アリーマリー・ダイアモンド「なぜ私は北欧モデルを支持するのか――ニュージーランド先住民サバイバーの証言」

アリーマリー・ダイアモンド

Nordic Model Now!, 2020年2月26日

【解題】以下の記事は、イギリスのアボリショニスト・サイト、Nordic Model Now! に今年の2月に掲載されたニュージーランドのサバイバー、アリーマリー・ダイアモンドさんの手記です。ダイアモンドさんはマオリ族で太平洋諸島の出身、ニュージーランドで育ち、その地で売買春へと引き入れられました。現在はオーストラリアに住んでいます。彼女が Nordic Model Now! に書いた記事は他にもあるので、いずれ少しずつ紹介する予定です。

 少し前に、記者から「なぜ売買春に関する北欧モデル(今は平等モデルとも呼ばれている)のための活動をしているのか?」と聞かれたことがある。それをきっかけに、どのようにして自分がこの立場になったのかを改めて考えてみた。

 2016年にメルボルンで開催された「世界最古の抑圧会議」で初めて自分の話をしたのがすべての始まりだった。会場の外では、派手な出で立ちの女性グループがプラカードを掲げていた。彼女たちは北欧モデルに抗議していた。これが、私がこの言葉を目にした最初だった。

 数日後、北欧モデルってなんですかと人に訊いてみた。正直言うと、そのとき何と言われたのかすら覚えていない。政治が怖かったし、関わりになることに興味がなかっただけかもしれない。自分の話をすることと、大義のために闘うことは別のことだった。

 北欧モデルとは何か、完全非犯罪化とは何かについて調べ始めたのは、ずっと後のことだった。〔抗議していた〕女性たちのあいだには怒りがみなぎっていたので、私はそれに完全に圧倒され、あらゆる方向に引っ張られるように感じた。私は人を喜ばせたいと思っていたので、長い間、自分が一番注目され、褒めてくれる人についていくだけだった。

 しかし、あることに気づいた。売買春は間違っている。売買春は暴力だ、と。私はずっと恥と恐怖を感じていた。自分は愛されていないと感じていた。自分が生きてきた人生のせいで自分が壊れたモノみたいに感じていた。それが自分の体、自分の選択だとずっと思ってきた。しかし最終的に気づいた。私が何年も前にした選択は自分のせいではなかった。自分は毎日レイプされてきたが、自分はそれより価値のある存在だった。売られたり買われたりするより価値のある存在だったと。

 他にどれだけ多くの女性たちが売買春以外の選択肢がないと思っていることだろう。どれだけ多くの女性たちが、感情的に、肉体的に、精神的に、ひどく傷ついていて、それが唯一の道だと思わされていることだろう。その時、私はさまざまなモデルを調べ、どこで自分の声を最も増幅させたいのかを考え始めた。

 ニュージーランドが完全非犯罪化という破滅的な道を歩んできたことを知り、私は自分の国の女性と子供たちのために声を上げようと決心した。ここは私の心がある場所であり、私の声があるべき場所だと決意した。

 人々や他の女性たちに感銘を与えることは、もはや私の関心の中心ではなかった。現在の私の中心は、正しいことのために闘うことだ。

 私は怒っている。女性が売り買いされることが人権であると女性たちですら考えていることへの怒りだ。お手軽な性的満足のために女性と子供を買ってもいいと思っている男たちがいて、彼らの手の中で、その女性と子供たちが死んでいっていることへの怒りだ。女性や子供たちが人身売買されていることへの怒りだ。ニュージーランドで奴隷制度が蔓延していること、とりわけ私たち先住民の女性や子供たちのあいだで蔓延していることへの怒りだ。

