メリッサ・ファーリー「売買春、性売買、新型コロナパンデミック」

【解題】以下の論文は、Prostitution Research and Education を主催しているラディカル・フェミニストのメリッサ・ファーリーさんによる最新論文で、新型コロナウイルス下での売買春の問題について詳細に論じています。ファーリーさんは数十年来にわたってポルノグラフィと売買春の問題に取り組んでおり、商業的性搾取の廃絶に向けたアメリカの運動で重要な役割を演じてきました。今回、筆者であるファーリーさんの許可を受けたうえで、ここに全訳を掲載します。

メリッサ・ファーリー[1]

『ロゴス』2020年春

出典:Melissa Farley, Prostitution, the Sex Trade, and the COVID-19 Pandemic, Logos: a journal of modern society & culture, Spring 2020.

 新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックは、すでに地上で最も立場の弱い女性たちでもある性売買の中の女性たちに、即時かつ深刻な影響を与えている。隔離、社会的距離、政府による貧困層の無視、医療を含むあらゆる生活の場における体系的な人種差別、虐待から子供たちを守ることができなかったこと、そして買春者やピンプ(ポン引き)の捕食が原因で、コロナパンデミックは、すでに限界に達している女性たちの生存能力をいっそう脅かしている。パンデミック以前でさえ、買春者やピンプは、研究者によって研究されてきた他のどの女性集団よりも、性売買の中の女性たちに多くの性的暴力を与えていた(Hunter, 1994; Farley, 2017)。26 年前にオランダの研究者であるイネ・ファンヴェーゼンビークが指摘したように、貧困が大きければ大きいほど、性売買における暴力的搾取の可能性が高くなる(Vanwesenbeeck, 1994)。本稿では、性差別と人種差別の基盤の上に築かれた抑圧的な制度である売買春の暴力的搾取と貧困から生じる被害を増大させる新型コロナの影響について論じる。

 性売買の中の女性たちは、食料、避難所、医療の欠如など、多くの理由で被害を受けており、これらのすべてが新型コロナに感染するリスクを高めている。

 衣食住を得られるかどうか常に不安である状態がどのようなものなのかを理解することは、売買春の中の人々が負うリスクを理解する上で重要である。自分たちの命が危険にさらされていることを知っていながら、多くの女性がパンデミック中に売春をした。「貧困はコロナウイルスの前に私たちを殺すだろう」と、売買春の中のインドの女性は言っている(Dutt, 2020)。アメリカのある女性はこう述べている――「ウイルスに感染しても生きのびることができるかもしれないが、2ヶ月も食べないと生きのびられない。合理的な人に、ウイルスを取るか食べない方をとるかなどときくようなことは、誰も思いつきもしないだろう」(Gentile, 2020)。

 パンデミックは、パパ活売春、スマホを使ったデリヘル、ソープランド、路上売春、ウェブカム動画配信など、あらゆる形態の売買春において搾取と暴力が存在していることを赤裸々にしている(Moran & Farley, 2019; Farley, 2016)。売春を仕事として主流化しているサンフランシスコのあるグループは、「路上でセックスワークをしている人たちは、生きのびるためにセックスワークをやめることができないかもしれない」(Naftulin, 2020)と認めている。しかし、このコメントは、路上であれ、携帯を使ったデリヘルであれ、ソープランドであれ、ストリップクラブであれ、ウェブカムポルノであれ、性売買のすべての形態における重なり合う部分を曖昧にしている。そもそも女性たちは一つの場所にとどまるのではなく、物理的ないしオンライン上のある場所から別の場所へとたえず移動しているのである。性の買い手がどこにいるのか、ピンプが彼女たちをどこに送るのかに応じてだ(デリヘル店から、顧客向け電子機器コンベンション、スポーツイベント、軍事基地、ストリートへ、そしてそこからデリヘル店へと戻る)。

 売買春は、女性の体の上で繰り広げられる家父長的暴力の想像しうるあらゆる形態を凝縮したものである。それは、非人間化と経済的不平等、生殖能力の搾取とヘイトスピーチ、 性暴力と人種差別を組み合わせたものである。売買春では、これらすべてが女性に対して行なわれ、その一方で女性たちの言論や表現の自由の権利が奪われる。売買春は複合的で交差的な形で被害を受けることであり、最も極端な精神的トラウマのいくつかを生み出す。この点に、少なくとも法文上は違法行為として認識されているその他の多くの形態の暴力や差別(ドメスティック・バイオレンス、レイプ、人種差別)との違いがある。

   北欧モデルが実施されておらず、男性の女性への有償の性的アクセスが社会的に許しがたいものだとも法的に犯罪だともみなされていない国々では、売買春の中の女性にとってコロナウイルス・パンデミックは、男性からの暴力の被害者などあらゆる被差別グループを支援するすべての国家措置において、前述のすべての暴力が脇に追いやられることを意味している。そして、これは、売買春の中の女性が性売買の結果に苦しみ続けるだけでなく、特に立場の弱いグループとして新型コロナから彼女たちを保護する規定がないことを意味するものでもある。保護の欠如はさまざまな形をとるかもしれない。ピンプの支配下で売春させられているアパートから追い出されたり、法的地位を剥奪されたり、社会的給付へのアクセスを拒否されたり、等々である。これらすべてのシナリオにおいて、根底にある論理は、女性は自分自身の搾取の代理人であり、保護を受ける権利があるべきではないということである。それに対して、北欧モデルにもとづく国々では、女性は被害者グループとして保護を要求し受けることが認められている。この北欧モデル・アプローチでは、性売買の女性に支援を提供する NGO は、売買春の中の女性を見捨てるのではなく、支援するべきだとして国の責任を問うことができる。これは、ホームレスになるかそれとも買春者から新型コロナに感染させられるかの選択ではなくて、女性が売買春から離脱するための真の選択肢が提供されることを意味する。

        ――アンナ・ゾブニナ(ヨーロッパ移民女性ネットワーク)、2020年4月3日(Zobnina, 2020)

使い捨てられる人々

 ある人々は、他の人々よりも使い捨て可能だとみなされている。一部の人々は長い間、使い捨てであるかのように扱われてきた。例えば、白人の都市住民がペットボトルの水を飲んでいる一方で、水道が故意に毒で汚染されていたミシガン州のアフリカ系アメリカ人や、原子力発電所の風下に住んでいたために水や食べ物が故意に汚染されたワシントン州の先住民ヤカマ族、2017年のハリケーンの壊滅的な被害を受けた際に援助を受けられなかったプエルトリコ人などがそうである。 新型コロナパンデミックの間、アメリカの極右政治家とその仲間のメディア[2]は、許容ないし容認されている、ないしされるべき一部の人々の死、治療されるべきでない部の老人、「避けがたく」死んでいく一部の子供たちがいることを示唆していた。

 アフリカ、南アジア、ラテンアメリカとカリブ海地域の一部では、何十億人もの女性が不規則な仕事をしており、社会的セーフティネットがないギリギリのところで生活している(Tharoor, 2020)。これらの女性は、コロナウイルスの感染と売買春への参入の、どちらのリスクも高い。南アフリカの売買春のサバイバーは、「自分の命が危険にさらされているのが確実な仕事を進んで引き受けようとは思うものは誰もない」と説明している(Naik, 2020)。スコットランドやドイツの貧しい女性たちは、自宅で隔離するという選択肢を持っていない(McEwen, 2020, Nasr, 2020)。女性の中には、新型コロナへの曝露と家族の飢餓との間で「選択」を迫られる人もいる。新型コロナウイルスを避けるために推奨される実践の多くは彼女たちにとって不可能である。「頻繁に手を洗うですって?」とムンバイの女性は言う――「料理のための水を節約するために、入浴しないことさえあるというのに」[3](Tongia, 2020)性売買の中にいるあるタイ人女性は、パンデミックの間、観光客や買春者が不足していたため、自分自身と家族の食糧供給が困難になるのを恐れていた(AFP, 2020)。カメルーンの売春婦たちは、家族を養うために悪夢のような危険を冒して、コロナウイルスの症状を報告したヨーロッパ人男性を隔離するために使用されていたホテルに性の買い手を求めた。だが彼女たちのピンプどもは、女性たちが生きのびるために必死で稼いだ収入の大部分を奪い取るのだ(Ndi, 2020; Larnyoh, 2020)。

