アイルブ・コネリー「売買春は当事者から『すべてを奪う』」

【解説】以下の記事は、北欧モデル国の一つであるアイルランドにおける売買春の実態を調査したアイルランド国立大学ダブリン校(UCD)(3万人以上の学生を擁するアイルランド最大の大学)の報告書を報道した最近の記事です。北欧モデル立法が導入されたからといって一朝一夕に売買春が根絶されるわけではなく、それに向けた長期的な国家的・社会的プロジェクトが開始されるということでしかありません。その一環として、政府や公的な機関がきちんとした実態調査を行なって現状を把握し、当事者に必要な支援(離脱プログラムを含め)を提供しながら、人身売買業者や買春者を処罰するという息の長い取り組みが必要です。今回の調査と報告はその一環をなすものです。

アイルブ・コネリー

アイルランド放送協会(RTE)、2021年11月16日

 アイルランド国立大学ダブリン校(ユニバーシティ・カレッジ・ダブリン:UCD)の「性的搾取調査研究プログラム」が発表した報告書によると、「HSE(保険サービス・エグゼクティブ)」〔アイルランドの公的医療制度〕の「ウィメンズ・ヘルス・サービス」にアクセスする人のうち、売春に関与している人の94%は移民女性であるという。

 報告書『被害に立ち向かう』によると、移民女性の多くは英語が不自由で、移民としての地位が安定していないか、非正規移民である。「ウィメンズ・ヘルス・サービス」の利用者144人を対象とした2年間の調査によると、ほとんどの人にとって売春は「すべてを奪う」ものであり、最前線のサービスを受ける女性のあらゆる側面を支配している。

 HSEサービスの利用者のデータと聞き取り調査によると、女性たちは売春に関わることで、「性と生殖に関する健康」被害を持続的または反復的に経験している。報告書によると、複数の買い手によって女性の身体に繰り返し性的にアクセスされ、有害で危険な行為を要求されることがその原因となっている。

 また、女性の精神的な健康や福祉にも悪影響を及ぼしており、性産業に従事する女性の生活には、恐怖、不安、対処の困難さ、ストレス、うつ病などが頻繁に見られる。女性たちは、買い手のために、実際には感じていない性的欲求を感じている振りをしたり、嫌悪感や恐怖感を覚えるような買い手の要求に応えたり、我慢できないほどの肉体的・性的接触に耐えなければならならず、そうした否定的影響の積み重ねが、彼女たち自身の性生活、アイデンティティ、親密な関係、他者を信頼する能力などに悪影響を及ぼしていることが明らかになった。

 今回の調査では、サンプルの半数以上が16歳から24歳の間に初めて売春をしており、貧困と強制がアイルランドの性産業の主な原動力となっていることがわかった。大半の女性は売春店で売春をしており、路上売春をしていると答えた女性はわずか1名だった。

 このHSEサービスに参加している女性は、28種類もの幅広い「性と生殖に関する健康」問題を抱えている。検出された性感染症の中で最も多かったのは、HPV(ヒトパピローマウイルス)感染症とクラミジアだった。

 女性たちは、孤独感、孤立感、サポートの欠如を感じていると報告している。彼女たちには友人がおらず、多くの場合、国内に家族がいない。報告書によると、女性たちは、買春業者、ピンプ、人身売買業者などの加害者から、頻繁に深刻な身体的・性的暴力を受けている一方で、売買春から利得を得ている人々〔ピンプや業者〕は経済的な恩恵を十分に受けている。

 ウィメンズ・ヘルス・サービスに参加した女性の71%が、売春から抜け出したいという願望を2回以上表明し、売春以外の将来の計画を語っているが、多くの女性が性産業に囚われたままであると言う。

 かかりつけ医(GP)を持っている女性は12人(8.3%)しかおらず、メディカルカード〔アイルランド政府が発行する医療券で、無料ないし低額で医療サービスを受けることができる〕を持っているのはわずか3人だった。大多数の女性は、ダブリンにあるウィメンズ・ヘルス・サービスに依存している。報告書によると、HSE のウィメンズ・ヘルス・サービスが提供する売春婦の女性のための専門的な健康サービスの継続的な必要性は明らかであり、それをダブリン以外にも拡大すべきだとしている。

 報告書によると、売買春が精神面に与える深刻な影響を和らげるために、性的な面でのヘルスケアは、トラウマを考慮した精神的な健康と福祉のサポートによって補完されなければならない。

 報告書は、このグループの女性たちに対して総合的な離脱支援〔売買春から脱け出すための多面的な支援〕を提供するよう勧告している。また、性的搾取を目的とした人身売買の被害者の特定と支援のいっそうの改善が必要であるとしている。また、売買春の中の女性たちが感じている圧倒的な孤独感を解消するために、他の形態の支援、とくにピアサポートが必要だと提案している。

出典:https://www.rte.ie/news/ireland/2021/1116/1260296-prostitution/

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投稿者: appjp

ポルノ・買春問題研究会(APP研)の国際情報サイトの作成と更新を担当しています。

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