メリンダ・タンカード・リースト「オンライン・ポルノは世界最大の『教育機関』」

【解説】以下のインタビューは今年3月に行なわれたもので、少し古いものですが、内容はいささかも古くなっていないので、ここに紹介します。メリンダ・タンカード・リーストさんは、オーストラリアのアボリショニスト団体であるコレクティブ・シャウトの指導的メンバーとして、反ポルノ・反売買春の運動を長年行ない、小中高などで性的人権教育に携わってきました。オーストラリアでは今年の初め、議会職員や議員スタッフによる相次ぐ性犯罪・性暴力が発覚したこともあって、「リベラル国家」における性暴力文化・性差別文化の深刻さが明らかになりました。メリンダさんは、オンライン・ポルノも売買春も野放しにするオーストラリア政府(州政府を含む)の政策の結果が、子供から国会議員まで蔓延する性暴力文化の重要な原因の一つであると語ります。

メリンダ・タンカード・リースト

メルカトルネット、2021年3月31日

 メルカトルネット: あなたは高校生への性教育の経験が豊富ですね。しかし、シャネル・コントスが集めたシドニーの上流階級向けの高校に通う少女たちの何千もの虐待の話にショックを受けているようです。以前からずっとこうだったのではないですか?

 メリンダ・タンカード・リースト:お言葉ですが、どうして私がショックを受けたという考えに至ったのかよくわかりません。「ABC Religion & Ethics」のコメント記事や、この記事が掲載された後に行なったラジオ・インタビューでも述べましたが、それは驚くべきことではありません。私はこの10年間、このような話を集め、記録してきました(例えば、こちら)。私が驚いたとすれば、なぜこのような事態になったのかについて何の手がかりもないかのように語られていることにびっくりしたからです。

 そうは言っても、個々の証言を読んで胸が苦しくなりました。私たちはみな、心を痛めるべきです。たしかに、少女たちは以前からこの種の虐待を受けてきました。しかし、虐待はますます広がり、被害者の年齢も低くなっているようです。

 生徒たちの間で広がっているこの性暴力危機の究極の原因として、あなたは「世界最大の教育機関」であるオンライン・ポルノを挙げていますが、それはどの程度普及しているのでしょうか?

 私は別に究極の原因だとは言っていないと思いますが。多くの要因が絡み合っているのであり、既存の要因もいくつかあります。しかし、この巨大産業は、これらの要因を増強しているのです。

 これが世界最大の性教育機関であり、その略奪的な性質と子どもや若者へのアクセスのしやすさ、そして世界的な調査結果を考慮すると、虐待をエロティックに描き出すことで虐待を助長していることは間違いありません。また、それは性暴力をノーマルなものにしています。

 少年たちは、女性が人間性を奪われ、ひどい拷問を受け、貶められている映像(最も暴力的なジャンルが最も人気があることを念頭に置いてください)を繰り返し見せられ、そのような映像で興奮するように訓練されており、そのことによってこれらの行動を自分の性的レパートリーに組み込むことになります。

 その結果、彼らは「同意」に興味を持たなくなります。ポルノにはそもそもいかなる「同意」もありません。その中の女性たちは、自分たちにされるあらゆることを自ら望んでいるものとして描かれているからです。女性がたとえ「ノー」と言ってもそうなのです。「ノー」という言葉を使った一大ジャンルがあり、「強制された~」や「犯された~」というジャンルも大人気です。

 10年前に「コレクティブ・シャウト(Collective Shout)」を始めたときに予測していたことがすべて現実のものになりました。しかし、「言ったとおりでしょう」と言っても何の喜びもありません。私はこれまで6冊の本を出しましたが、そのうちの3冊は、性的でポルノ化された世界の有害な影響を明らかにしたものです。ポルノは、少年たちに特権意識、ナルシシズム、性的残虐行為のパターンを教え込み、女性や少女は自分の性的満足や喜びのために存在すると刷り込んでいます。

 こういうものを日々浴びている少年たちはセクシャルハラスメントや暴力に寛容になり、女性に対する攻撃的な態度を身につけ、性的残酷さに鈍感になっていきます。ポルノは、少年や男性に新しい行動規範を植えつけ、彼らが共感を自分のセクシュアリティに組み込むことを阻害しています。

 少女たちは、ポルノファンタジーの小道具となり、ポルノ的な役割や行動を受け入れ、自分自身をセックス用のATMとみなすように訓練されていきます。そして、それが「解放」や「エンパワーメント」であるかのように騙されてしまうのです。

 私たちが目にしているのは、世界規模で行なわれている性の商品化であり、それは主として利潤を得るためになされています。世界最大の教育機関であるポルノ産業が行なってきた略奪的なグルーミングは、一世代全体の性的成長を妨げることにつながりました。今、私たちはこの大規模なポルノ漬けがもたらした結果を目の当たりにしています。それこそが、性的暴行、望まないセックス、強要と強制的なコントロール、感情的な操作、攻撃です。

 私は今、小学校でこれらの問題について講演するように招かれています。話の内容はますます悪くなり、若年化も進んでいます。

 あなたはこれらの話を「重大かつ系統的な人権侵害」と表現しました。それは少し大げさではありませんか? 私たちが話しているのは、パーティーやセクスティング〔携帯メールで性的な写真や言葉を送りつける行為〕のことであって、恐ろしい犯罪のことではないのではないでしょうか?

