「自発的に売春をする女性を一人も見たことがない」──ドイツの元ピンプへのインタビュー

【解説】以下は、ドイツをはじめ売買春合法国にはびこる国際人身売買組織ヘルズ・エンジェルスの元メンバーで、その後、組織を抜け出して売買春の犯罪性を訴えるようになった人物カッスラ・ザルガランへのインタビューです。彼が語る売買春の実態は、それが「自発的なセックスワーク」とは程遠く、暴力によって支配される人身売買に他ならないことを示しています。日本でも学者や研究者の中でセックスワーク論を平然と唱える人物は男女問わず多いですが、彼らはアカデミック・ピンプであり、学者・研究者の肩書を持った女衒に他なりません。彼らは特定の女性を売買春に追いやっているわけではありませんが、その無責任な言動によって売買春全体への敷居を低め、女性全般に被害をもたらしているのです。

ベッティナ・ウェーバー
2026年8月10日

 カッスラ・ザルガランは「セックスワーク」という用語を否定する。彼によれば、「社会はこうした学術的な用語を取り入れ、その独特な響きを気に入っている」という。

 ヘルズ・エンジェルズは、自分たちのために売買春を行なう女性たちを「家畜」と呼んでいたと、カッスラ・ザルガランは説明する。現在40歳のこの元オートバイギャングのメンバーは、性売買を深刻な問題とみなしており、それは人身売買、暴力、ミソジニーと不可分につながっていると考えている。彼は、売買春の合法化によって当局の手が縛られ、犯罪組織が野放しになって繁栄するようになったと信じている。

 カッスラ・ザルガランは、ドイツの高級雑誌『シュピーゲル』がベストセラーと評した著書『Der Perser(ペルシャ人)』で自身の物語を語っている。イラン人の父とチリ人の母の間に生まれ、ハンブルクで育った彼は、高校時代に反抗期を迎えた。学校を退学処分になった後、ピンプとなり、やがてヘルズ・エンジェルズのベルリン支部に加入した。

 4年間、そのギャングこそが彼のすべてだった。やがて疑念が忍び寄ってきた。しかし、カッスラ・ザルガランがヘルズ・エンジェルズを離れる前に、2014年、ベルリンの賭け屋で若い男性が撃ち殺される現場に居合わせた。逮捕された彼は、ヘルズ・エンジェルズの間で「大罪」とみなされる行為に及んだ。すなわち、当局に協力したのだ。

 米国とは異なり、ドイツでは重要証人は不処罰の特権を享受できず、せいぜい減刑を期待できる程度だ。この殺人事件への関与により、カッスラ・ザルガランは12年の懲役刑を言い渡された。これは減刑された刑期であったが、保安上の理由から独房で服役せざるをえなかった。2020年初頭に早期釈放され、彼は自由を取り戻したが、同時に有罪判決を受けた元共犯者たちは、ほぼ全員が終身刑で収監されたままである。

 ビデオインタビューの中で、カッスラ・ザルガランは自身の居場所を明かさなかった。彼は証人保護プログラムに参加しており、別の名前で家族と共に秘密の場所で暮らしている。ザルガランは、売買春や組織犯罪に関する啓発活動を行なっている。また、2つのポッドキャストも配信している。彼の新著、『街は決して忘れない(Die Strasse vergisst nicht)』は、11月に出版される予定だ。

インタビュアー:ザルガランさん、あなたはピンプとして犯罪の道を歩み始めました。なぜですか?

ザルガラン:俺はハンブルクで育った。この街は広大な赤線地帯で悪名高い。しかし、多くの人が信じているように、それはレーパーバーン〔ハンブルクのザンクトパウリ地区にある世界的に有名な歓楽街〕に限ったことではない。街全体とその周辺地域が、その世界に深く染まっているんだ。だから、幼い頃から犯罪に引き込まれていた俺のような少年が、この世界と関わるようになるのは時間の問題だった。犯罪者であれば、常に赤線地帯と関わることになる。この2つは切っても切れない関係にあるからだ。そして、この状況は何十年もの間、何の規制もなく進行し続けてきた。

もっと早く介入すべきだったと思いますか?