 性売買の中にいる一部の女性にとって、新型コロナは売買春の暴力よりも危険性のリストの下の方にある。フロリダで売春をしているある女性は、「『連続強姦魔や殺人魔』については常に心配しているが、ウイルスにさらされることについてはそれほど心配していない」と説明している(Avanier, 2020)。「この種のパニックはいつでもある」とある被買春女性は言った――「クライアント(買春者)はそれを権力のシフト〔買春者の側がより有利になること〕として理解している」。代替手段のない女性のために、「一部のクライアントはそれを利用しようとする。彼らは価格を買い叩いたり、スクリーニングなしですまそうとしたり、安全ではないやり方を押しつけたりする。生でのセックスや、知らない相手と会うこと、安全でない場所ですること、彼女たちのOKゾーンを超えた行為を押しつけることなど」。「ワーカーたちが本当にお金に困っていることを知っているからだ」(Steadman, 2020)。買春者たちは、女性への虐待を増幅させ、性買者たちはコロナウイルスのパンデミックを悪用しているのだ。

コロナパンデミックをめぐる買春者たち本音

 買春者自身が性売買について議論しているサイトを見れば、彼らがパンデミック中の女性たちを利用し搾取していることは明白である。オンラインフォーラムでの彼らの書き込みは、彼らがどのようにして性売買の中の女性たちの人間性を奪っているかをはっきりと示している。

  (1)ドイツの諸事例

 まずドイツの事例から見ていこう。ドイツの買春者フォーラムは、社会学者マヌエラ・ションによって2020年4月に分析されている[4]。

ドイツの合法的買春者、その1 「今日、付近を歩き回って、いつもの趣味を追求してきた。これを読んで激怒する人に言っておくけど、もちろん今の状況はわかってる。ICUのベッドや人工呼吸器がなくても、文句は言わない。いつかHIVにかかっても文句を言わないのと同じだ」。この男は、買春で女性を搾取するために自分の命を危険にさらすこともいとわない。だが、この男のリスク計算では、女性の側のリスクは考慮されていない。セックスを買う男たちの中には、コロナウイルス・パンデミック時の濃厚接触の危険性にむしろ性的興奮を覚える者さえいる(Boroff, 2020)。

ドイツの合法的買春者、その2:「心配なのは、来年まで売春店が再開しないんじゃないかということだ。……ストレスのたまる男が多いので、女性への性的暴行が増えるだろう。 いろんなことが変わるだろう。もしかしたら、新鮮な体がたくさん出てくるかもしれない」。 一部の男の買春合理化論は次のようなものだ。生きていくためにお金が必要だという理由で自分の手に入る女〔売買春の中の女性〕をもしレイプできなくなれば〔コロナのせいで買春できなくなれば〕、俺は外へ行って「いい女」をレイプするだろう、だから俺の欲しいものをくれないなら、俺はレイプ願望を爆発させるだろう、云々。もちろん、買春したからといってレイプが防げるわけではない。しかし、売買春の中にいる女性でさえ、この嘘を内面化している。シアトルのデルヘリ売春の中の女性は、コロナウイルス・パンデミックの時に、「ストレスがたまりすぎると、私たちは多くの人のはけ口になりかねない」と指摘している(D’Adamo, 2020)。

ドイツの合法買春者、その3:「今でもコンドームなしで娼婦と犯(や)ってるぜ。彼女は俺のケツ穴のキャビアを舐めとることもできる」。この男のミソジニーは明らかだ。

ドイツの合法買春者、その4:「コロナの時期にカソリック〔コンドームなしでやれる相手のこと〕とどうやって犯(や)るかって? わんわんスタイルでやるのさ。亀頭からはウイルスが侵入しないことを願ってな。聞くところでは、そいつは呼吸器系のウイルスで、口、目、鼻からのみ吸収されるらしい」。この男は自分の願望のとりこであり、相手の女性の健康にも、自分の家族の健康、地域社会の安全、自分自身の健康にも意を介さない。彼は危険性について自らを欺いている。

ドイツの合法的買春者、その:「アニータでさえ危機の時(つまり今)には大いに価値がある。彼女は外でしか会ってくれない。言っておかないといけないが、残念ながら、コンドームなしでは犯れない。でも、彼女はなかなか結構なオーラルサービスをコンドームなしでしてくれ、口の中かおっぱいに発射できる。どう言えばいいかな。『乞食は選ぶことができない』ってこと」。この男にとって、女性の価値は彼がどれだけ犯(や)れるのかにかかっている。彼は自分がして欲しいことを彼女にさせることができないので、自分を哀れに思っている。

ドイツの合法的買春者、その6:「現在、彼女らはみんな怯えている。ここブレーメンでは、普通、自分のところに女を呼ぶときには200ユーロ〔約2万5000円〕払わなければならない。でも俺は130ユーロしか払わなかった。娼婦は金が必要だから、安い金でも客を取れる方がましだからだ」。この男は内心こう考えたのか? 怯えてお腹を空かせた女とうまく交渉して お金を節約したんだ、と。実にけっこうだ!

ドイツの合法的買春者、その7:「(ドイツの合法的な売春店の閉鎖に対する)いい解決策を見つけたよ。自分の秘書を犯ればいいんだ。いつもそうしたいと思ってたけれど、コロナ危機のせいでついに実現できた。彼女にはとても満足している」。この男によれば、すべての女は娼婦なのだ。

ドイツの合法的な買春者、その8:「クラブや売春店はすぐには再開されないだろう……。俺たちはいつも北欧モデルを恐れていたが、今ではコロナモデルが導入されちまった。売春はゼロだ」。売買春に関する北欧モデルの法では、買春者やピンプは逮捕されるが、売春をしている女性は非犯罪化され、離脱サービスが提供される。この買春者は、新型コロナによって北欧モデル法以上にさえ買春することができなくなったことに不平を漏らしているわけだ。

  (2)アメリカの諸事例

アメリカの買春者フォーラムは、研究者のミーガン・ルンドストロームによって2020年4月に検討された[5]。

アメリカの買春者、その1:「これらのデブのクソばばあは、自分たちの古まんこの本当の価値がすぐにわかるだろうよ。……ゼロだよ!!! 人口の半分がそいつ〔女性器〕を持っていて、ほとんどの女が股を広げたり、30分のフェラをする方法を知っているんだからな。つい最近まで〔コロナ危機が起こるまで〕1時間でクソ高い300ドルに我慢してきたが、それともおさらばだ。……家賃の支払い期限が来たら教えてくれ。そうすれば、お前の思い込んでいる『相場』について話し合うことにしようぜ」。性的な利用を除けば、この男にとって女は無価値な存在だ。彼は彼女たちを貶めることを楽しんでいる。

アメリカの買春者、その2:「俺はいつものようにレストランに行くし、Uberを運転するし、もしかしたらスポーツイベントにも行くかもしれない。 以前と同じように、趣味〔買春〕も楽しむ。何も変わらない」。別の男。「安全のために合理的な要求には従うよ。 マスクをするということはオーラルセックスがないってことだから、そいつはちょっと厳しい。昔のエイズ危機の頃を思い返すと、女が2枚のコンドームを使用するよう求めたことがあった。1枚なら問題ないけど、2枚は多すぎる。その女には二度と電話しなかったね」。買春者は、健康危機の時にも女性に対する性的アクセスを求める。2人目の男は、性売買の中の女性が複数のコンドームを使用する理由を理解していない。かつて女性たちは言っていた。コンドームは自分の体と、それに対する男の暴力的な侵入との間の障壁なんだと。彼女にとって、障壁は多ければ多いほどいい。

アメリカの買春者、その:「こんな時に客と会っている売春婦は、潜在的に致命的な結果をもたらすリスクの高い行動に従事することを選択しているんだ。 その理由は重要ではない。結果は同じだ。依然としてそれは選択だ。……それに、この『貧しい娼婦は収入をすべて失って、絶望的な状態にある』というお決まりのセリフを聴かされるのは、ちょっとイラッとする。すぐにでも応募できる仕事はそこら中にあるんだからな」。これは典型的な被害者非難だ。この男は、致命的な結果をもたらす可能性があるときに女性が性売買の場にいることを理解している。にもかかわらず、彼女をそこに追いやっている貧困、ピンプの存在、その他の要因を故意に否定している。

