トム・ファー「審判を受けるポルノ連合――マインドギーク、ポルノハブ、VISAの共謀」

【解説】以下の論考は、イギリスの反性搾取団体であるThe Centre to End Sexual Exploitation (CEASE) のメンバーであるトム・ファー氏が『クリティック』に寄稿した最新論考で、カナダを拠点とする世界最大のポルノ業者の一つであるマインドギーク、およびそれが運営しているポルノハブ、そして、このサイトで決済処理を担っていたVISAに対して、性搾取の被害女性が起こした裁判について論じたものです。

トム・ファー

『クリティック』2022年8月11日号

 「児童ポルノ」(児童性虐待映像物Child Sexual Abuse Material、CSAM)を将来の再アップロードのために保管しておく、幼児への性的虐待を撮影したビデオのタイトルとウェブデータを維持して自サイトへのアクセスを呼び込む、匿名で批判者を中傷する――これらは、多国籍コングロマリットであるマインドギークに対する判決(今回新たに公表されたもの)で挙げられた恐ろしい罪状のほんの一部だ。

 この裁判と判決文は、不幸にもそれを読んでしまった人にとってはトラウマとなりかねない内容だが、そうでない人のために簡単に概要を説明しておこう。数年前からマインドギークとその子会社サイトであるポルノハブは、同サイトが違法コンテンツの流布に関与しているとされたことをめぐって、反性搾取の活動家や専門家、諸団体との戦いを続けてきた。

 この違法配信は、児童やティーンエイジャー、大人の性的虐待を撮った動画や画像から、被写体の性的画像を合意なしにファイル共有すること(俗に「リベンジポルノ」と呼ばれる)まで、多岐にわたる。

 今回の訴訟は、セレナ・フレイテス(Serena Fleites)というとてつもなく勇敢な若い女性が起こしたもので、彼女は2020年に『ニューヨーク・タイムズ』がポルノハブについて暴露した記事で取り上げられた被害者の一人でもある。フレイテスはこの訴訟で、マインドギークに対して数々の訴因を提起したが、おそらくここで最も重要なのは、カード会社であるVISAをも訴訟対象としたことだ。

 デジタル時代のポルノ業界の仕組みに詳しくない人にとっては、奇妙なつながりに思えるかもしれないが、この関係は「偏見のない」立場から見てもまったく筋が通っている。つまり、VISAはマインドギークのウェブサイトにおいて決済処理を行なう役割を担っていたのだ。

 ポルノ――それ自体が女性の身体(ほとんどの場合そうだ)を性的客体として商品化すること――から利益を得ることは根本的に不適切だと多くの人が主張するだろうが、VISAに突きつけられた訴えはもっと重大なものだった。

 フレイテスは、VISAが違法かつ虐待的なコンテンツの決済業務で利益を得てきただけでなく、それがコンテンツの本質であることを認識していたと主張している。さらにフレイテスはこう主張する。VISAは、マインドギークとの関係見直しを求める世論の声を無視しただけでなく、同社との関係継続が適正なものかどうかを調査するための自社自身による評価手続きをも無視したと。

 フレイテスの損害賠償請求訴訟(一部は人身取引被害者保護再承認法に基づき提起された)に対し、VISAはフレイテスが被った被害と自社とは無関係だとし、違法性の高いコンテンツから利益を得る行為全般に関与したことを否認している。判決文は長いが、力強く書かれており、読むに値する。裁判所は、VISAが違法かつ悪質なコンテンツによる利益供与に関与したとされる責任と過失を回避するのを(部分的だが)認めなかった。 

 同判決は、VISA、マインドギーク、ポルノハブに対する告発が信ぴょう性のあるものであることを認定すると同時に、ポルノ業界の基本的な運営実態を精査したうえで、それを最終的に厳しく非難している。同判決は、この業界が、故意であろうとなかろうと、いかにひどい搾取を行なっているかを理解するための重要な手がかりを提供するものだ。

