カット・バニャード「誰がアムネスティの方針作成を助けたのか?」

【解題】日本共産党のある地方議員(中野区選出)が、売買春の問題に関して、同党の公式の立場に反して、アムネスティ・インターナショナルの方針(売買春そのものをセックスワークとして肯定したうえで、その中での強制的なものだけを取り締まるという、すでにドイツなどで実施されて完全に失敗した政策)で行くしかないというツイート(現在は削除)をしたことを受けて、以下に、アムネスティ・インターナショナルの方針を作成するのに寄与した人物が実は、性的人身売買に関与し続け、15年の刑を宣告された犯罪者であることを指摘した5年前の記事を掲載します。人身売買業者は、売買春が合法化されさえすれば、いくらでも抜け道があることを熟知しているのです。

 アムネスティ・インターナショナル〔以下、アムネスティと略記〕は今月〔2015年10月〕、売買春に関するその新方針を最終決定する予定である。それはアムネスティ指導部による8月の投票を受けてのものだが、同指導部は――国際的な抗議にもかかわらず――、買春や売春店経営を含めて性売買を完全非犯罪化することを各国支部に勧告した。私の見解では、アムネスティの方針は危険なまでに誤っているだけではなく、それは、法的責任を問うべき当の人々〔人身売買業者〕からのエビデンスに依拠している。

 アムネスティの方針案は、売春施設の非犯罪化の呼びかけに対して「人権団体」から支持を得ていると述べている。「最も重要なことに」と同方針案は言う、「セックスワーク・プロジェクト・グローバル・ネットワーク(NSWP)を含むセックスワーカーの諸団体と諸ネットワークの大部分がセックスワークの非犯罪化を支持している」。しかし今年3月、NSWPの元副会長であるアレハンドラ・ギル氏は、性的人身売買の罪で15年の刑に処せられた。

 これはたまたま問題のある一団体に言及したとか、他の点では根拠のある一文書における小さな瑕疵という話ではない。アムネスティの方針案は次のものをエビデンスとして持ち出している。NSWPによって書かれた報告書、国連エイズ合同計画(UNエイズ)の「HIVとセックスワークに関するアドバイザリー・グループ」によって書かれた報告付録(NSWPはそのアドバイザリー・グループの共同議長団体)、世界保健機構(WHO)の報告書(その中でギルは、WHOの方針形成に寄与する「専門家」の1人としてわざわざ名指して言及されている)。NSWPのロゴは、WHO、UNエイズ、国連人口基金(UNPF)のロゴと並んでWHOの報告書の表紙に印刷されている。

 このことがはっきりと示しているのは、ギルの団体(NSWP)が、世界トップクラスの人権機関を通じて、商業的性搾取の合法化という目標課題を推進することに驚くほど成功したという事実である。「サリバンのマダム」〔「マダム」は売春宿の女経営者のこと〕として知られているギルは、報道によると、メキシコシティにおけるピンプ〔女性を支配して搾取する人、ポン引き〕のネットワークの中心人物であり、約200人もの女性を性的に搾取してきた。しかしながら、注目すべき決定的な点は、ギルは、NSWP内でピンプとしてその利害〔売買春の非犯罪化を求めること〕を何ら隠す必要がなかったことである。この団体は、ピンプ行為と売春店経営を通常の仕事として認めるようキャンペーンを行なっている。NSWPの方針によると、ピンプであるギルはまさに「マネージャー」業を営む「セックスワーカー」である。だとすると、どうしてUNエイズはこのような団体に正式のアドバイザーとしての役割を与えたのだろうか?