 ABCのコメント欄で私は、女性はまず人間として見られ、尊厳と敬意に値する存在でなければならないと述べました。「私たちは結局のところ、重大かつ系統的な人権侵害について話しているのです」と言いました。その背景にあるのは次のような認識です。私が引用したイクオリティ・ナウ(Equality Now)のレポートによると、「人権侵害としてのレイプへの対処――世界では、3人に1人の女性が一生のうちに何らかの暴力を受け、10人に1人の少女が『強制的な性行為』を経験している」ということです。したがって私が言っていたのはまさに「重大かつ系統的な人権侵害」としてのレイプのことであって、「パーティーやセクスティング」のことではありません。これは、私が性的虐待や暴力に関するいくつかの証言を再述するための前置きだったのです。

 シャネルのウェブサイトに掲載されている証言の中で、ある女の子は、数週間前にいっしょに「同意に関する授業」に参加した男の子からレイプされたと報告しています。もしそういうことが本当なら、同意教育はどれほど効果的なのでしょうか。

 ABCの記事で論じたように、同意教育は、女性蔑視と暴力の巨大な発信源であるポルノをはじめとする有害な文化的・社会化力を検証する全体的な枠組みの中で行なわれる必要があります。そうでなければ、その効果は限られたものになってしまいます。ポルノは、征服することにこそ価値があると教えています。同意を拒否することがエロティックだと考える少年たちを育てているのです。

 ニューサウスウェールズ州の警察長官は最近、性的同意のためのモバイルアプリのアイデアを出しました。これはいいアイデアだと思いますか?

 若い女性がアルコールやデートレイプ・ドラッグを飲まされていたら、略奪者や加害者になろうとする者は、顔認識や彼女の指を使ってスマホのロックを解除し、アプリにアクセスすることができます。あるいは、女性の側が途中で気が変わった場合、例えば彼があまりにも攻撃的になった場合、アプリを使って最新情報を得ることが何の役に立つでしょうか?

 もう少し有益なのは、警察や救急車などに緊急事態を知らせるアラーム機能や、性的暴行に関するホットラインや緊急避難センター、法律の相談窓口のリストを提供してくれるアプリです。

 少年たちはポルノ産業によって「過激化(radicalised)」されているというのは、どういう意味ですか?

 この言葉は、私たちの会の英国人メンバーであるジェームズ・エバンスのエッセイでキー概念として使われています。彼は、これまで私が見たことのないようなアプローチで、ポルノによる過激化の影響について書いています。

 ジェームズは、長年にわたるポルノの消費によって、「女性を人間として見ることができなくなった」と述べています。女性を非人間化するオンラインのサブカルチャーにどっぷり浸ることで、「パソコンやスマホの画面の向こう側で、女性の客体化、非人間化、女性憎悪を説き、セクハラ、レイプ、児童虐待をノーマルなものとみなす過激化」を招いたのです。彼はこう述べています。

「これが私の過激化です。女性を人間として見ることをやめ、目にした女性をすべてモノ化し、見た瞬間に頭の中で彼女たちをポルノビデオに変え、一人残らず彼女たちとの性的関係を想像し、彼女たちが好むと好まざるとにかかわらず、彼女たちの体を手に入れる権利が自分にはあると考えるようになったのです。……

 ポルノとは、あらゆる有害で男性的な権力妄想を洗練し脚本化し高精度な画像にしたものなのです」。

 ジェームズは、「虐待は間違ったことであり、非難されるべきであり、止めるべきものであって、自慰行為をするためのものではないと考えるようになる」ためには、自分の道徳観を再構築する必要があると述べています。彼は言います、「共感を学び直さなければなりませんでした。女性を単なる生きたセックス人形ではなく、人間として見直さなければならなかったのです」。

 すると、ポルノは男性をも傷つけるということですか?

 もちろんです。私が読んだ証言の中で最も悲しかったのは、生身の女性では、つまり肌と肌が触れ合うことでは興奮することができなくなったという若い男性の証言でした。彼は部屋の中にある無生物のコンピューター画像を見て興奮したそうです。私は多くの若い男性と話をしますが、彼らは強迫的なポルノ使用による下降スパイラルに陥っています。この業界は略奪的であり、常に次世代の消費者を育成する必要があります。男の子たちは私に語ってくれました。スポーツするのをやめたり、家族と過ごせない言い訳をしたり、新しいポルノを求めて徹夜したり、学力が低下したり、人生が吸い取られたり、命を育む活動から切り離されたりしたと話してくれました。

 女性や少女に対する彼らの考え方は変わりました。彼らは、女性や少女を、尊厳と敬意に値する完全な人間としてではなく、自分の欲望を満たす存在という観点でしか見れなくなってしまったのです。彼らは、女の子と「友人」になるのにも苦労し、彼女たちを一個の人格と見ることさえなかなかできないのです。

 国会議事堂内での若い職員による破廉恥行為〔国会の職員が女性議員の上で自慰行為をしてそれを撮影し、仲間内で共有していた事件〕についてはどうでしょうか? 高校での虐待との関連性はあるのでしょうか?