アメリカの買春者その4:「そう簡単に俺の金をとられてたまるか。俺はGFE〔恋人のようなサービスのこと〕専門なんだ。舌が触れるキスができないなら、さっさと出ていくね」。 別の男はこう言っている。「女たちに目を覚まさせる時が来た。この10年間で、女の子との時間当たりの料金は2倍以上になった。残念なことに、ほとんどの女の子は恋人が男をどう扱うかを知らない」。さらに別の男。「1人の紳士が家族の危機について語ったらどうなるか? 2人の子供たちは奨学金を失い、医学部を続けるために財政的な支援を必要とし、別の家族が癌で入院しているとしたら、パパ活女子(sugar baby)との関係を再開したときに、以前のようにひと月3000ドルも払えるか? こういう困難な時期に彼女は彼に慰めと家族問題への解決策を提供しているのか、それとも、彼女は以前と変わらぬ振る舞いをして、服を買いあさり、豪華マンションでのそのビジネスだけを気にかけるのか?」。これらの男たちは、自分が金を出している女性たちが親密な関係の迫真の演技をし、「恋人体験」を味あわせてくれることを期待している。彼らは、そのような振る舞いによって生じる感情的ストレスや、あるいはパンデミック時に彼女が経験している経済的困窮を理解していない。GFE(恋人体験希望)の買春者たちは、彼女が彼をだまして「本当の関係」だと思わせることを要求するが、実際にはそれは「ごっこ関係」であり、しかも彼が構想し支配している関係にすぎない。彼女の側から見れば、この関係はまるまる、お金のためにそれが必要だという一点を除けば嘘である。

  (3)ニュージーランドの諸事例

 ニュージーランドの買春者フォーラムは、2020年4月にアリー・マリー・ダイアモンド[6]とアンジー・ヘンダーソン[7]によって調査されている。

ニュージーランドの買春者、その1:「今のところ、感染源はすべて突き止められると言ってもいい。特定の時間内に親密な関係にあった人を全員開示しなければならないとなったら、俺にとっては非常に厄介なことになる。他の多くのやつらだってそうだろ」。ニュージーランドでは自宅待機命令が出ていたことと、パンデミック中に買春者の接触先を追跡できたことから、一部の男たちは、警察によって自分たちの居場所を突き止められるのではないかと心配している。

ニュージーランドの買春者、その2:ニュージーランドのある買春者は、客の側の新型コロナ対策をリストアップしていた。「手を洗うこと、マスクを着用すること、現金を扇のようにテーブルの上に広げて置いて、数えやすいようにすること」。別のニュージーランド男性は、同じく売買春が合法であるオーストラリアでの習慣を引き合いに出した。「オーストラリアでは、風邪をひいていないことや咳をしていないことだけを条件に、いまだに予約を取っているSW(セックスワーカー)もいる」。新型コロナに対するあれこれの(実際には効果のない)「予防措置」については、あらゆる地域・国の買春者たちが言及している。

ニュージーランドの買春者、その3:「女の子は仕事に戻ってくる。客はストレスを解消する必要がある…。これは抑うつの蔓延を押しとどめるために必要不可欠なことだ。ストレスからくる心の傷…。心理的な問題を解決すれば、結婚を救うことになる」。彼が買おうとしている女性への健康リスクを無視する、この買春者のナルシスト的な関心は、よく見られるものだ。

ニュージーランドの買春者、その4:羊をレイプすることがパンデミックを乗り切るための手段になるとほのめかした買春者もいた。「男たちのために、ポルノやその他の方法で救済を得る方法をいくつか考えつくことができる(俺はこれを、隣のパドックを歩く羊を見ながら書いている)」。

ニュージーランドの買春者、その5:ウェブカメラで売春を宣伝していたある女性は、直接会ってセックスしたがる男たちからの電話の多さにうんざりして、ニュージーランドの新型コロナでの自宅隔離期間中に以下のようなやりとりを報告している(Conner, 2020)。

SB(買春者):今から、セックスのために会える?

女:そうね。すでにウイルスを持っている人とだけね。で、あなたはどうなの?

SB:ウイルスは持っていないけど、セックスはしたい。

女:両方ともなら割り引きしてあげるわよ。

SB:えっ、ウイルス持ってるの?

女: そういうあなたは現金持ってるの?

SB:ああ、持ってるとも。

女:完璧ね。だったら、ウイルスをあげられるわね。

SB:うげっ。

人種差別、売買春、コロナパンデミック

売買春は、性売買の中の有色人種の女性やかつて植民地化されていた女性たちに特別大きな被害をもたらす(Nelson, 1993; Carter & Giobbe, 1999; Butler, 2015)。人種差別は、これら多くの女性たちが売春に踏み込まざるをえない要因となっている。他の選択肢がないからだ。ピンプや買春男は有色の女性に対してとりわけ非道である。有色の女性は、標準以下の、あるいは文化的に的外れなサポートや扱いを受けていることが多いため、離脱や脱出の選択肢がより少ない。長年にわたりポルノ業者は、撮影された売買春の中で、人種差別をエロチックなものにし、奴隷制度を金儲けの道具にしてきた。売買春の中にいる女性たちがこうむるあらゆる被害は、彼女たちの人種やエスニシティと貧困のせいでいっそう増幅されている。

 米国では有色人種の女性たちはその人口比以上に売買春の中に入っており、新型コロナの犠牲者としてもその割合が過剰に多い(Lindsey, 2020)。環境的人種差別も彼女たちの犠牲を助長している(Cabrera, 2020)。新型コロナによる死亡者数が最も多いのは、歴史的に慢性的な健康問題に苦しみ、医療へのアクセスが少ない人種グループの間である(Durkin, 2020; Johnson & Buford, 2020; Horton, 2017)。2020年4月には、人口の26%しかアフリカ系アメリカ人がいないミルウォーキー郡における新型コロナ死亡者の約81%がアフリカ系アメリカ人であった。ラテン系アメリカ人は、ミルウォーキー郡のアフリカ系アメリカ人と同じように、ニューヨークでも新型コロナの罹患率と死亡率が高かった。黒人およびラテン系のニューヨーカーは、4月上旬に白人の2倍の割合でコロナウイルスで亡くなっていた(Mays & Newman, 2020)[8]。

 2020年4月、ニューメキシコ州の新型コロナの全症例の31%が先住民であったが、彼らは州の人口の10.6%にすぎない(Childress, 2020)。ズンニ族は再び自分たちの民族の絶滅への懸念を表明した(Agoyo, 2020; Chisolm, 2020)。ブラジルの先住民は呼吸器感染症に対して特に脆弱である(Fellet, 2020)。

 アジア人に対する人種差別主義は、コロナウイルス・パンデミックの間に増大し、政治家も買春者も同様に新型コロナに関して「中国人」を非難している。人種差別的行動のこの最近のアウトブレイクは、アジア人女性を従順でエキゾチック、あるいは最近移民してきたばかりの新参者として、つまりはより立場の弱い女性として(つまり買春者が求める性質をもった女性として)ステレオタイプ化する買春者たちの周知の人種差別的認識と合致している(Asian Women Coalition Ending Prostitution, 2020; Bindel, 2017)。念入りにつくられた人種差別ポルノを配信しているポルノハブは、新型コロナのパンデミック中に、反アジア人種差別ポルノを販売するためにただちに動いた。人種差別ポルノは人気商品である。2020年3月には、ポルノハブだけで少なくとも115本の人種差別的な新型コロナ・ポルノがアップロードされた。ポルノハブのコロナウイルス・ポルノは、「病人」で「外国人」であるアジア人に対するゼノフォビア(外国人嫌悪)と、アジア人女性を迎合的で異常性欲の持ち主だとするフェティシゼーションとを融合させている(Lopez, 2020)。

