MeToo団体が買春とピンプ行為の合法化を支持する報告書を発表

【解題】以下の記事は2020年10月8日付『ニューヨーク・ポスト』に掲載されたもので、サバイバーズ・アジェンダというMeTooやTime’s Upのような著名なMeToo団体を含む連合組織が、9月末に、性暴力サバイバーに関する包括的な政策提言を含む報告書をリリースしましたが、その中では驚くべきことに、売買春の完全非犯罪化が含まれていました。このことに対して多くの性売買サバイバーが怒りの声を上げています。またこうした動きに対して世界中から抗議の声を寄せるための署名活動も始まっています。

ガブリエル・フォンルージュ

『ニューヨーク・ポスト』2020年10月8日

 売春を辞める女性を支援する「Living in Freedom Together」のCEOであるニッキー・ベル(39)は、ポスト紙に「性産業における暴力は例外ではなく標準です」と語った。

 「毎日サバイバーを支援し、サバイバーのための離脱プログラムを運営している者として、そして売買春が引き起こした被害や暴力を目の当たりにし、それを専門的に目撃し、個人的に経験してきた者として、またしても私たちの声が無視されたと感じています」と、性売買サバイバーである彼女は続けた。

 21の組織からなる連合体は「サバイバーズ・アジェンダ」というグループを結成し、9月末に性暴力サバイバーの公式の「集団的」見解を表明する報告書を発表した。この文書は、性暴力を受けた人々の声を用いて「政策の変化を促進し、情報を提供する」ことを目的としており、さまざまな関係者との調査や対話をもとに作成されたとしている。

 「私たちを前進させる政策」という小見出しのある部分で、サバイバーズ・アジェンダは「セックスワーカーを虐待や搾取から守り、安全ではない秘密の場所で働かされることによる暴力への脆弱性を減らすために、成人による自発的で合意の上での性的サービスの商業的取引を非犯罪化すること」と述べている。ただし、「まぎれもなく人権侵害である児童買春、性的人身売買、その他の人身売買に関わるいかなる行為もそこには含まれない」としている。

 性暴力の被害者団体によるこのような驚くべき動きは、性産業で働いていた人々や性的人身売買の経験者にとっては、深いダメージを与える裏切りのように感じられた。

 「いったい彼らは誰に話しているのか」と、「マイライフ・マイチョイス」の共同代表であるオードリー・モリッシー(57)は憤る。彼女は16歳のときに人身売買され、30歳で売買春から脱け出した。「売買春から脱け出したばかりの人たちに話してみてほしい」、売買春から脱け出したばかりの成人サバイバーを支援しているモリッシーは続けた――「『売買春が合法がされれば、被害に遭わずにすむ』なんて言う人は一人もいません。売買春が合法化されている場所では、間違いなくわかっていることは、依然として暴力が存在するということ。暴力はなくなっていません」。

 性と労働の両方の人身売買のサバイバーであるクリスティアン・エドアルド(29)は、サバイバーズ・アジェンダによって「黙らされ、見下されている」と感じていると述べた。「性売買サバイバーのほとんどは、完全な非犯罪化など支持していません。なぜなら、私たちは地獄の中にいたし、私たちのコミュニティが地獄の中にとどまることを欲していないからです」。サバイバーズ・アジェンダのアンケート調査に回答したメキシコ先住民の出身であるエドアルドさんはポスト紙にそう語った。

 「彼らはこの声明を通じて、『われわれは、すべてのサバイバーが完全非犯罪化を支持していると想定している』と言っているのですが、それは真実ではありません」。

 ネバダ州の合法売春店で働き、現在は反人身売買グループ「Valiant Hearts」を運営している性売買サバイバーであるレベッカ・チャールストン(39)は、報告書の発表に先立ち、サバイバーズ・アジェンダとの対話の場に出席したが、批判的な声は無視されたと言う。

 「非常に近視眼的です。彼らは一部のストーリーだけに耳を傾け、合法化ないし全面的非犯罪化が性売買をより安全でより改善されたものにすると誤って信じるようになったようです。しかし、それはまったく真実ではありません」とチャールストンさんは述べ、ネバダ州には合法的な売春店があるにもかかわらず、違法な性売買の発生率が高いことを指摘した。

 チャールストンさんは、MeTooがサバイバーズ・アジェンダに与していることに失望したと述べ、性的暴力とセクシュアルハラスメントは売買春の本質的な部分であると述べた。

 「MeTooは大きな1歩前進だったと思いますが、彼女たちがサバイバーズ・アジェンダに参加し、このような政策的立場を支持したことは、20歩後退したようなものです」とチャールストンは言う。

 「私たちは大きく前進し声を聞いてもらっていると思っていましたが、今では公然と商品になって男に売買される権利を求めているというようなありさまで、まったく理解できません」。

 サバイバーズ・アジェンダの中心人物としては、Me Too運動を創設したタラナ・バーク(アジェンダの共同代表の一人)や、MeTooの現在のCEOであるダニ・エアーズ(アジェンダのコアチームの一人で同団体の共同創設者の一人)がいる。他の参加団体としては、National Women’s Law Center、YWCA、Center for American Progressなどがある。売買春の合法化以外にも、サバイバーズ・アジェンダの報告書には、性暴力サバイバーへの資金提供の拡大、家族への支援、医療休業法の拡大、国民皆保険など、他の多くの問題への支持が書かれている。

