なぜ買春者を処罰するべきなのか?――アイルランドでの経験から

【解題】すでに9月11日にこのサイトで、スコットランドにおいて、与党であるスコットランド国民党から北欧モデル型立法案の制定に向けてコンサルテーション(立法化に向けての意見公募)が開始されたことを報告しましたが、この動きを支持して、アイルランドで6年間、売買春に従事してアイルランドにおける同様の立法の制定に尽力したミア・デ・ホワイトさんがスコットランドの高級紙『スコッツマン』に手記を寄せました。以下はその全訳です。

ミア・デ・ホワイト

『スコッツマン』2020年9月28日

 私は、売買春の需要にどう取り組むかについてのスコットランド政府のコンサルテーション・プロセス〔立法化に向けた意見公募の過程〕を歓迎する。私はアイルランドで6年間売春に従事し、その生きた経験から、法律が買春需要に取り組まなければならないと強く感じている。

 私が売買春から脱出した後、アイルランドで北欧モデル法や買春者処罰法と呼ばれるものを採用するようキャンペーンを行なった。私は、女性の身体を市場から正式に取り除いて欲しかったのだ。

 私が経験したことや目撃したことのうち正当化できるものは何もなかったので、私はアイルランドでこの法律のために運動をした。売買春は、ほとんどの人の想像している通りのもの、すなわち暴力的で危険なものだ。私がそれに携わっていた6年間で、集団レイプ1回と、同じ夜に2回レイプされたことを含む3回のレイプに耐え、それにプラスして、数え切れないほどの屈辱と身体的暴行を受けた。このようなレベルの暴力が許される「業界」は他にはない。

 多くの人と違って、幸運なことに私は売春から脱け出すことができた。私は残された女性たちと約束した。もし脱出したら、この苦しみを終わらせるためにできることは何でもする、と。私はその約束を守った。私や他の人たちが法改正を求めて闘った結果、2017年3月、アイルランド共和国はヨーロッパで6番目に買春者処罰法を制定した国となった。この法律が機能している主な理由は、買春者処罰が暗闇の中で何をしているのかを白日の下にさらすからだ。私は彼らのあいだで6年間過ごしたので、これらの男たちのことをよく知っている。起訴されるリスクは、ほとんどの男が引き受ける準備のできていないものだ。

 買春者を処罰すれば、売買春に従事する女性にとってより危険になるという議論があるが、そうではない。まず第1に、はっきり述べておきたいのは、売買春自体が本質的に暴力的であり、けっして安全なものにはできないということだ。売買春の中にいる女性としては、常に買い手との直接的関係を持つことになる。どうなるかは買い手しだいだ。アイルランド共和国の警察は、買春者処罰法が制定されて以来、被買春者に対する暴力の報告は増加しておらず、警察と女性の関係は改善されていると述べている。

 売買春を地下に追いやることになると言う人もいるだろうが、それは論理的な誤りである。その議論の推論の誤りは、売買春は地下に存在することができないという点にある。それは地下に潜れない唯一の悪徳(vice)である。なぜなら、麻薬や銃の取引は、犯罪者と犯罪者とが取引をしているため、地下でしか生き残れないが、売買春は、それ以外の点では犯罪に関与していないかもしれない買春者を必要とするという点で異なるからだ。そのため、売買春は常に直接接触する相手を必要とし、常に広告を出す場所を必要とする。生き残るためには買い手に見つけられなければならないからだ。これは数百万ポンド〔数億〕規模の犯罪事業だが、暴力団が弱い立場の女性や少女の搾取から稼ぎ出す金銭はそのことごとくが、セックスを買う一般の人々のポケットから出ていることを覚えておかなければならない。

 現在、ヨーロッパでは人身売買業者とピンプが勝利を収めている。女性や子供の肉体の売買は、歴史上かつてないほどの大規模なものになっている。ヨーロッパにおいて、現代奴隷制との闘いに大きなインパクトを与えているのは、その原因である「需要」を認識しそれと対決してきた国〔北欧モデル型立法を導入した国〕だけである。なぜなら、論理や推論(道徳的かどうかは別にして)が供給側にのみ向いているかぎり、最初から失敗する運命にあるからだ。

 私は今こそ、ニコラ・スタージョン首相〔スコットランド国民党出身の女性政治家で、2014年からスコットランド自治州首相〕と地域安全大臣アッシュ・デナム〔スコットランド国民党の女性政治家で、北欧モデル型立法の提案者〕――彼女はスコットランドにおける性的に搾取された人々のための力強く精力的に発言している――のリーダーシップのもとで、スコットランドにおいて、アイルランドと同じく買春者処罰法を制定する時期だと信じている。買春は人間の尊厳への冒涜であり、性売買は凶悪犯罪である。それは人間社会の中に居場所を持っていてはならない。

出典:https://www.scotsman.com/news/opinion/columnists/prostitution-why-sex-buyers-should-be-criminalised-mia-de-faoite-2985349

投稿者: appjp

ポルノ・買春問題研究会(APP研)の国際情報サイトの作成と更新を担当しています。

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