性産業はコロナウイルスを悪用する

 ピンプのマーケティングスキルは、コロナウイルス・パンデミックの期間中に明らかになった。アトランタのストリップクラブのピンプは、「女性のキャッシュフローを増やすのを助ける」善人として自分たちを宣伝した。彼らは、女性の動画をオンラインで転送し、20ドルでインスタグラムのラップダンスを販売した(BET, 2020)。一部のピンプは女性の「中央銀行」として奉仕することを申し出た。「中央銀行としての役割を果たすことで、マネーサプライを増加させ、ニューウエーブの出演者たちが危機を乗り切るのを助けることができる」とロンドンのポルノ業者は述べている(Shehadi & Partington, 2020)。売春のための合法的な場所(マッサージパーラー、ストリップクラブ、バー)が隔離のために閉鎖されたとき、ピンプは別の場所に移動することで現金の流れを維持した。ポートランドのストリップクラブが新型コロナのために閉鎖されたとき、そのクラブのピンプは、トップレスのフードデリバリーの仕事に女性を移した。ラスベガスのストリップクラブは、パンデミックの間、車に乗ったまま窓から見られるストリップショーを販売した(Campamour, 2020)。ポルノハブがコロナウイルスのパンデミック中に病院にマスクを配布したのは、ネバダ州のピンプ、デニス・ホフが感謝祭で七面鳥を配ったのと同じ手口だ(Kaye, 2020)。目的は人道主義者であるように見せることである。「俺はいいピンプで、女の子を助けようとする利他的な男だ。この七面鳥を見てごらん、これらの仮面を見てごらん! ただし女の子の目の奥をのぞき込むなよ!」。

 ピンプはメッセージの発信の仕方が柔軟で巧みだ。過去には、性産業のプロモーターたちは、楽しいパーティーの時間と「セックスワーク」からの神話的な高収入を吹聴していた。現在では、新型コロナのパンデミックに直面して、「セックスワークとピンプの組合」は、被買春者たちの経済的生存を強調するメッセージに焦点を移した。一部の性売買支持派の団体でさえ、売買春がいかに危険なものであるか、また、性産業の中の女性たちがいかに極度に弱い立場にあるかを認めている(Agence France-Presse, 2020, April 10)。「経済的な保障や何らかのセーフティネットのないセックスワーカーは、新型コロナによって最も大きな打撃を受けている」と、イギリスのセックスワーク組合は指摘している(Wilson, 2020)。緊急援助のための現金を求めるだけでなく、それと同時にセックスワーク推進派は、ピンプと買春の非犯罪化を推進する組合への支援も求めた(SWOPLA, 2020)[9]。このような欺瞞は、2020年4月にアルゼンチンでも見られる。アリカ・キーナムが報道しているところでは、セックスワーク・ロビイストは、被買春女性を対象とした緊急資金を受け取りながら、驚くなかれ、この基金はどこかに流用され、女性たちの手には渡らなかった[10]。売買春を貧しい女性のための「仕事」として宣伝する目的で緊急資金を流用することは新しい戦術ではなく、HIVの大流行期にも利用された(Farley, 2004)。この戦術は、性売買のピンプたちによってだけでなく、トランプによっても見事に適用されている。トランプは「労働者」への支援を約束しながら、彼らにそれを渡さず、彼の裕福な大企業スポンサーの懐に数百万ドルを注ぎ込んでいる。

セックスワーク派が提示するパンデミック対応策――対面からオンラインへ

 ポルノのピンプは、新型コロナのパンデミックを利用している。 ストリップクラブ、マッサージパーラー、ホテル/デリヘル売春のような屋内のセックスビジネスが(申し立てられているところでは)閉鎖されたため、オンライン売春が増加した[11]。オンライン売春には、個人のウェブサイト、またはChaturbate、StripChat、またはMindGeekのポルノハブのようなピンプや配信業者のサイトを介してアップロードされたポルノが含まれる。オンライン売春には、コンピュータやスマホを介した売買春のウェブカム動画や同時配信(リアルタイム・ストリーミング)が含まれる。あるサバイバーは、「消費者たちと直接接触していたので、ウェブカム動画配信は他のポルノ形態よりも悪かった」と説明している。「消費者はしばしば非常に残酷で、否定的なレビュー〔性産業評価サイトのレビュー〕を書き込むと脅してあれこれ要求し、そのため、希望通りのパフォーマンスをしなかった場合には給料に影響する」(Anonymous, 2018)。GFE〔疑似恋愛型〕売春と同様にウェブカム動画配信では、サバイバーは、セックスの買い手が求めるものは何でもプレイしなければならず、虐待的な男たちに気に入られるよう接しなければならないため、激しい精神的苦痛を味わう。「常におしゃべりしたり、自分らしく(そして)気持ちよさそうに振る舞おうとするが、ウェブカムに費やされる感情労働は非現実的なものだ」(Shehadi & Partington, 2020)。9ヵ国の売買春と人身売買に関する研究は、ポルノ制作によって引き起こされるトラウマ的ストレスについて女性が語っていることを裏づけている。性行為を実演した数百人の売春女性を、撮影される場合と撮影されない場合とで比較したところ、自分の売春行為からポルノを作らされた女性たちは、撮影されていない女性に比べてPTSDの発症率が有意に高いことがわかった(Farley, 2007)。

 多くのオンライン・ポルノサイトでは、ピンプや組織化された犯罪集団に強制されたり、奴隷にされたりしている女性の画像が販売されている。ポルノ・ピンプは、他のピンプと同じように、パンデミックの間に女性を搾取していた。「彼らはいい画像を買い、クリック数や広告収入を得るが、私たちには何も分配されない」とあるポルノ・サバイバーは言っている。人身売買業者はクレイグリスト(Craigslist)で「コロナウイルスでレイオフされた人に仕事を」と広告していた(Moseley, 2020)。別のピンプは、失業中の女性に対し自分のポルノサイトで「モデル」としての仕事を募集していた(Baah, 2020)。ルーマニアと米国のポルノ・ピンプは、パンデミックの間に新規モデルが大幅に増加したと公表している。ピンプたちは、ウェブカム売春を「モデルがコミュニケーションと共感に頼るライブ・インタラクティブな体験」として、あるいは「バーチャルなガールフレンド体験」として宣伝した(Barbera, 2020)。オンライン売春の配信業者であるポルノハブもまた、モデルを募集し、自分たちが制作したポルノを販売し、他のピンプと同様に利益の35%を搾取していた[12]。

 女性の実生活では、性売買のさまざまな触手は区別がつかない。コロンビアのメディアは、新型コロナパンデミックの解決策としてウェブカムサイトを積極的に宣伝し、ウェブカムでの売春を在宅で働ける人たちの「特権」として誇示した[13]。

Iniciativa Pro Equidad, 2020

 ボゴタの赤線地区に住むコロンビア人や人身売買されたベネズエラ人の女性たちは、過密状態の日給制の部屋で生活している。女性たちはウェブカムを試してみたが、ポルノサイトでの自分の動画の使用や転売をコントロールできないことに気づいた。彼女たちはインターネット・スキルや銀行口座へのアクセスがないため、騙されてお金をもらえないことが多い。多くの人は、生きていくための現金がどうしても必要で、裸で路上に出てセックスの購入者を勧誘している。また、ピンプに強要されて買春者の家やパーティーに行くと、暴力を振るわれ、時には死に至ることもある。ある女性は、「コロナウイルスは、家族にお金を送るために私たちが日常生活で直面する種々の危険に、ほとんど気づかないもう一つの危険が加わったにすぎない」と説明している(Iniciativa ProEquidad, 2020)。

 オンライン売春に移行する性産業の女性たちには、多くの危険と不利益がある。

通常よりも時間に余裕のある視聴者からの新しいコンテンツへの需要は、犯罪集団が、セックスワーカーや薬物使用者、その他の弱い立場にある人たちに、ライブ配信や録画された性的搾取を強要することを促す可能性がある。同様に、より逸脱した嗜好を持つ人々は、この時期を利用して、オンラインで子どもの性的搾取(CSE)をライブで提供しているサイトを探すかもしれない。しかも、子どもたちは学校から締め出されて自宅にいるので、潜在的な供給が増えている。犯罪集団と貧困化した家族の両方が新しい収入源を探している。FBIは、学校閉鎖の期間中にホームスクール、オンラインゲーム、ソーシャルメディアに参加している子どもたちが、オンラインで過ごす時間が著しく多くなっているため、性的捕食者たちのターゲットにされ、グルーミングの被害を受ける可能性があると警告している。(Global Initiative Against Transnational Organized Crime, 2020)