 非犯罪化は、人種的公正と女性の権利のための闘いにおいて中心問題となっている。バーモント州やニューヨーク州では、売買春を合法化する法案を提出しており、支持者たちが他のどの仕事とも同じと呼んでいる仕事をしても逮捕されないよう法改正を求めている。支持者たちは売買春を合法化すれば、性的人身売買が減り、弱い立場の人をより安全に保てると言う。

 しかし、完全非犯罪化について見逃されているのは、そんなことをすればピンプ行為〔女性に売春をさせて金を儲ける行為〕や買春、売春店の経営も合法化することになるということだ。これらの合法行為にまぎれて人身売買事件を摘発するのがより困難になるだろうし、人々を、とりわけ有色系の人々をより高いリスクにさらすだろうと、専門家と活動家は言う。

 「完全な非犯罪化がなされれば、需要が増えることになります。需要が増えれば、それを満たす必要が生じるということぐらい、どうして理解できないのか」とモリッシーは言う。「需給のギャップを埋めるのは誰か? それは選択権を持っていない私たちのようなブラックとブラウンの子供たちと女性たちです」と彼女は続ける。ブラックとブラウンの女たちは、白人女性と比較したときに売買春と性的人身売買によって不釣り合いに大きな影響を被っているとつけ加えた。

 17歳で人身売買され、2014年になってようやく売買春から脱け出したベルは、「首を絞められたり、殴られたり、アナルセックスさせられたりする」ような仕事は他に存在しないと言う。「それは他の仕事と同じだと人々が言うのを聞くと、だったら実際にそこに行って、1日中、首を絞められたり、レイプされたり、アナルレイプされたり、顔射されてから、出直してきてと言いたくなる」とベルはあきれ顔で言う。

 「これが現実であり、他の仕事と同じではない。いかなる保護もないし、何の付加給付もない。誰かピンプのところに行って有給休暇を申請したらどうなるのか、私に教えてくれません?」。

 ベルは、現在の非犯罪化議論の中心にあるのは、性売買に従事する有色人種のトランスピープルのことだと言う。これらの人々がいかに不釣り合いに多く逮捕されているか、また、いかにその多くが、売春が自分と家族を養い、お金を稼ぐための唯一の方法だと言っているか、ということだと。

 しかし、性産業で働く有色人種のトランス女性、レイリーン・ポランコは、売春容疑で500ドルの保釈金を払えず、昨年6月にライカーズ島で死亡した。彼女のストーリーは、非犯罪化と刑事司法改革のための闘いの中心部分となっているが、ベルは、この運動を支持する議員や運動家たちは、トランス女性を本質的に有害な仕事に追いやっていると述べている。

 「私たちがすべきなのは、職場で黒人トランス女性が差別されずに仕事ができるよう闘うことであり、より良い住宅や職業訓練のために闘うことだ」とベルは言う――「彼女たちを売春に追いやるようなことをするべきではない」。

 売春の完全非犯罪化に対抗するイデオロギーは、「北欧モデル」ないし「平等モデル」と呼ばれているもので、売春の中の人々を非犯罪化する一方で、ピンプや買春者に責任を負わせる。

 「買春されている個々人が処罰の対象になることを望んでいる人はいません。その点では私たちはみな同意している」とベルは言う。

 「ピンプがマネージャーと呼ばれず、人身売買業者に責任を問えるような選択肢が必要です」とモリッシーはつけ加えた。

 ニューヨーク州に平等モデルをもたらす法案が、トレメイン・ライト下院議員とリズ・クルーガー上院議員によってニューヨーク州議会に提出される予定だ。

 数百人のサバイバーは、完全非犯罪化ではなく平等モデルを検討するように求める手紙をサバイバーズ・アジェンダに送ったが、この要求は黙殺された。反人身売買や女性権利団体を中心とする180の加盟団体を擁する「World Without Exploitation」は、サバイバーズ・アジェンダに対して平等モデルを検討するように求めたが、無駄だった。

 サバイバーズ・アジェンダは、サバイバーの「集合的な」観点をとっていると主張しているが、「アジェンダの作成に携わったすべての組織が、ここに示されている政策のすべてに同意しているわけではない」と指摘している。「しかし、私たちは、私たちの求める変化を達成するためには、包括的なサバイバー中心のビジョンが必要であると信じているという点で一致している」とアジェンダは続けている。

 Time’s Upはその声明の中で本紙に対して、「セックスワークの完全非犯罪化という微妙な問題について公式な立場を取っていない」と述べているが、アジェンダから排除された声についてはコメントしていない。

 「Time’s Upは、女性が働く場所や仕事の種類に関わらず、仕事は安全で公平であるべきだと考えている」と声明にはある。「私たちは、女性が強制、搾取、暴力から自由に仕事を選択できるようにする法的・社会的支援の提供を支持する。…Time’s Upは、すべての女性が安全で公正で尊厳のある仕事を選択できるようにするために活動を続ける」。

 MeTooとサバイバーズ・アジェンダは、コメントを何度も求めたが、返事を寄こさなかった。

出典:https://nypost.com/2020/10/08/orgs-like-me-too-support-legalizing-prostitution-and-pimping/

投稿者: appjp

ポルノ・買春問題研究会(APP研)の国際情報サイトの作成と更新を担当しています。

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