 判決文にはこうある。「もし利益の最大化が同社の動機でないなら、なぜマインドギークは、原告が18歳未満であることをタイトルで明示されているにもかかわらず、原告の最初の動画をアップロードすることを許可したのか?」。さらに言う、「VISAは、マインドギークのウェブサイトの維持・運営にはいっさい関与していないと主張している。……VISAに対する原告側(フレイテス)の主張は、VISAがマインドギークに対し運営の変更を迫ることができるという、立証されていない仮定に基づいている。……とはいえ、VISAは実際、少なくとも一時的には、マインドギークに対し運営の仕方の変更を強いたし、しかも実にはっきりとした形でそうした」(これは、2020年にVISAがマインドギークへの「特別待遇」を一時停止した際、ポルノハブがコンテンツの80%以上を削除した時のことを言っている)。

 マインドギーク――そしてより一般的にはポルノ業界――が利益の最大化を目指しているという裁判所の認識は、ポルノ業界に反対する積極的な運動家が長年にわたって言い続けてきたことである。フェミニスト作家で熱心な反ポルノ運動家であったアンドレア・ドウォーキンは、インターネットそのものが存在する以前の1981年に、このことをすでに認識していた。『ポルノグラフィー――女を所有する男たち』)の中で、彼女はこう述べている。

「写真や映画の中では、生身の女性が娼婦(porneia)として使用され、生身の女性が娼婦として描かれている。利益を得るために、ピンプ〔女衒〕たちは娼婦を供給しなければならない。この技術は、女性が残忍に扱われ、しかもそうされたがるという視覚的消費の市場を拡大する。市場の要求を満たすために必要な写真の数が、写実的な描写の要求を満たすために必要な娼婦の数を決定するのである。」

 市場が、利益のために必要な「商品」――女性の身体――の量を決定するというこの話は、ゲイル・ダインズ博士がその約30年後に出版した画期的な著作『ポルノランド』で受け継がれている。ダインズ博士は、多くのポルノ業者と貪欲な買春者とでごった返すポルノ展示会場を見て回ったうえで、次のように述べている――「彼らが特にセックスに興味があるわけではないことがよくわかる。彼らが興奮するのは金儲けなのだ」。

 アンドレア・ドウォーキンによる産業としてのポルノの経済的分析から半世紀近くが経った今日も、この傾向は続いている。ゲイル・ダインズが、ポルノ業者を駆り立てているのは特定のセックスを描きたいという欲望ではなく、利益の追求であることを確認してからも、すでに10年以上が経過している。しかし2022年、市場はすでに飽和状態に達しており、堤防が各所で決壊し、想像を絶するような下劣な行為をこれでもかと描き出す動画があふれ出している。

 それが、マインドギークやポルノハブの現在の所業につながっている。互いに気持ちよくなれるセックスがポルノ産業の基礎であるという幻想の時代は終わった。現在、自由市場の水圧効果によって堤防は破壊され、ポルノ産業から最後の一滴まで利益を搾り取るために、ポルノのグロテスクなハイパー細分化が起こっている。

 この業界は、歴史的にかつての「ポルノ女優」の時代とは違って、もはや、全体的な商品として売られる個人としての女性たち「だけ」で構成されているのではない。現在、これらの全体としての客体物は、ヴァギナ、口、肛門といった、利益を絞り出すための個々のパーツに分解される。それぞれの身体はその構成要素に無理やり「専門化」され、消費者が容易にアクセスできるように「カテゴリー別」に分類される。時には、若い女性が同意なしに自分の身体の一部の写真を撮られ、より大括りのコンテンツの掃き溜めにアップロードされることがある。「ティーン」「合法すれすれ」など、数え上げればきりがない。

 VISAは、ポルノ業界とつるんで懐を肥やしてきた他の金儲け機関と同様に、信用を失墜させた。ポルノハブはプラットフォームを提供し、マインドギークはインフラを提供してきたが、VISAはこの利益推進連合の一員であった。利益が出なければ、この業界はすぐに崩壊してしまう。

 セリーナ・フレイテスのような若い女性たちは、この企業連合による強欲の被害者だ。その結果、ハイパーセクシュアルな文化にいっそう拍車がかかり、彼女らと同じ女性や少女たちは性的客体としかみなされなくなる。VISAの口先だけの言い逃れに惑わされないでほしい。関与は共謀であり、それによってより多くの悲惨な事態が促進され、推進されているのだ。

出典:https://thecritic.co.uk/Porn-on-trial/

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投稿者: appjp

ポルノ・買春問題研究会(APP研)の国際情報サイトの作成と更新を担当しています。

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