 ウェブカムを介してオンラインで売春をする女性は、「プライバシー侵害、客との潜在的に危険なやりとり、そして彼女たちを保護するように設計されていない法律」に遭遇する(Drolet, 2020)。多くの人がオンラインポルノにおけるプライバシーの欠如についての恐怖を表明し、中には避けられないプライバシー侵害を恐れてやめる人もいた(Deliatto & Fenton, 2020)。ある女性は、ポルノサイトに動画をアップロードすると、嫌がらせや脅迫、リベンジポルノの対象になることを恐れていた。動画はポルノサイトから違法に流出させられることが多い。「プラットフォームはセキュリティと秘密性を欠いている。誰でもスクリーンショットを撮って共有することができる」と彼女は語っている。2020年2月には、英国のポルノサイト「OnlyFans」から1.5TBもの女性の事前録画された動画や画像が流出した(Shehadi & Partington, 2020)。

 女性たちは、ピンプによる稼ぎの吸い上げにも動揺していた。ポルノやウェブカムによる稼ぎは他の種類の売買春に比べて著しく低く、そもそもビデオ機器を購入する資金を持っていない女性が多い(France24, 2020)。プライベートなウェブカム売春で基本的な費用をまかなうだけの収入を得ていなかったある女性は、買春者がいわゆる「プライベート・コンテンツ」にお金を払う仕組みの OnlyFans に自分の動画をアップロードすることにした。しかし、彼女は 「ウェブカムでは、あなたの顔はそこに映し出されてしまう」と言う。彼女は顔を見せないことにしたが、そのせいで買春者の支払い額がいっそう減ったことがわかった。

 パンデミック中かどうかにかかわらず、性売買の中の女性は通常、そこに入って、緊急に必要なお金を手に入れて、できるだけ早くそこから出ようとしている。子供や将来の雇用主、将来の恋人や夫に見られる可能性のあるウェブ上で、自分たちの画像が無限に流通することを望んでいない。それにもかかわらず、セックスワーカーの組合はオンライン売春を推進してきた。ピンプが構成員に含まれているニュージーランドのセックスワーカー組合は、パンデミックの流行中、女性たちに売春店からウェブカムポルノへの移行を促した。オンライン売春/ウェブカム動画配信に関するニュージーランド売春婦コレクティブ(NZPC)の欺瞞的なキャンペーンに対抗するために、ニュージーランドのサバイバー・グループは、サイバー売春のリスクと、路上売春、エスコート売春、売春店での売買春からオンラインに移行するための経済的な障壁について説明した(Shehadi & Partington, 2020)。

セックスワーク売買春を主流化するためにパンデミックを利用する

 ピンプとその新自由主義的な政治的友人たちは、性売買を促進し主流化するために、コロナウイルスのパンデミックを悪用している。パンデミックの初期の数週間、ニュージーランドの売買春推進組合とオランダの売買春推進組合は、トランプばりの事実無視のアプローチでもって、パンデミックの害を最小限に抑えようと努め、通常通りのビジネスを提唱した。2020年3月、ニュージーランド売春婦コレクティブ(NZPC)は、パンデミックの間、売春をしている女性は「細心の注意」を払うべきだと提案し、「予約する前に症状や渡航歴のスクリーニングを顧客に行なうこと」を推奨した。NZPCは「リスクを減らすことができ、賢明な予防措置をとっていることがわかれば、顧客は安心して予約できる」と女性に偽りの安心を与えた(African News Agency, 2020; Hendry-Tennent, 2020)。米国大統領が新型コロナから身を守るために消毒液を摂取するよう勧めた時のように、NZPCは後にこの危険なアドバイスを撤回せざるをえなくなった。売買春の安全性、衛生面、売春女性やピンプの組合からの「被害軽減」についての嘘は、新型コロナのパンデミック時には、そしていつの時も危険である。ニュージーランドの別のピンプは、パンデミックの真っ只中で、性売買をノーマライズしようとして、「衛生面では、性産業は最も安全な場所である可能性が高い」などと宣言した。英国のセックスワーク組合は、新型コロナの被害を減らすために、漂白剤、消毒液、キスを避けること、できるだけベッドのシーツを取り換えることなどのテクニックを推奨している(Bindel, 2020)。ロシアのセックスワーク組合は、買春者の顔に近づかないようにするために、「衛生的」な体位のリストを配った。カナダのセックスワーク推進派は、「そこにはキスや正常位など、多くの人が避けようとしているサービスがある。顧客の顔を近づけないようにする方法は必須だ」(Grossman, 2020)。 これらの被害軽減テクニックでは、性売買の中の女性たちを新型コロナから保護することはできないし、買春者やピンプによって行なわれているレイプ、殴打、言葉による虐待から女性を保護することはできない。

 通常の「ゾンビ思想」は、パンデミックの間に性売買のビジネスマンによってさんざん流布されている。「ゾンビ思想」とは、圧倒的な証拠によって間違っていることが証明されており、死んだはずなのに、なぜか何度も甦っては、人々の脳みそを食い散らすような思想のことである(Krugman, 2020)。これらの詐欺的思想が再浮上してくるのは、ピンプとその自由市場的取り巻きのために多くのお金を生み出してくれるからである。とくに人気なのは、売春を合法化ないし非犯罪化することで安全にすることができるというゾンビ思想だ(Moran & Farley, 2019)。「セックスワークが実際の仕事として扱われ、完全に非犯罪化されれば、セックスワーカーは他のすべての労働者と同じ人権にアクセスできるようになる」(Shehadi & Partington, 2020)。ここでのゾンビ・メッセージは、パンデミックと経済的破局に直面しても、売買春の中の女性はピンプを非犯罪化することで救われるだろうというものだ。しかし、ピンプの非犯罪化がホームレスや財政危機から女性を守る、あるいは性産業の人種差別、性差別、暴力的搾取から女性を守るという証拠は何もない。売買春を非犯罪化することで、経営者としてのピンプを支持することは、コロナウイルスが大流行している間の経済的生き残りへの不安を利用した、欺瞞的なマヌーバーである。たしかに、性産業の女性がパンデミックの間、緊急支援を必要としているのは、彼女たちがギリギリのところで生活しているからであって、彼女たち自身を「セックスワーカー」として法的に定義する必要があるからではない。性産業に従事する女性たちが必要としているのは、売買春からの脱出、住居、医療、そして有意義で持続可能な雇用であると、彼女たちははっきりと私たちに話している。彼女たちが最も必要としていないのは 人権侵害である売買春を 「仕事」として再定義しようとする巧妙で――そして実にピンプ的な――マヌーバーである。ピンプの非犯罪化はピンプを助けるが、女性の家賃を払ったり、彼女の食卓に食べ物を置いたりすることはない。人々が性売買の中の女性を非犯罪化していると思っているときに実際にはピンプを非犯罪化することは、トランプ的なマヌーバーに似ている。トランプは、新型コロナ対策の「景気刺激法」と称して億万長者(航空会社や銀行)の救済策を出したが、それは家賃や住宅ローン、食費のような家計費を支払うために緊急の経済援助を必要としている人々を救済することには失敗している。

 もう一つの新型コロナ関係のゾンビ思想は、「セックスワークをめぐるスティグマを打破し、非犯罪化のためのキャンペーンを展開することは、セックスワーカーがこのような時代に生き残り、将来に備えられるようにするためのもう一つのルートである」(Wilson, 2020)というものだ。性売買の推進者たちは、売買春で売られている人が非犯罪化され、けっして逮捕されないようにすべきだというのは正しい。しかし、ピンプや買春者はスティグマを着せられるべきであり、ピンプや買春者は逮捕されるべきである[14]。売買春の非犯罪化がパンデミックなどの危機の際に女性の生存を保証するという証拠も、非犯罪化された売買春が困難な時代の女性のためになるという証拠もない。スティグマは売買春の法的地位に関わりなく持続する。ニュージーランドやオランダの女性は売春婦組合への加入を避けているし、政府の記録が残ることや社会的に売春婦というレッテルを貼られるのを避けたいという理由から、政府の給付金を申請することを避けている。パンデミックの間、性産業の女性たちに対する偏見のせいで、彼女らが他の市民と同じように経済上・医療上の恩恵を受けることが妨げられている。解決策は、経済的な平等と、性産業の中の女性たちを含むすべての人々に社会的支援を提供することである。

