タラ・ライアン「性産業のサバイバーである私が北欧モデルを支持する理由」

【解説】本稿は、先月、イギリスのアボリショニストのサイトである Nordic Model Now!(NMN)にポストされたサバイバーの証言です。NMNの許可を得て、ここに翻訳をアップします。タラさんの証言は以前にも紹介したことがありますので、ぜひそれと併せて読んでください。

タラ・ライアン

『ノルディック・モデル・ナウ!』2022年1月16日

 私はこれ以上傍観していることはできない。商業的性搾取、レイプ、人身売買のサバイバーとして、私はしっかりとした立場を取らなければならない。北欧モデルが必要なのだ。その理由は以下の通りである。

 まず、「北欧モデル」とは、他のフェミニストや性売買サバイバーたちが提唱している包括的なフレームワークを意味していることを明確にしておきたい。このフレームワークには、買春されている人々の非犯罪化、十分な資金が投入された包括的な離脱サービス、性売買に対する文化的な変化をもたらすための公共的な教育キャンペーンなどが含まれる。たとえば、アイルランドのような国は、このモデルを使っているとよく言われるが、実際には、完全には実施されていない。単にセックスの購入を禁止するだけでは、北欧モデルとは言えない

 このモデルは、性売買を搾取的なシステムとして認識し、買春を(主に)女性や子どもに対する男性の暴力として認識する唯一の法的枠組みの提案だ。欧州議会女性人身売買反対連合(CATW)、「あらゆる性的搾取を終わらせる英国センター(CEASE)」などが支持している。

 では、なぜ私はこれほどまでに長い間、この件について迷ってきたのか? 

 一言で言えば、プロパガンダのせいだ。性売買推進派のロビー団体は、北欧モデルが女性への暴力を増加させ、ピンプ(ポン引き、女衒)を助長し、同モデルを支持する者はSWERF(セックスワーカーを排除するラディカル・フェミニスト)や「娼婦フォビア」のピューリタンであると主張し、北欧モデルに反対する猛烈なキャンペーンを展開している。性売買サバイバーがそんなことを聞きたいと思うだろうか? ロビー団体は対案として、性産業全体の非犯罪化が唯一の改善策であると主張する。彼らによれば、全面的な非犯罪化は、暴力を減らし、人身売買を減らし(人身売買が存在することを認めた場合にかぎる。これらのロビイストの多くがその存在を否定している)、スティグマを防ぐことができる。

 しかし、時間をかけてこの件について手に入れられるものすべてを読んだ結果、これらの主張は崩れてしまった。非犯罪化や合法化(両者には、性産業ロビイストが信じさせようとしているような違いはない)が暴力や人身売買を減少させるという証拠はなく、ドイツオランダなどの多くの地域ではこれらが増加している。需要と買春ツァーが増えれば増えるほど、より多くの女性が必要とされ、その「仕事」を選ぶ女性はけっして十分ではない。

 それはなぜか?

 ニュージーランドは売買春改革のお手本のように言われているが、非犯罪化法に関する政府の調査報告でも、性産業に従事する女性たちは、暴力の面で法律が変わったとは感じられないと言い、警察も搾取の被害者を特定するのが難しいと認めている。先住民族の女性たちはいまだに路上売春を強いられており、その中には未成年者も含まれている。しかし、ニュージーランド売春婦コレクティブ(NZPC)は、この法律は成功したと評価している。同団体は同法のロビー活動に深く関わっていた。

 この同じ NZPC は、人身売買された子どもを「未成年のセックスワーカー」と呼び、子どもをレイプする連中を「顧客」と呼んでいる。安全性を高め、暴力を減らすためのモデルとして、私たちはこれを真剣に受け止めるべきだろうか?

 さらに私にとって衝撃的だったのは、ほとんどの「セックスワーク」団体を赤い傘の下に含む「グローバル・ネットワーク・オブ・セックスワーク・プロジェクト(NSWP)」の副議長にアレハンドラ・ギルが就任していたことだ。ギルは、アムネスティなどの人権団体に助言し、非犯罪化を支持する決定に影響を与えた。そのギルは現在、200人の女性に売春させた罪で刑務所に入っている。

 NSWP は彼女を糾弾しておらず、今でも彼女のことを「人権の擁護者」と表現している。性的搾取や暴力に関心のある人は誰もこのようなことを支持すべきではないが、彼らのプロパガンダは至る所にある。性売買サバイバーが声を上げれば、日常的に口をふさがれ、中傷され、さらにはオンラインでのヘイトキャンペーンの対象となる。ピンプに反対したからだ。それが何を物語っているのかは明らかだ。

 だから、私は非犯罪化を支持することはできない。このことに気づいた私は、北欧モデルが暴力を増加させるという主張を入念に調べた。繰り返しになるが、この主張はきちんと精査すると崩れてしまうものだ。ところが、北アイルランドでは、ピンプが運営する「エスコート・アイルランド」のデータをもとに、北欧モデル型の法に対する否定的な調査報告書が出された。

 私も北欧モデルが完璧だとは思わない。フェミニストはこの立法の全面的な執行に向けて闘いを続けている。そうする必要があるのは、このフレームワークのさまざまな側面が互いに連携して初めて効果を発揮するからだ。現在の英国政府に、私たちが必要とする離脱支援を提供するよう説得することは、厳しい闘いになると思うが、私たちがしなければならない闘争だと思う。

 ロジャー・マシューズ教授らの『売買春からの脱出』では、イングランドとウェールズで売買春の中にいる女性たちを調査した結果、次のようなことがわかった。

・32%が未成年のときに売春に参加した。

・50%が強制的に売春をさせられたことがあり、29%が虐待的なパートナーから売春をさせられたことがある。

・86%が売買春での暴力を経験している。

・7%が国際的人身売買の被害者だ。

・67%が問題のある薬物を使用しており、これは性産業の現実に対処するために増加した。

 これらのことを知るなら、そして合法化や完全非犯罪化に不利な証拠を見るなら、これを「仕事」とみなすことはできないだろう。

 私は、性産業のロビイストたちから、私の性産業での経験が非典型的なものであるため、「黙っていろ」「セックスワーカーについて語るのをやめろ」とよく言われる。しかし、私はそうではないことを知っているし、他のサバイバーたちもそうだ。そして、ロビイストが正直であれば、彼らもそのことを知っているはずだ。

 たとえ法律を変えても、達成できることは限られている。スウェーデンやノルウェーなど、先駆的に北欧モデルを導入している国では、需要が減少しているが、そのまスーッとなくなってしまうわけではない。だからこそ、モデルの枠組みに含まれている離脱支援と予防が非常に重要なのだ。

 北欧モデルは、ユートピアのように思える人もいるかもしれない。しかし、性的搾取のない世界、女性や子どもが売買されない世界を想像することが価値ある目標でないとしたら、いったい何が価値ある目標なのか? 明らかにピンプの非犯罪化や売春店の合法化ではない。どちらの立場に立つべきかは明らかだ。

出典:https://nordicmodelnow.org/2022/01/16/i-am-a-sex-trade-survivor-and-i-support-the-nordic-model-heres-why/

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投稿者: appjp

ポルノ・買春問題研究会(APP研)の国際情報サイトの作成と更新を担当しています。

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