 他方、NSWPは今なおこの元副議長を「人権擁護者」としつづけている。メキシコシティに人身売買されて連れてこられてギルに搾取された1人の女性は、メキシコのジャーナリストに次のように述べている。「彼女の仕事は車から私たちを監視することでした。彼女ないしその息子が私たちをホテルに運んで、私たちに売り上げを請求します。彼女はあらゆることを記録している帳面を持っていました。どれだけの時間がかかったかについてさえ書き留めていました」。ギルの被害者たちの担当弁護士は私に次のように説明した。ギルが有罪になったのは、「彼女が人身売買を通じて連れてこられた被害者を受け取り」、「彼女たちをだまして売春を通じて搾取していたから」だと。

 NSWPが行使している影響力の大きな部分は2007年にまで遡ることができる。その年、UNエイズは、HIV防止活動の一環として売買春に対する需要と闘うよう各国に求めるガイダンスを出版した。売買春への需要は、ギルのような「第三者の」利得者が利益を得るのに必要不可欠なものであり、その需要を断つことは、もちろんのこと、NSWPにとってとうてい受け入れがたいものであった。NSWPはUNエイズに抗議したのだが、驚くべきことに、UNエイズはそれに答えて、「HIVとセックスワークに関するアドバイザリー・グループ」の共同議長団体にNSWPを指名したのである。

 その後、ガイダンス本の改訂版が出版されたが、このアドバイザリー・グループ〔NSWP〕によって書かれた「付録」がそこに付いていた。それは「セックスワーカーと売春店の管理」を非犯罪化することと、「戦略的焦点をセックスワークへの需要削減から別のところに移すこと」を推薦している。この付録は、売春店経営とピンプ行為――つまり商業的性搾取そのもの――を合法化するよう求めるNSWPのキャンペーンに正統性を与える上で決定的なものであることがわかった。

 売買春に対する需要は不可避ではない。1990年代、イギリスにおいてセックスに金を払う男性の数はほとんど倍化した。拡大することが可能なら縮小することも可能である。そして、まさにそれが、スウェーデンやノルウェーのような国々で起こったことである。これらの国では性買者処罰法を適用しており、その法にあってはセックスを買われる側は非犯罪化され、セックスを買う側が犯罪化される。これは、「エンド・デマンド・アライアンス」に属する諸組織(ウィメンズ・エイド、イクオリティ・ナウ、「女性に対する暴力廃絶」同盟など)によって提唱されているアプローチでもある。女性平等党もこのような法を導入するべきだと述べている。イギリスにおいて需要に対処する政策がなされてこなかったことは、現実のうちに如実に反映している。2013~14年に、車での売春婦物色〔裏道を車で流して売春婦に声をかけて売春を勧誘する行為〕で起訴された件数よりも、〔売春目的の〕勧誘や徘徊で女性が起訴された件数の方が2倍以上多かった。このことが意味しているのは、刑法上の制裁を受けるのは、女性を買う男性そのものよりも、圧倒的に、その男性によって買われる女性の側であるということだ。実際、2013~14年において、ピンプ行為、売春店経営、売春婦物色、売買春の広告による起訴件数をすべて合わせたよりも、勧誘と徘徊で起訴された件数の方が多かった。

 イギリス王立検察庁は正しくも売買春を女性に対する暴力と認識している。セックスにお金を払う男たちや、そのお金を懐に入れている売春店経営者たちは、消費者でもなければ実業家でもなく、犯罪者であり搾取者である。明日、活動家たちは、売春店と買春者の非犯罪化を支持したアムネスティの決定に抗議するグローバルな行動デーを展開する予定である。少なくともアムネスティとUNエイズは、自分たちがその政策の作成にあたって助言を求めた諸団体の問題に関してきちんと答えるべきだろう。しかし、何よりも私たちは、売買春を通じて搾取されている人々から処罰の重荷を取り除いて、それを本来の相手に、すなわち買春者に課すよう政府に求めなければならない。

出典:https://www.theguardian.com/commentisfree/2015/oct/22/pimp-amnesty-prostitution-policy-sex-trade-decriminalise-brothel-keepers

投稿者: appjp

ポルノ・買春問題研究会(APP研)の国際情報サイトの作成と更新を担当しています。

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Google フォト

Google アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

%s と連携中

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。