【解説】日本では最近、日本で初の女性首相となった高市早苗が、国会の質疑で、買春者の処罰に向けた売春防止法の改正に前向きな姿勢を見せたことが話題になったが、同じような動きはドイツでも起こりつつある。
ドイツでは2002年に、社会民主党と緑の党の左翼連立政権の下で、売買春を完全合法化し、普通の職業の一種として扱い、売春女性を公的に登録させて保護することを定めた売買春法が施行された。これを推進した左派・緑派の人々は、それによって売春に対するスティグマが取り除かれ、さらには売買春が地下にもぐることがなくなるので、売春婦の人権もよりよく保護できるようになり、医療保険や年金などの恩恵も受けられるようになると考えたのだ。
だが実際にはそうはならなかった。ドイツで売買春は隆盛をきわめ、ドイツの男たちは女性の性を買うことを当然とみなし、ヨーロッパやアジアから人身売買された外国人女性が大量にドイツに集まり、奴隷的状況で働かされるようになった。実際に登録する売春者はごくわずかにとどまり(10%から15%程度)、地下に潜っている売買春もなくなるどころか増大した。セックスワーク論に基づく壮大な社会実験は失敗に終わったのである。
そこで、かつては合法化を推進した社会民主党の有力議員の中から、北欧モデル法(売春店経営と買春を禁止・処罰し、被買春女性を支援の対象とする)の導入を主張する人々が出るようになった(緑の党は依然としてセックスワーク派)。そして保守派のキリスト教民主同盟は以前から北欧モデル法に好意的であった。社会民主党とキリスト教民主同盟の連立協議において、北欧モデル法の導入に向けた専門家パネルの設置が合意された。
今年の11月初め、連邦議会議長を務めるキリスト教民主同盟の副党首ユリア・クレックナーは、ベルリンで開催されたヒロイン賞の式典で明確に売買春合法化の誤りを指摘し、北欧モデル法の導入を訴えた。このことを伝える記事を以下に翻訳した。「ヨーロッパの売春宿」との汚名をこうむっていたドイツも変わりつつある。
クリス・ガットリンゲル
『ブリュッセル・シグナル』2025年11月5日
「ドイツはヨーロッパの売春宿だ」と、52歳の保守派政治家ユリア・クレックナーは本日ベルリンで開催された授賞式で述べた。「この国では、売買春と金銭によるセックスを最終的に非合法化すべきだと確信している」と付け加えた。
彼女は、フェミニストのアリス・シュヴァルツァー財団が主催する、非常に勇気ある女性たちを称える「ヒロイン・アワード」の年次授賞式でスピーチを行なった。2025年の受賞者は、サビーネ・コンスタベルとカトリン・シャウアー・ケルピンの2人である。彼女たちはストリートワーカーとして、売春者たちがその仕事を辞めるのを支援し、強制売春や未成年者の性的搾取の防止に取り組んでいる。
クレックナーは、売買春は他の仕事と同じだと言うのは「ばかばかしい」として、こう述べた。「女性の権利について語る一方で、売春は他のどの仕事とも同じだと言うのは、ばかばかしいだけでなく、女性に対する軽蔑でもある。何といっても、この職業に学校での実習などないのだから」。
クレックナーによれば、ドイツの法律は売春者を十分に保護していない。それどころか、売買春法も売春者保護法も、女性の権利を効果的に強化していない。暴力的な行為、男性支配、意に反する売春は依然として広く見受けられる。
2018年から2021年までアンゲラ・メルケル前首相の下で農業大臣を務めたクレックナーは、ノルウェーやスウェーデンで普及している北欧モデルをドイツにも導入するよう要求した。
北欧モデルは、性的サービスに対する対価の支払いを犯罪とするが、そのようなサービスの提供自体は犯罪としないため、司法制度は買春客を追及することはできるが、売る側を追及することはできない。
ドイツは以前、2002年に左翼政権の下で独自の売買春法を導入した。これは過度にリベラルであると批判されている。売春者は当局に登録する必要があり、売春店は営業許可が必要だが、売買春は一般的に合法である。
2025年初めの連立交渉において、キリスト教民主同盟のジュニアパートナーである社会民主党は、北欧モデルの導入を繰り返し要求した。最終的な連立協定では、法改正に向けた提言を行なう専門家パネルを設置することで合意した。
連邦統計局によれば、2024年時点でドイツには登録した売春者が3万2000人〔売買春の中にいる人の数は25万人から40万人と言われている〕、営業許可を持つ売春店が2250軒存在した。これは売買春の数が2023年比で5%以上増加したことを意味する。
「ドイツの連邦議会議長が北欧モデル法の導入を要求」への1件のフィードバック