 私が最も怒っているのは、人々が自分たちのコミュニティで何が起こっているのかに気づかないでいること、そして知っていても何もしないでじっとしていることだ。

 北欧モデルはもちろん完璧ではない。しかし、私たちの目の前には2つのモデルしかないのだ。1つは、完全な非犯罪化で、売春を自ら「選択」した女性を保護するものだ。もう一つは北欧モデルで、他に選択肢がないと感じ、必死に脱出の道を探し求めている弱い立場の(vulnerable)女性たちを保護するものだ。毎晩空を見上げて、これが人生のすべてなのか、これが私にとってのすべてなのかと思い悩む女性たちのものだ。かつての私のようにだ。これらの女性が大半であり、そしてその大多数は有色人種の女性たちなのだ。

 売買春の中の女性たちの大半を占める最も弱い立場の人たちを、その大部分が先住民の女性や有色人種の女性である人々を守るべきではないのか?

 北欧モデルは4つの柱に基づいている。

1、買い手を処罰すること。

2、買春されている個人を非犯罪化すること。

3、性産業をやめるための支援とサービスを提供すること。

4、一般市民への啓発と教育。

 北欧モデルでは、女性が希望すれば性産業をやめるための離脱サービスを提供している。買い手は処罰対象になるとはいえ、通常は投獄されることはない。その代わりに、買い手は警告を受け、罰金を科され、時には性産業サバイバーから教育を受けるが、そのために支払ったお金は、女性が離脱するための支援システムを提供するサービスへと還元される。

 ドメスティック・バイオレンスのサバイバーには、すでに支援サービスが用意されている。性産業から抜け出そうとする女性にも同様のサービスが必要だ。トラウマ・カウンセリング、安全な家、教育、個人の発達、基本的な生活スキル、住宅などだ。

 私たちは今、ニュージーランドで起こっている荒廃を無視することはできない。最近、私はジャシンダ・アーダーン〔ニュージーランドの首相〕が子供の貧困率の低下を賞賛し、これは大きな前進であるとする記事を読んだ。しかし、私たちが理解しなければならないのは、ニュージーランドで今起こっている子供の性的人身売買は、多くの場合、貧困によって引き起こされていることだ。家族や親でさえも路上で子供たちを売って生計を立てており、多くの女性は、売春が、子どもたちを守る家を建て、食卓の上に食べ物を置き、体に服を着せる唯一の方法だと感じている。

 男たちは、お腹を空かせた母親や子供に60ドルでフェラチオさせることで、自分が彼女らの助けになっていると思っているかもしれない。しかし、本当に彼女らを助けたいのであれば、見返りを求めずにお金を渡したり、日用品の買い物に連れて行ってあげればいいではないか。

 現在、ニュージーランドでは、売買春は「他の仕事」と同じだと考えられている。そのため、〔売買春の中にいる〕子供たちや弱い立場にある女性たちは、気づかれずにいる。支援システムもない、離脱サービスもない、安全な家のための資金もない、誰も責任を問われていない。これでいいはずがない。

 ベラ・テパニア〔2019年12月に買春男に殺された被買春女性〕は売買春から脱け出そうとしていた。想像してみてほしい。もしニュージーランドに支援システムがあったら、彼女はまだ私たちや愛する人たちといっしょにいたかもしれない。性産業で命を落とした女性たちは、まだ家族や恋人といっしょにいたかもしれない。

 ニュージーランドは彼女たちを失望させ、家族を失望させた。彼女たちの人権はどこにあるのか? たった一つの失われた命でも多すぎる。これ以上失う前に、立ち上がって声を上げなければならない。私たちはみな声を上げる必要がある。  失われたすべての命を敬意をもって心に留めておこう。最も不利な立場にある女性たちに、彼女たちに声を与えよう。正しいことのために闘おう。北欧モデル、離脱サービスが必要なのです。コンドームやデンタルダム〔フェラチオ用の薄いゴム〕、「安全」ハンドブックを越えた真のサポートが必要なのだ。

出典:https://nordicmodelnow.org/2020/02/26/why-the-nordic-model-a-view-from-new-zealand/

投稿者: appjp

ポルノ・買春問題研究会(APP研)の国際情報サイトの作成と更新を担当しています。

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