 「セックスワーカーは安全であり、コンドームは必ず使用されている」という神話があるが、実際には性売買の女性は安全ではなく、買春男は常に身体的な脅しをかけたり、より多くのお金を支払うことでコンドームなしの性行為を要求してくる(Rao, Gupta, Lokshin, & Jana, 2003; Farley, 2004; Brody, Reno, Chhoun, Kaplan, Tuot, Yi, 2020))。これは、HIVの流行時と同様、新型コロナのパンデミック時にも当てはまる。HIVの流行期における、女性は汚れた存在である、あるいは「病気の媒介者」である、という同じミソジニー的なステレオタイプは、2020年のコロナビウスのパンデミックでも明らかであり、たとえばブリュッセルの近隣住民は売春をしている女性を「病気の蔓延者」と呼んでいる(Chini, 2020)。

 売買春の中の女性は、HIV、新型コロナ、そして常に存在する極端な暴力の脅威から逃れるためにできるだけのことをしている。直感を利用する、コンドームの使用を要求する、マスクの使用を求める、暴力的に脅されたときに身を守るために武器を携行する、ピンプや友人に居場所を伝えておく、あまり酔っていない買春客を探すようにする(酔っぱらっていたり、ラリっている男が最も暴力的になる可能性があるから)、枕元やベッドの下に武器がないかチェックするためにセックスワーク組合の規則――首を絞められて死ぬ可能性があるからネックレスやスカーフは絶対に身につけない、など――を順守する、等々である(Farley, 2004)。しかし、どれもうまくいかない。性売買の中の女性たちは、地球上のどの女性よりも高い確率でレイプされており、殺されることさえある。売買春の中の女性たちはHIVに感染する率が高い。買春客にレイプされ、買春客がコンドームなしの性行為のために多くのお金を払うためだ。性売買の中の女性たちは、同じ理由で新型コロナで打ちのめされている。彼女たちの生活は、買春者やピンプにとってほとんど価値がない。一部の政府にとっても、彼女たちの命はそれほど価値のあるものではないようだ。

 人道主義者の億万長者でさえゾンビ飲料水を飲んでいる。ビル&メリンダ・ゲイツ財団は、インドの保健当局者と協力して、インドの貧しい女性たちのために売春の主流化を10年以上も追求してきた(Farley & Seo, 2006)。ゲイツはコルカタ〔旧カルカッタ〕の売春店でコンドーム配布プログラムを実施し、貧困から抜け出す方法として性売買を促進する組合を支援してきた。しかし、性売買の中にいるインドの女性たちにインタビューをすると、マフィアのピンプによって支配されている銀行口座など持ちたくないと語ってくれた。彼女たちの人生の目標は、コンドームを正しく装着することや、年を取って無一文で辞めるまで売春を続けることではない。そうではなく、彼女たちが求めているのは、売春店とは別のところに住まいを持ち、農業か小さなビジネスを始めるための土地を持つことである。ゲイツの資金は、これらの女性たち自身がはっきりと語っているこのような希望にはまったく使われていない。コンドームを配布すれば売買春の問題が解決するというゾンビ思想がいまだ続いているのだ。ミッキー・メジは南アフリカのサバイバーたちの言葉を引用し、「コンドームは私たちの運命を変えない。私たちはまだ貧しいままである」と語っている[15]。ゲイツ財団に続いて、ジョージ・ソロスは売買春を非犯罪化するための数々のキャンペーンに資金を提供してきたが、住宅や売春から逃れるための選択肢を提供することにはまったく失敗している(Raphael, 2018)。

パンデミックの中で明らかとなった合法売春の失敗した実験

 コロナウイルスの大流行は、ピンプ、人身売買業者、買春者の暴力から女性を保護するための合法化ないし非犯罪化された売春の失敗を露呈させた。新型コロナに対応して、ドイツは合法売春店を閉鎖し、女性たちは放り出された[16]。なぜなら、彼女らが売春店における自分たちの部屋に住み続けたければ、その部屋代を売春店のピンプに支払わなければならないが、そんな余裕はなかったからである。ネバダ州も合法売春店を閉鎖し、女性たちを叩き出したが[17]、市、州、連邦政府からの財政支援、食料援助、シェルターはなかった。ドイツの合法売春における女性の財政危機は、女性が違法売春で苦しむ財政危機とほぼ同じである。 2020年3月、ベルリンの連邦上院と連邦家族・高齢者・女性・青少年省は、パンデミックの間、家庭内暴力から逃れてきた女性たちが閉鎖された売春店に避難することができるかどうか、合法的なピンプ団体(BesD)に問い合わせた。被害女性たちが加害者といっしょに自宅に隔離されたため、そこから逃げようとする女性たちが急増した。そのため、ドイツでは被虐待女性のためのシェルターが全国的に不足するようになった[18]。売春店が閉鎖されたため、ピンプたちは、自分たちの売春店に被虐待女性(バタードウーマン)を収容する有償の機会を歓迎した。政府の提案のこの皮肉と異常さは、歴史家のインゲ・クライネによって見逃されることはなかった。彼女が指摘したように、売買春そのものがドメスティック・バイオレンスの残酷な一形態なのだ(Kleine, 2020)。連邦上院が提案した、ピンプが経営する店を被虐待女性用に利用するという提案は静かに取り消されたが、別の解決案は検討すらされなかった。すなわち、自治体が売春店を収用して、ピンプを叩き出し、その建物を人身売買された女性たちのための長期的なハウスに利用するという案だ。

 シュトゥットガルトでは、パンデミックに対応して合法的な売春店を閉鎖した後、売買春を全面的に禁止した。これは、他に生きていく手段のない女性が合法的な売春店から追い出され、自分や家族を養うために違法行為に頼った場合、その女性が逮捕される可能性があることを意味していた。この政策の残酷さは、サバイバーであるフシュケ・モウによって抗議された。彼女は、ドイツの売春店にいる女性たちの80%は、貧困によって性売買を強要されただけでなく、虐待的なピンプやボーイフレンド、夫によって性売買を強要されていると指摘している。したがって、女性を逮捕することは、被害をさらに拡大させ、加害者ではなく被害者を責めることになる。モウは、この逮捕政策を女性の健康と生存を危険にさらす「大惨事」と表現した。彼女はまた、パンデミックがドイツの各都市に売買春に関する北欧モデル法を実施する機会を提供していると指摘した。北欧モデル法の下では、買春者、売春店、ピンプは罪に問われるが、この犯罪の被害者が逮捕されることはない。モウは、今回のパンデミックは、最も弱い立場にある人々、つまり売買春で買われている側を逮捕するのではなく、支援や離脱サービスを提供することで連帯感を示す機会をドイツ人に提供したと指摘している(Mau, 2020)。

 オランダではパンデミックに対応して合法売春店や飾り窓は閉鎖されたが、貧困やピンプに強要された多くの女性たちが、自宅やホテル、違法な売春店で売春を続けていた。売買春のオンライン広告は、パンデミック中も当たり前のように出回っていた(Pieters, 2020)。ジャーナリストのレナテ・ファンデル・ゼー(Renate van der Zee)は、オランダの売買春推進団体が、合法売春が停止されたにもかかわらず、女性が売春を続けることを奨励していることを明らかにした。女性たちは、パンデミック期間中、月1050ユーロという政府のわずかな定額支給金でも売買春から逃れる機会に飛びついた。「多くの女性が助けを求めており、中にはパンデミック期間中に支給された定額支給金を売春から抜け出す機会として利用している女性もいます」とファンデル・ゼーは言う。「今こそ、売買春離脱プログラムを強化しなければなりません。なぜならそれこそが最優先課題だからです。カウンセリングだけでは十分ではありません。女性にはアパートと仕事が必要です」。過去5年間、ファンデル・ゼーは、オランダ市民、アウトリーチワーカー、進歩的政治家の連合とともに、オランダが合法売春の失敗した実験を続けるのではなく、北欧モデル型の売買春法を採用するよう提案してきた。

