショーツに紐のようなトップスを身に着けた薄着姿で、凍えるような夜気の中、焚き火を起こして暖を取っている。

 ほとんどは1人で立っており、車が通るたびに、手を振って呼び止めるためだけに自分の持ち場を離れる。

 客を取り合っているこれらの路上の女性たちは、よりよい暮らしができるという希望を胸に、サハラ以南からヨーロッパへと人身売買業者によって運び込まれてきた膨大な人々の一部にすぎない。

 国際移住機構(IOM)によると、2016年だけで、およそ1万1000人ものナイジェリア人女性が海を渡ってイタリアにやって来た。IOMの言うところでは、そのほとんどが売買春の被害者となるリスクにさらされており、この陰惨な旅の結末に至る途中でも、多くの者はレイプや虐待をこうむり、ちゃちなゴムボートで危険な地中海を渡らなければならなかった。

 ヨーロピアン・ドリーム

 そのような移民の1人である17歳のベッキーは、15歳の時にナイジェリアのエド州からヨーロッパに向けて出発した。孤児だった彼女は養父母の家庭で育てられ、ナイジェリアの裕福な女性のメイドとして働いていたが、医者になりたいと夢見ていた。雇い主の娘はヨーロッパに住んでおり、ベッキーはそこでのより良い生活の話に魅了された。

 「彼女は、ヨーロッパに来ればチャンスがあると私に言いました。学校にも通えるし、何もかもうまくいくと」。北イタリアにある、人身売買された女性移民のためのシェルターのベッドのはしに腰掛けながら、ベッキーはそう語った。

 「彼女は、ヨーロッパではやりたいことは何でもできる、そこは自由な世界だと話しました。私は、うわー、なんてすごいの、という感じでした。そして彼女は、妹がたぶん連れて行ってくれると言いました。私はとても嬉しかったんです。とてもヨーロッパに行きたかったですから」。

 ベッキーの話では、彼女はニジェールを超えてリビアに入った。そのリビアで彼女は5ヶ月間も拘置所に閉じ込められ、看守によって繰り返しレイプされた。その看守はリビアの民兵だったという。

 「人生で最悪の経験でした」、ベッキーは、加害者たちによってひっぱたかれて起こされたり、時には皆が利用する共用ホールで他の移民たちの前でレイプされたことを説明しながら声を震わせた。「叫んでも怒鳴っても、誰も助けてくれません、レイプでも何でも、あいつらがやりたいようにやるんです。何も言えませんでしたし、どうしようもありませんでした」 。

 人身売買業者が拘置所の責任者に彼女の身受け金を支払った後、ベッキーは解放された。しかし彼女の苦難は終わりにほど遠かった。彼女は妊娠していたが、運び屋に渡された液体を飲むと、その赤ん坊は流産したと言う。

 「どうしてそうなったのかもわかりません」と彼女は話す。「わかっているのは、ボトルに入った水を飲んでから出血が始まったことです。ひどい痛みで、本当に苦しかったです」。

 体を売ることを強制されて

 体の回復を待つ暇もなしに、小さなゴムボートに4人の若い女性たちとともに詰め込まれ、彼女はやがてシシリー島の移民キャンプに行き着いた。最終的に、彼女の人身売買業者の取引相手が島の中心都市であるパレルモへ彼女を連れて行った。「今度こそ仕事に就けるのではないかと希望を抱きました。その時は、何が起こるかわかっていなかったのです」とベッキーは言う。

 ヨーロッパまでの移送費用3万5000ユーロ〔約450万円〕は人身売買業者に対する借金になっていた。業者はその返済のためだとして彼女を路上に立たせた。「ドレスアップされ、髪を整えられ、メイクをされました。何をされているのかさえわかりませんでした。そしてコンドームの入ったバッグを渡されたのです」。

 彼女は車で通りまで連れて行かれ、1日に200ユーロ〔約3万5000円〕を稼いで戻れと命令された。「男と寝て支払われる金額は、せいぜい30ユーロ〔約5000円〕です。何人と寝なければいけないか計算してみてください」と彼女は言う、「稼いでも稼いでも、借金はけっしてなくなりません」。ベッキーは最初身体を売るのを拒み、マダム〔売春店の女経営者〕の元に手ぶらで戻ると、翌朝さんざん殴られた。

 最終的に、彼女はどうにか逃亡することに成功する。今では路上に出て仕事することなく、「移民受け入れ総合プロジェクト(PIAM)」という、ナイジェリア人の人身売買サバイバーであるプリンセス・イニアング・オココンによって運営される移民保護の慈善団体の世話になっている。1999年に設立されてから、このNGOはこれまで400名のナイジェリア人女性を支援してきた。PIAMは、ベッキーをはじめシェルターで暮らす若い女性たちにイタリア語の教育を提供し、小さな仕事場で陶芸の技術を教えている。

 警告の言葉

 長年ナイジェリア人女性の人身売買に取り組んできたトリノの副検事パオロ・ボルグナは、売買春を強要される少女たちがどんどん若年化していると話す。

 ボルグナは、被害者が搾取の加害者を警察に通報することの難しさを語った。イタリア政府はかつて、被害者が積極的に訴え出るよう、名乗り出た被害者に暫定的な合法的滞在ビザというインセンティブを与えることができたのだが、今ではそれもできなくなっている。現在は、難民としての避難を求める者に、その訴えの是非が審査されるあいだ一時的な滞在許可が与えられるだけで、その審査には何年もかかることがある。

 「司法レベルというより行政レベルでやらなければならないのは、難民としての地位を認めるか拒否するかを審査する時間を短縮することです」とボルグナは言う。

 ベッキーは、自分は運良く人身売買業者から逃げられたと考えているが、その過酷な経験は今も彼女を苦しめており、トラウマの治療のため心理学者の元にずっと通いつづけている。

 ヨーロッパへの渡航を考えている人々に、ティーンエイジャーの彼女は厳しい警告の言葉を発する。「行くなと言われても、多くの人は聞く耳を持たないでしょう。海外に住むことこそ最高の暮らしだと思っていますから」、「誰もがここに来たがります。誰もがそこがどんな風なのかを知りたがります。でも、みんなが思うようなところではありません」と彼女は言う。

 「私は誰かに私と同じ旅をするよう勧めることはできません。なぜなら、私は幸い生きのびたかもしれませんが、他の人たちは生きのびられないかもしれないからです」。

出典:https://edition.cnn.com/2017/12/21/world/italy-nigeria-sex-trafficking/index.html

投稿者: appjp

ポルノ・買春問題研究会(APP研)の国際情報サイトの作成と更新を担当しています。

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