できなかった。なぜなら、それは合法的な活動だからだ。ドイツでは、スイスと同様に売買春は合法だ。だから、国家は介入する必要性を感じなかったんだ。この「疑似リベラリズム」のおかげで、犯罪組織は完全に免責された状態で繁栄することができたんだ。

「疑似リベラリズム」というのは?

性産業は、過去も現在も、そして今後も、暴力、搾取、性的人身売買に特徴づけられた犯罪的で不透明な世界であり続けるだろう――人間の尊厳が踏みにじられ、女性が侮蔑される世界だ。この商売は、人間の最も卑しい本能である「性欲」を満たすことを目的としている。国家とその捜査機関は、そこで何が起きているかを完全に把握している。しかし人々は、あたかもそれをすべて正当化するかのように、「世界最古の職業」という決まり文句を繰り返すことを好む。まさにこのため、多くの政治家や実業家は、売春店に通ったりエスコートサービスを利用したりすることに何の問題も感じていない。そして、現実が醜悪で本当に暴力的なものになったとき、彼らは目を背けることを選ぶのだ。

「醜悪で本当に暴力的に」とは、もっと具体的に説明してもらえますか?

女性は売買される商品となる。ピンプは、性的目的で男性に彼女を売るだけでなく、他のピンプにも売り渡す。この世界では、それを「差額の支払い」と呼ぶ。もし誰かが、「あの女」――この業界で売買春婦を指す一般的な呼び名――が厄介だと感じれば、例えば1万ユーロで買い手を探してやるのだ。この取引はまさに家畜市場とまったく同じ仕組みで機能しており、人間の尊厳、とりわけ女性に対する尊厳を完全に無視している。売春婦はその後、仕事を通じてこの1万ユーロを返済し始めなければならない。

あなたはどのようなピンプだったんですか?

俺は非常に口が達者で、人を巧みに操るのが得意だった。だが、暴力を振るったことは一度もない。正直に言えば、刑務所に入りたくなかったからだ。

あなたのもとで売買春に追いやられた女性たちはどのような人たちだったのですか?

ドイツで育った19歳から25歳の女性たち、つまり移民の背景を持たず、ドイツ語を流暢に話す女性たちだ。

彼女たちは「ラバーボーイ」の手口によって売買春に追い込まれたのですか?

俺はその表現は使わない。あまりにも無害すぎるからだ。それに、この現象も新しいものではない。この世界では、女性を操って最終的に売買春に追い込む行為に対して、昔から「プッシング」という特定の用語がある。これは売買春における力の配分がどうなっているかを如実に示している。だから、私の見解では、この職業に自由意志など存在しない――少なくとも、売春店や街頭客引きといった伝統的な売買春について語るかぎりは。

なぜそう言えるのですか?

ほとんどの女性は売買春に追い込まれ、もう「働けなくなる」――つまり、金を稼げなくなるまで――ピンプの下で働かされる。中には抜け出して独立して働く者もいるが、売買春に足を踏み入れたことが本人の意思に反していたという事実は変わらない。そしてほとんどの場合、再びピンプの支配下に戻るのは時間の問題だ。

自ら売春を行なうことを選んだ女性たちはどうなのですか?

一見すると自由な選択のように見えるが、そうではない。彼女たちがそうするのは、経済的あるいはその他の苦境に立たされているからだ。間接的にこの選択肢を選ばされているんだ。

多くの人は金のためだけに仕事をしているのだから、売買春もまた自由な選択である可能性は十分にある、と主張する者もいるだろう。これが左派フェミニズムが主張する立場だと知っているが、俺には理解できない。俺はこの世界で十分な時間を過ごしてきたが、自発的に売春をする女性を一人も見たことがない。この世界は男たちが支配しており、女は商品にすぎない。これらのフェミニストたちは、10代の少女がある朝目を覚まして「売春をしたい」などと思うと本気で考えているのだろうか? 何らかのトラウマを抱えていない女性で、毎日20人もの男のペニスを口に含まなきゃという欲望を抱く者などいない。俺はあえて露骨に表現している。売買春で何が起きているかを真に理解するためには、物事をありのままに言う必要があるからだ。だから俺はけっしてそれを「セックスワーク」とは呼ばない。

なぜですか?