 それはわかりませんし、データもありません。あなたのおっしゃるのが、これらの職員が高校時代に虐待的な経験をしたのかということであれば、そういう情報は今のところありません。それは誰にもわからないでしょう。こうしたことはしばしば過去との連続性において起こりますが、今のところ私はそのデータを持っていません。

 これは単なる「破廉恥行為(sleaze)」ではありません。この言葉は、性的暴行、性的嫌がらせ、不適切な接触、撮影、女性議員の机の上での自慰行為や射精、そしてその映像を仲間内で共有したという問題を矮小化しています。「若い職員」とおっしゃいますが、どうして全員が若いとわかるのですか? 関係者全員が特定されたわけではありません。また、「Big Swinging Dicks」と名乗っていたとされる男性議員のグループも若くはありませんでした。

 私たちが目にしているのは、若い頃から始まる行動パターン、それとの連続性です。国内外の性的暴行の統計に現われる思春期の少年の数が増えています。性差別的な文化は、性的な少年を育成し、彼らの人間性を低下させます。私たちは、その結果がそこら中にあふれかえっている現状を目の当たりにしているのです。

 健全な人間関係を築くには今後どうすればいいのでしょうか。子供たちは、強力に性的なものとされた社会の中で育っています。彼らが幸せな結婚をする望みはあるのでしょうか。

 今のままでは、長期的に持続可能なパートナーシップや結婚はもちろんのこと、健全な友人関係さえ望めません。私は成人女性の証言も集めていますが、彼女たちは、自分よりもポルノを選ぶパートナーについて話してくれます。彼女たちは騙されたと感じています。ポルノとの競争には勝てないと感じているのです。カウンセラーに相談すると、それは普通のことで、もっと大らかになって、男性というのはそういうものだと受け入れなければならないと言われます。ポルノが教えてくれるのは、女性を征服し虐待する方法であって、本物の親密さやつながり、愛情、そして長期的な関係を維持するために必要な共感については教えてくれません。ポルノは反関係(anti-relation)なのです。それはつながりを破壊するものであって、他者との関係性において人間性を豊かにすることとはまったく相容れません。手遅れになる前に、若い人たちがポルノのストーリーを拒否することが必要です。

 私たちにできることは何でしょう。

 現実を直視しましょう。政府や規制機関は私たちを失望させました。もちろん、親は子どもたちをポルノから守るために全力を尽くす必要がありますが、その負担は大きいものです。フェアな戦いではないのです。ある母親が私に語ったように、「ポルノは私たちの生活に陰湿に入り込み、私たちの子どもを育成した」のです。

 性産業が私たちの子どもを育成することを許してはなりません。現在の危機は、私たちに変化を起こすチャンスを与えてくれています。

 1年前、ポルノやギャンブルサイトから子供を守るための年齢確認に関する下院委員会の調査は、「Protecting Innocence」というレポートを発表し、年齢証明による保護の実施を推奨しました。これで問題がすべて解決するわけではありませんが、少なくとも、ボタンをクリックするだけでレイプやサディズム、拷問のポルノを子供たちが見てしまうことを防ぐための一つの壁にはなるでしょう。

 しかし、なぜか政府はこの報告書に反応していません。私たちは、政府に早急な対応を求めています。より詳しく知りたい方は、ポルノハブの親会社であるマインドギークに関するカナダ議会の調査委員会に私たちが提出した意見書を見てください。私たちが2016年から調査しているポルノハブというサイトは、レイプ動画、児童性虐待のコンテンツ、同意なしに共有された画像(画像による虐待)、人身売買による動画を、人種差別的ないし女性差別的なコンテンツとともにユーザーに提供しており、そのことことが、現在、世界的に暴露されています。

 会のメンバーであるダニエル・プリンシペと私は、オーストラリア中の学校で講演を行なっていますが、新たに、「セックス化した世界をナビゲートする」、「ポルノの害とポルノ文化」、「尊敬できる人間関係」、「個人の境界線を守る」、「信念と価値観に従って行動する」、「相互の尊敬と共感に基づいた人間関係を目指す」といった内容を提供しています。

 これまでの反応はとても勇気づけられるものです! 若者たちは、このような文化が自分や友人、人間関係、そして人生を豊かにする能力にとって有害であることを知っています。彼らは本物の愛情とつながりを求めています。彼らが求めているのは、同意アプリで画面をスワイプする方法ではありません。彼らは、親密な関係の意味や目的、倫理に興味を持っています。私たちは、彼らが社会変革や文化的変容に関与できるように支援しているのです。より詳しいことを知りたい方は、私の個人サイト私たちの会のサイトを見てください。

出典:https://mercatornet.com/online-pornography-is-the-worlds-biggest-department-of-education/71157/

投稿者: appjp

ポルノ・買春問題研究会(APP研)の国際情報サイトの作成と更新を担当しています。

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