 ニュージーランドの売春婦・ピンプ組合が合法売春店の閉鎖に対する解決策としてウェブカムによる動画配信売春を推進していたのに対し、サバイバー主導のアボリショニスト団体「ワヒネ・トア・ライジング・アオテアロア」は、売買春の中の女性たちが「夜露と糊口をしのぐために性産業に従事し続けるしか選択肢がないと感じないよう」、オランダで提供されているのと同種の緊急支給金を求めている(Kronast, 2020)。 このような線に沿って、サバイバーとNGOの世界的な連合は、売買春から逃れようとする女性たちのために、同種の多国間基金の創設を提案する緊急のメッセージを国連事務総長に送った[20]。

ホームレス状態売買春、パンデミック

 売春に抵抗すれば女を殴るのが、そこら中にあふれているピンプ流の「殺人的資本主義(lethal capitalism)」だが、アメリカの州および連邦の政府は、パンデミック中にホームレスになった人々に対して同じくらい非人道的な政策を実行した。それはグロテスクなパロディだ。ある州の知事がパンデミック中、家を持たない人々のためにホテルを利用しようとしたのに対し、他の諸都市は、たとえ一時的でも資源を思いやり深く共有するという提案に強く抵抗した(Har & Nguyen, 2020)。ラスベガスでは市内のホテルが空っぽになっているというのに、同市の役人たちは、コンクリートの駐車場にホームレスが寝泊まりするための「社会的距離を置くボックス」用の区切りをペンキで描いた(Lee, 2020)。

Photo credit: Damairs Carter, 2020

 ローマ法王フランシスは、新型コロナのアウトブレイクに対するラスベガスの対応を批判し、ホームレスの人々は駐車場ではなくホテルに隔離されるべきだと述べた。法王は、困っている人々はしばしば「救出された動物」のように扱われると指摘した(Gallagher, 2020)。一方、西ベンガル州のパンジャ大臣は、コルカタのソナガチ売春地帯で、飢え絶望している1500人の被買春女性に食べ物を配った。動物園の飼育員を思わせるような態度で、パンジャ大臣は「何をすべきか、何をすべきでないかを理解させる。社会的距離のルールに従うことを理解させる」と述べた(Sonevane, 2020)。

 「流し台がないのにどうやって手を洗うのか? お金がないのに食料を備蓄する? 家もないところに避難するのか?」とイタリアのホームレス支援の活動家は問うた(Povoledo,  2020)。家のない人や車やシェルターで生活している人は、新型コロナのような感染力の高い病気にかかりやすくなっている。「ホームレスと貧困全米法センター」(National Law Center on Homelessness and Poverty, 2020)は、その原因の大部分が「近接して住み、免疫システムが低下し、高齢化が進んでいる」という事実と、「適切で恒久的で安定した住宅がなければ、人々は頻繁に手を洗うためのトイレ、洗濯設備、身体の衛生を欠くことになる」という事実に起因しているとしている。

結論

 「個人を苦しめている生物学的ウイルスは社会的ウイルスでもある」とヴェト・タン・グエン〔ベトナム系アメリカ人の作家で、ピューリッツァ賞の受賞者〕は書いている(Nguyen, 2020)。「その症状には、不平等、冷淡さ、利己主義、利潤動機が含まれており、それは人間の価値を引き下げ、商品の価値を引き上げる。私たちの真の敵はウイルスではなく、ウイルスに対する私たちの反応である――私たちの社会の構造的不平等によって劣化し歪んでしまった反応である」。このような構造的不平等はすべての人に影響を与えているが、パンデミック中の性売買の中の女性たちにとっては、不平等は命を脅かすものであり、自分自身を性的商品へと変換することで、貶めと恥辱の痛烈な感覚をこうむっている。

 コロナウイルス・パンデミックは資本主義の失敗ぶりを鮮やかに露呈している。「誰がその費用を払うのか」というのが、人工呼吸器につなげられた瀕死の男の最後の言葉であった(Elassar, 2020)。「それ(パンデミック)は、私たちが本当にすべてのフリーランス労働者や民衆一般を保護することにいかに失敗しているかを浮き彫りにしたと思う」と、米国における売春女性は語っている(Campoamor, 2020)。米国の膨大な数の貧困層と労働者階級の人々が、食糧と住宅の危機に脅かされている[21]。新型コロナによって引き起こされた経済的被害からの財政的救済は、金持ちにはすぐに届いたが、貧乏人には届いていない(Goldstein, 2020)。

 米国のパンデミック中、最も立場の弱い者よりもむしろ最も弱くない者が国家によってケアされるという事態のうちに、悪性資本主義の失敗ぶりが全面的に表われている(Nguyen, 2020)。性売買を「好色なサービス」と呼び、米国における経済援助の最初の包括提案は、緊急支援の対象から以下のものを排除した。合法売春、ストリップクラブでの売春、ポルノやウェブカメラでの売春の中の女性たち(Mansfield, 2020)。このコロナウイルス支援法案は他の多くの人々をも排除している。ホームレスの人、拘留中ないし入獄中の人々、負債を抱えた学生など(Poor Peoples’ Campaign, 2020)。南アフリカと日本もまた、性売買女性への手当を制限する政策を提案した〔日本の場合は、休校中の子どもを持つ親への休業手当。後に撤回〕。女性人権弁護士の角田由紀子は、被買春女性を支援プログラムから除外することは、「死ねと言っているようなものだ」と批判している(Tsunoda, 2020)。

 誰が食料や水に値し、誰が値しないのか、誰が売買春のために犠牲とされるに値し、誰がそうでないのかについての有害で偽善的な虚偽情報キャンペーンは、克服されなければならない。生きていくために売買春に値する女性の部類――大部分が若く、貧しく、民族的にも人種的にも疎外された女性――が存在するという考えを否定しなければならない。そして私たちは、呼吸器疾患を持つ炭鉱労働者のための医療助成の廃止を含む共和党政権の残酷な予算を拒絶しなければならない(Jonson, 2020)。こうした政治的策略は、いくつかのカテゴリーの人間を他のカテゴリーの人間よりも価値がないものとして脇に退けるシステムが示す症状である。

 貧困に対する多くの資本主義国家の既成メディアの対応は、しばしば不十分で腐敗したものだ。緊急定額支給、食料品ボックス、短期住宅などはすべて、階級的に分離され法人資本主義によって退廃させられてき社会の真のニーズに対応することができない。多くの「グローバル・サウス」諸国では、女性たちは各国政府の「社会統合」プログラムによって選別されており、女性たちが売買春の中で残忍に搾取されている事実は政府によって見て見ぬふりをされている。政府や市民社会による保護なるものは、内戦や家族からの虐待によってトラウマを負い人身売買された移民や貧困層の女性や少女たちにはまったく存在しない。ネバダ州やドイツでと同じように、ラテンアメリカでは、腐敗した地元の役人がピンプと密接に協力している。売買春の被害は無視され、女性たちは売買春の中で使い捨てられる。その後、彼女たちは麻薬密売ネットワークや他の犯罪企業に売り払われてしまう。このシステムは、貧困層を生涯にわたって搾取しながら、貧困層を目に見えないものにするよう設計されている。

 生命を脅かす不平等は、新型コロナのパンデミックによってより顕著になっている。アメリカでも、コロンビアでも、その他どこにおいても、富裕階級への深刻な挑戦はまだ存在しないが、抵抗の兆しはある。億万長者のジェフ・ベゾスがアマゾンとホールフーズの従業員に公正な賃金を支払うことを怠ったこと、病欠の保障や安全な労働条件を提供することを拒否したことは、米国で怒りとストライキを引き起こした。2020年4月、トランプの共和党政権は、米国各地で新型コロナウイルスの感染爆発が続いており、労働条件が危険なものになっていたにもかかわらず、食肉梱包工場の再開を法的に強行した。しかし労働者は、危険な職場環境で働けとの要求に屈することなく抵抗している(Telford, Kindy, & Bogage, 2020)。

