スペインでの北欧モデル型立法の制定に向け、国際アボリショニスト団体が共同声明

【解説】すでにこのサイトで紹介してきたように(テイナ・ビエン・アイメ「平等に向けた歴史的一歩――スペイン首相、売買春の廃絶を約束」(2021年12月10日))、社会労働党のサンチェス首相率いる左派中道政府は、北欧モデル型の反売買春法(アボリショニスト立法)の制定をめざしています。現在、この北欧モデル型立法はすでに法案として具体化され、国会に提出されています。この法案をめぐっては、与党の社会労働党(PSOE)と野党の保守中道政党である国民党(PP)とのあいだでおおむね合意がなされており、今年のクリスマスか来年の選挙までに成立する見込みとなっています。

 スペインは1995年以来、長年にわたって売買春合法の国であったため、ドイツやオランダなどと並んで「ヨーロッパの売春宿」と呼ばれてきました。同国では人身売買が隆盛を極め、若い男たちは女性を買うことを普通のことのように考えるようになり、世界中から買春客が押し寄せました(スペインの売買春状況については、APP研発行の『論文・資料集』第12号掲載の、アニー・ケリー&オフェリア・デ・パブロ「スペインにおける性的人身取引との闘い」を参照)。あまりにも多くの人身売買事件が起きたため、スペインのフェミニストや穏健派の社会主義者たち(世界中どこでもたいていそうだが、スペインでも急進左派はセックスワーク派)はこの状況を変えようと、長年の売買春合法化政策を転換して、北欧モデル型立法を実現しようと奮闘してきました。その長年の闘いが実って、スペインの社会労働党はこの政策を受け入れ、選挙公約にしました。こうしてついに、スペインで実際に北欧モデル型の法案が国会に提出され、今週水曜日から司法委員会で審議が始まるところまで来たのです。ヨーロッパの3大売買春国家の一つであったスペインが北欧モデル国に転換するなら、ドイツやオランダなど他の売買春国家でも転換が進むでしょう。

 この画期的な法案の成立を後押しするために、国際的なアボリショニスト団体、サバイバー団体が共同声明を出しましたので、その全訳を以下に紹介します。

私たち国際フェミニスト・サバイバー団体は、スペインにおける「あらゆる形態のピンプ行為を禁止する1995年の法律を改正する法案」を支持します

  この法案は今週水曜日から国会の司法委員会で審議されるが、これはスペインが男女平等と、女性・少女の性的搾取に反対する歴史的な一歩を、スペインと世界において実現する機会となるものだ。

 本法案が可決されれば、スペインは野心的なアボリショニスト政策を実施し、世界で最も古い抑圧に対する戦いの最前線に立つことができる。本法案は、4つの主要な柱に基づいてる。

 1.売春店の経営(187条の2)を含む、あらゆる形態のピンプ行為を犯罪化すること(187条)。これにより、ラジョンケラ(La Jonquera)〔スペイン最大の売春街がある都市〕の売春店などが廃止される。

 ・第187条 …… 営利を目的として、他人の売春を、たとえ本人の同意があったとしても、助長、促進、斡旋した者には、1年から3年の懲役および12ヵ月から24ヵ月の科料に処すものとする。

 ・第187条の2 ……営利を目的として、常習的に、公開されているか否かを問わず、財産、敷地、施設、その他の空間を利用して、他人の売春を、たとえ本人の同意があったとしても、助長、促進、斡旋した者は、本法第194条に定める閉鎖の場合を含め、2年から4年の懲役および18ヵ月から24ヵ月の科料に処するものとする。

 2.性的行為の購入の犯罪化(第187条の3)。金銭またはその他の経済的利益と引き換えに性的な性質の行為を得ることは、12ヵ月から24ヵ月(期間計算)の科料に処される。

 ・とくに買春される者が未成年である場合、または脆弱な状況にある場合、性的行為の買い手は、1年以上3年以下の懲役および24ヵ月以上48月以下の科料に処すものとする。

 3.売春をする者の非犯罪化(第187条の3)。売春状況の中にある者は、いかなる場合にも処罰されない。

 4.上述した第187条の2において規定される売春状況の中にある者は被害者としての地位にあるものと承認

 この被害者としての地位の承認により、性売買被害者は、2015年の被害者憲章法および2022年に成立した性的自由法の規定を含む一連の野心的な権利にアクセスすることができる。

 この権利一覧には、特に、経済的支援(積極的保障所得へのアクセス)、緊急医療支援、心理的支援、住宅への優先アクセス、情報を得る権利、職業的再統合プログラム、警察の保護、法的情報および支援、賠償および補償の権利、被害者の賠償基金へのアクセスなどが含まれている。

 「被害者の地位法」および性的自由法に基づく権利は、非正規滞在の外国人被害者にも適用される。

 売買春は、性差別、人種差別、階級的抑圧の複合にもとづくシステムである。男性が支配的な立場を利用して、こうした抑圧の複合性を利用して女性の身体にアクセスし、支配することができると感じているからこそ、存在している。

 今後、スペインは、フランス、スウェーデン、アイルランド、北アイルランド、ノルウェー、アイスランド、イスラエル、カナダなど、アボリショニスト政策を採用している国々と並んで、この歴史的不公正に対して「もうたくさんだ!」と言うことができるだろう。

 今やスペインが「#AboliciónProstituciónYa!」と言う番だ。

女性人身売買反対連合(CATW)

SPACEインターナショナル

CAPインターナショナル

ヨーロッパ女性ロビー(EWL)

ヨーロッパ移民女性ネットワーク

投稿者: appjp

ポルノ・買春問題研究会(APP研)の国際情報サイトの作成と更新を担当しています。

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