ローレン・ハーシュ「ニューヨーク市を性的人身売買の拠点にするのか?」

【解説】以下に紹介するのは、World Without Exploitation というアメリカ拠点の国際アボリショニスト団体の全国理事であるローレン・ハーシュさんの最近の記事です。アメリカでは民主党を中心に、売買春の非犯罪化を推し進める政策が各地で行なわれており、とりわけ、フロイドさん事件をきっかけに刑事司法改革の機運が高まっているのを利用して、リベラル派は売買春の非犯罪化を事実上、実行しています。とくにリベラル派が強いニューヨーク市では、買春者やピンプに対する法執行が停止されており、事実上、完全非犯罪化が実現され、アメリカ中から人身売買業者やピンプがニューヨーク市やその近隣地域に押し寄せています(以下の記事を参照。「ニューヨーク市長が警察改革を口実に売買春の非犯罪化を提案――CATWが抗議の声明)。ハーシュさんの記事はこうしたリベラル派の犯罪的政策を批判し、平等モデル(北欧モデル)の実現を訴えています。

ローレン・ハーシュ

『ニューヨーク・デイリー・ニュース』2021年7月28日

 ティナ・フルントにとって、それ〔ニューヨーク市での人身売買の増加〕は自分自身の問題だ。ワシントンにある人身売買防止団体「コートニーズ・ハウス(Courtney’s House)」の創設者兼CEOであるティナは、未成年の被害者に総合的なサービスを提供している。ティナは、人身売買の被害者たちがワシントンからビッグアップル〔ニューヨーク市の愛称〕にたくさん移送されてくるという最近の厄介な傾向に警鐘を鳴らしてきた。ティナの見るところでは、2021年のニューヨーク市の荒涼とした現実と一致している。ハンツポイント〔サウスブロンクスの売春街で食品加工工場も多い〕からイーストニューヨークまで、可処分所得のある男たちが、女性、少女、LGBTQ+の若者たちを、街の路上でセックスのために購入している。

 このように路上での搾取が急増している理由は単純だ。刑事司法改革の必要に迫られて、ニューヨーク市の指導者たちは売買春を事実上放置するアプローチに移行した。需要主導型である性産業、買春者、人身売買業者は、リスクが少なくて経済的機会が無限にある地域に引き寄せられる。買春を非犯罪化する可能性を示唆したアルヴィン・ブラッグがマンハッタンの次期検事になれば、こうした傾向はさらに加速するだろう。

 統計は雄弁だ。2018年、ブルックリンだけでも、パトロン行為(別名:セックスを買う行為)での逮捕者は279人に上ったが、今年(2021年)の6月18日の時点で、その逮捕者はわずか4人しか記録されていない。売春を斡旋したことによる逮捕は、36件からたったの2件に激減した。昨年は新型コロナウイルスの流行のせいにすることができたかもしれないが、2021年には他の多くの形態の取締りが復活している。ニューヨーカーたちは、この検挙数の劇的な低下がどのような結果になるのか、もはや推測する必要はない。

 イーストニューヨークのある地区を最近調査したところ、あらゆる職業の男性が買春の道へと殺到し、まったくリスクを負うことなく人身売買の被害者たちを買っていることが明らかになった。その間、ピンプ〔ポン引き、ヒモ〕は影に隠れて被害者の売買をおぜん立てし、糸を引き、処罰を受けることなく現金をかき集めている。警察が定期的に車を走らせ、ライトを点滅させて、問題がなくなるのを期待している間に、最も権利を奪われた人々が公然と搾取されているのだ。

 ピンプや買春の非犯罪化を推進しているディック・ゴットフリード〔本名はリチャード・ゴッドフリードで民主党選出〕下院議員のような州議会議員は、さぞかし喜んでいることだろう。しかし、法執行機関のこの新しいアプローチは、効果のない戦略であり、壊滅的な被害をもたらしている。ニューヨーク市警(NYPD)は、社会的に疎外されたコミュニティを警察の不当行為から守ろうとしているのだろうが、実際には、弱者を搾取し虐待する特権層の責任追及から手を引いているのである。このアプローチは間違った方向を向いているだけでなく、搾取されている人々や、空きビルのあるすべての近隣地域にとっても危険なものだ。

 間違いなく刑事司法改革は不可欠だ。私は、200以上の団体が加盟する人身売買防止連合の全国理事長として、性産業で売られている人々に加えられる警察の暴力を目の当たりにしてきた。しかし、私は同時に、元検事として、違法な産業では例外ではなく普通に行なわれている極端な残虐行為や長期にわたるトラウマをさんざん目撃してきた。

 搾取をなくすには、総合的なアプローチが必要だ。売買春で売られている人々を逮捕することはできない。それは被害者に二次被害を与えることになる。しかし、完全な非犯罪化――ピンプ、買春者、売春店の経営者に対してもその刑事罰をなくすこと――は、悪質な犯罪者にフリーパスを与えるだけであり、何ら解決策にはならない。

 それに対して、売買春がいかに人々の人生を破壊するかを間近で目にしてきた性売買サバイバーやその支援者たちは、部分的な非犯罪化を推進している。「平等モデル」とも呼ばれるこの良識的なアプローチ〔北欧モデル〕は、性産業で売られている人々に刑事罰の代わりに離脱サービスを提供する。それと同時に、搾取する側である人々――ピンプ、買春者、売春店の経営者たち――に、彼らが引き起こした惨事の責任を負わせるのだ。これによって、まさに人身売買の原因となっている商業的セックスへの需要を減らそうとする。この成功したアプローチこそ、ニューヨーク州のアルバニー市で「性売買サバイバーの正義と平等法案(Sex Trade Survivors Justice & Equality Act)」として提案されているものであり、また、スウェーデン、フランス、アイルランド、イスラエルなど、世界各地で実施されているものだ。

 法律を改正するまでは、法執行機関がバージョンアップしなければならない。わかりやすく言えば、ニューヨーク市警は、売買されている被害者を逮捕する時代にはけっして戻ってはならないが、それと同時に、効果的な買春抑止と買春者処罰の戦略を実行すべきである。そのためには、街頭での買春取り締まりだけでなく、インターネットを利用した調査も行ない、子どもたちがセックスのために誘われたり売られたりするのを防ぐ必要がある。

 しかし、それは警察だけではできない。地方検事が起訴するという保証がなければ、NYPDは仕事をしない。ピンプや買春者を見て見ぬふりをすることは、確実にニューヨーク市を、ドイツのように1日に120万人もの男たちがセックスのためにお金を払う巨大売春宿にしてしまうという事実を真剣に考えなければならない。人身売買対策に本気で取り組むのであれば、地方検事は言葉だけではなく、資源を投入して搾取者を逮捕しなければならない。

 女性、少女、LGBTQ+の若者たちを、制度改革のために巻き添えにすることはできない。これらの人々にはもっと良い環境が必要だ。ニューヨーク市はもっと良くなることができるし、そうなるに値する。

出典:https://www.nydailynews.com/opinion/ny-oped-nyc-sex-trafficking-hub-20210728-hbiw6tw3hjeurntdhitujh2wzi-story.html

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投稿者: appjp

ポルノ・買春問題研究会(APP研)の国際情報サイトの作成と更新を担当しています。

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