 新型コロナパンデミックはいくつかの緊急の教訓を提供している。私たちは、コロナウイルスの被害根絶(ワクチンによる)を必要としているのであり、コロナウイルスの被害軽減(社会的距離、医療上の緊急措置の治療による)にとどまることはできない。それと同じで私たちは売買春の被害根絶を必要としている。すなわち、売買春という人種差別的で性差別的なシステムを廃絶し、有意義で持続可能なオルタナティブを提供しなければならない。私たちは、コンドームの配布とか、「悪い客」リストの作成とか、形式的な相談活動などの売買春の被害軽減だけで満足してはいない。食料やシェルターの緊急の寄付は、売春の被害を短期間軽減させるだけである。買春され人身売買された女性にふさわしいのは、それだけか? いや。貧しい男女――性売買の中にいる人々もそうでない人々も――は、普遍的な医療、普遍的なベーシックインカム、安全な住居(立ち退きや差し押さえの無期限モラトリアムを含む)、学生ローンの帳消し、そしてフードスタンプ削減の撤回に値する(Taylor, 2020)。米国の裕福な市民は、彼らが必要としている以上の資源を有しており、それらは公平に分配されるべきだ。そのためには、すべての市民への資源の平等な分配を促進する大規模な財政改革が必要である。 貧困とホームレス状態の防止は、女性や少女たちが売買春へとなだれ込む事態を減少させ、女性たちの生存を可能とするだろう(Oppenheim, 2020)。そして、私たちは彼女たちと一緒になって、貧困の中に焼き付けられている性差別と人種差別に挑戦することができるだろう。

原注

[1] 著者〔メリッサ・ファーリー〕は、ハーヴェイ・シュワルツの編集と内容に感謝する。また、このエッセイにインスピレーションを与え、サポートしてくれたデボラ・ボイヤーに感謝する。著者の電子メール mfarley@prostitutionresearch.com

[2] テキサス州共和党の政治家ダン・パトリック(Stieb, 2020)、Dr.フィル、Dr.オズ(子どもの死には「トレードオフ」があることを示唆)(Scott, 2020)。ショーン・ハニティ、タッカー・カールソン、ジョージア州共和党の政治家ブライアン・ケンプ(Mull, 2020)も参照。トランプ政権によるWHOへの悪意に満ちた攻撃は、やがてイエメンでの死者、アフリカの一部での死者、占領地のパレスチナ人の間での死者をさらに増やすことになるだろう(Polychroniou, 2020)。

[3] 人種/民族はコロナウイルスへの曝露率に影響する。社会的距離をとること(ソーシャル・ディスタンシング)は多くの人が持っていない特権であり、特に貧困層や労働者階級、有色人種の人たちにとってはそうだ。経済的にも人種的にも恵まれている人たちは、社会的距離をとる余裕があり、医療にアクセスでき、公共交通機関を避けることができ、自宅で仕事ができることが多い。(Blow, 2020)  

[4] マヌエル・ションは、Abolition 2014の共同創設者。http://abolition2014.blogspot.com/

[5] ミーガン・ルンドストロームは、米国のFree our Girlsの事務局長。 www.freeourgirls.org; www.gettingoutthegame.com

[6] アリー・マリー・ダイアモンドは、ニュージーランドのサバイバー主導のアボリショニスト団体「ワヒネ・トア・ライジング・アオテアロア」の共同創設者。

[7] アンジー・ヘンダーソンは、アメリカのノーザン・コロラド大学の社会学の教授。

[8] 老人ホームと同様に、刑務所では、強制的な接近が、獄中の女性と男性を新型コロナのリスクが最も高い立場に置く。多くの女性は、食料や衣類の窃盗といった、人種差別や貧困に起因する犯罪のために投獄されている。また、ピンプの被害に遭ったという「犯罪」でも投獄されている。アメリカでは、ラテン系アメリカ人、アフリカ系アメリカ人、貧困層が圧倒的に多い。米国の刑務所は、正義のシステムというよりも営利ビジネスである(California Coalition for Women Prisoners, 2020)。

[9] これらのグループは、売買春の中で買われた人々の非犯罪化を推進している。 筆者もこれに賛同し、性的利用のために買われた人々は絶対に逮捕されるべきではないと明言している。しかし、ピンプや買春者は捕食者であり、汚名を着せられ、逮捕されるべきである。

[10] Alika Kinan, April 30, 2020. At the Edge of the Margins: COVID-19’s impact on women in the sex trade. 女性人身売買反対連合(CATW)が主催するオンラインシンポ。

[11] 支援者、サバイバー、法執行機関の情報源からの報告によると、2020年3月から4月にかけて、米国の性売買は安定的に推移したか、あるいは増加した。テキサス州ウェーコのマクレナン郡保安官事務所のジョセフ・スカラムッチ刑事は、売春広告への反応に大きな変化は見られず、性的人身売買の程度にも変化は見られないと述べた。アリゾナ州フェニックスでは、パンデミック期間中に買春に対する男性の需要が増加した。これはフェニックスがパンデミック中も性産業が営業を続けていた米国の少数の都市の一つであったためと考えられる。フェニックス警察のマーク・ドッティ巡査部長は、路上売春、人身売買、オンライン売春のすべてが増加したと報告している。それは、ピンプが封鎖された諸都市(ヒューストン、マイアミ、ラスベガス、ロサンゼルス)から女性と少女をフェニックスに移送してきたからだ。JustMenAzの活動家ニック・レンボーは、フェニックスでマッサージパーラー売春店の予約を取るのに苦労しなかったと報告している。

[12] エクソダス・クライ(Exodus Cry)の理事レイラ・ミッケルウェイトに、ポルノハブについての情報に感謝申し上げる。モデルハブはポルノハブとマインドギーク(MindGeek)によって運営されるオンライン売春・人身売買ビジネスの一部である。モデルハブは以下のサイトでポルノの制作を宣伝している。

https://www.modelhub.com/model-program

https://www.modelhub.com/information/about

https://www.modelhub.com/blog/7341

[13] 例えば、Agence France-Presse(2020, April 19)はコロンビアでのウェブカメラによる売買春を美化している。多くの米国メディアは、同様のポルノ擁護のスタンスを取っている。

[14] 北欧モデル型の売買春法では、売買春の中の女性たちは非犯罪化され、ピンプや買春客は犯罪化される(Waltman, 2011)。

[15] ミッキー・メジは、クワネレのサバイバー運動のリーダーであり、ケープタウンのエンブレイス・ディグニティ(Embrace Dignity)のアドボカシー・マネージャーである。彼女は2020年4月30日、女性人身売買反対連合(CATW)が主催するオンライン会議「At the Edge of the Margins」で講演した。 

[16] 買春され人身売買された女性たちは、売春店に部屋を借りて、そこに住んでいる。「Pascha(ドイツのメガ売春店)の主な収入は、少女たちから受け取る家賃である」と、Paschaのピンプ/管理人であるヘルマン・ミュラーは説明する。彼女らはPaschaの部屋を利用するために1日に175ユーロも支払う。最低でも4人の男性にサービスしないと家賃さえ払えない(Dia, 2015)。

[17] ドイツでのように、そのままではホームレスになってしまう女性の多くがネバダ州の合法売春店に住み込んでいる。

[18] 被虐待女性は、虐待から逃れるすべのないまま、あるいは、助けを求める電話をかけるためのプライバシーがないまま自宅隔離されており、虐待者からの大きな危険にさらされている。

[19] ニュージーランドにおける性売買女性のための緊急支援金には障壁があった。同団体の共同設立者であるアリー・マリー・ダイアモンドは、「政府からの支援金を受けるにあたって、それ以前の収入がどうであったかを示す記録や証拠を提示しなければならないが、性売買に従事する女性たちの多くはそのような記録や証拠を持っていない。また、ニュージーランドで性売買女性の多くはニュージーランドの住民ではないため、政府からの支援を受ける資格がないと考えている可能性がある」と説明している(Kronast, 2020)。

[20] 国連事務総長への書簡は以下のサイトからアクセス可能。 https://prostitutionresearch.com/un-response-to-covid-19-must-include-exploited/

[21] パンデミックの期間中、南カリフォルニアでは食糧支援を得るために、1マイルに及ぶ車の列が並んだ(Nicholson, 2020)。

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投稿者: appjp

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