先月、ドイツの2人のアボリショニスト(サバイバーのサンドラ・ノラクさんと、トラウマ・セラピストのクラウス・インゲボルクさん)がメルケル首相と各州の首相たちに宛てて、コロナ危機後に売春店を再開するのを許可せず、それに代えて北欧モデルを導入することを訴える長文の書簡を出したという情報をお伝えしましたが、そうした活動が功を奏して、今週の月曜日、ドイツ連邦議会の16人の国会議員が、各州の首相に宛てて、コロナによる隔離措置を緩和ないし解除した後も売春店の再開を許可せず、その代わりに北欧モデルの導入を訴える書簡を送りました。
詳しくは、ドイツの雑誌『EMMA』に掲載された記事を参照してください。
ドイツでは、性産業を含む各業種の経営再開の決定に関して州が権限を持っているので、16の州の首相たちに宛てて、そうした書簡を送ったわけです。書簡を送った16人の連邦議員は、CDU(キリスト教民主同盟)とSPD(社会民主党)の大連合に属する男性議員8人、女性議員8人で構成され、その中には、CDU/CSUの議会グループの法政策スポークスウーマンであるエリザベート・ヴィンケルマイヤー=ベッカー、CDU女性連合の議長で連邦政府移民担当委員のアネット・ウィドマン=マウズ、連邦議会女性グループの議長を務めるイヴォンヌ・マグワス、ケルン大学健康疫学研究所教授で社会民主党の保険医療政策の専門家であるカール・ラウターバッハ、さらに、SPDの法政策担当スポークスマンであるヨハネス・フェヒナーと、労働組合活動家で離脱支援プロジェクト「シスターズ」の共同創設者であるレニ・ブレイマイヤーが含まれています。
ドイツの性産業は今回のコロナ危機ではかなりのダメージを受けているようで、ドイツ最大の売春店であったシュトゥットガルトの「パラダイス」(人身売買問題で、経営者が逮捕され有罪判決を受けた)はついに倒産の申請を出したそうです。コロナ危機のあいだ、売春の中の女性たちの多くは、売春店の中で生活することを余儀なくされ、売春業者によって管理された、プライバシーのない生活を強いられています。またその間にかかった費用は彼女たちの「借金」となり、封鎖解除後はいっそう厳しい搾取にさらされることになります。こうした状況に対する解答は、売春店の再開ではけっしてなく、彼女たちに公的な離脱支援とそのためのカウンセリング・医療・職業訓練・教育等々の手厚いサービスを提供することです。そして、ドイツのこれまでの売買春合法化政策を抜本的に改めて、業者と買春者を厳しく処罰する北欧モデル型の新しい法体系を導入することです。
ドイツは、2002年に売春合法化政策が確立されて以降、「ヨーロッパの売春宿」と呼ばれるほど性売買が隆盛をきわめ、東ヨーロッパ諸国やアジア諸国をはじめとする世界中から若い女性たちや少女が――その多くはだましや強制などの人身取引を通じて――ドイツに連れてこられて、売春を強いられています。
日本のリベラル派はドイツをあたかも理想的な国家であるかのように礼賛していますが、実際には、ドイツは世界に冠たる買春大国、人身売買大国であり、日本と同じく、成人男性の半分近く、大臣や国会議員から警察官に至るまでが、平然と若い女性たち(そのほとんどは外国出身)を買春しているのです。その実態の一端は、私たちの『論文・資料集』第Ⅱ期第2号で紹介したので、ぜひお読みください。
しかし、売買春合法化政策の象徴的存在であったドイツで北欧モデルが導入されたなら、世界の流れを大きく変えるでしょう。
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