この用語は現実を軽視し、覆い隠してしまうからだ。それは「仕事」とは程遠いものを「仕事」とレッテル貼りしているにすぎない。実際には、多くの場合、薬物やアルコールの助けを借りて、女性たちが精一杯耐え忍んでいる状況に他ならない。それはサービスでもない。それは国家が容認した人身売買であり、身体の売り買いなのだ。社会はこうした学術的な用語を取り入れ、すべてがきれいに見えることに満足している。しかし、たとえ女性が店舗を経営していたとしても、性産業が他のビジネスと同じようなものになることはけっしてない。結局のところ、その仕組みを動かしているのは男であり、女性は部屋の中で彼らと二人きりになるのだ。そこで何が起きようとも、それが犯罪である必要さえない。その行為自体が、女性にとってしばしば非常に不愉快なものだからだ。彼女は常に自分を無理やり奮い立たせなければならない。それは精神的拷問だ。

売買春の合法化は容認できないということですか?

そうだ。なぜなら、国家が「女を買うこと」を正当だと主張すれば、男はまるでレンタカーを借りるような、まったく無害なサービスを購入していると信じ込んでしまうからだ。その場合、レンタル期間中は男性が最終決定権を持つことになる。多くの男性はこう考える。「50ユーロか100ユーロ払ったのだから、この女性を自分の思うままに扱う権利がある」と。

しかし、何が起こるかについては概ね合意が成立しているのでは

もちろん、当初は双方が行為の内容について合意している。だが、男が女性をどう扱うかは、完全にそいつしだいだ。そして多くの場合、そいつは残忍だったり屈辱的な行為に及ぶ――ペニスを彼女の喉の奥まで押し込んだり、髪を引っ張ったりする。多くの男たちは「彼女はただの買春相手だ」と考え、それに応じて振る舞う。下品な表現で申し訳ないが、これが現実だ。もちろん、俺がこう言うことをまったく快く思わない人もいる。

誰にとって快く思われないんですか?

俺を最も激しく批判する人たちは、この世界や犯罪の闇社会についてまったく知らない。間違いなく、俺の言葉が彼らの世界観に合わないからだ。もう一方は、売買春ピンプや売春店の経営者たちだ。彼らは、俺が彼らのビジネスの実態を暴くことに、当然ながらまったく利益を持っていない。それどころか、売買春において女性が自由に選択できるという神話が、今後も長く続くことを喜んでいるのだ。

スウェーデン、フランス、カナダですでに施行されているように、客を処罰するが売春婦は処罰しない、性的行為の購入禁止に賛成ですか?

そうだ。北欧モデルが優れた解決策であるのは、まさに女性を中心に据え、男性をその実態通りに、つまり加害者とみなすからだ。これらすべてを可能にしているのは男たちであり、需要を煽っているのも男だ。そして、売買春が組織犯罪とどれほど密接に結びついているかを忘れてはならない。組織犯罪は、ドイツ、オーストリア、そしてスイスにおいても、完全に合法的に独占体制を確立している。

具体的に言うと?

誰がこの活動に従事する権利を持ち、誰がそこから利得者になれるかを決めるのは、組織犯罪、つまりアルバニア・マフィアだ。合法化された売買春は組織犯罪への門戸を開き、組織犯罪はそれを本格的な経済部門へと変貌させた。しかし、そう簡単に売春店を開くことはできない。

なぜできないのですか?

これは他のビジネスとは異なるため、実際には「合法」とは呼べない。なぜなら、開業初日から誰かが近づいてきて、「おい、ここで何をしている? どこの組織に属している? この商売をする権利があるかどうかは俺たちが決める。明日までに店を閉めるか、ここにいる女たちを全員追い出して、俺たちの女を受け入れろ。さもないと……」と言ってくるからだ。

その他には?

脅迫してくる。あるいは店の前に強烈な異臭を放つ液体を撒き散らす。あるいは殴る。最悪の場合、人、車、店、店主の自宅に向けて発砲することさえある。そのメッセージは明確だ。「ここでの主導権は俺たちが握っている」と。売買春を合法化したことで、国家は女性が犠牲者となるべきだと認めただけではない。組織犯罪が合法的な経済分野に根を下ろし、今やその分野を支配することを許してしまったんだ。

出典:https://www.tdg.ch/prostitution-un-ex-proxenete-des-hells-angels-temoigne-448302808562

投稿者: appjp

ポルノ・買春問題研究会(APP研)の国際情報サイトの作成と更新を担当しています。

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