「私たちは花ではない、火だ」――韓国女性運動が示すラディカル・フェミニズムの可能性

【解説】以下の論考は、カナダのフェミニスト・オンライン雑誌『フェミニスト・カレント』2020年6月15日号に掲載されたものです(一部省略)。韓国のフェミニスト運動の戦闘性と先進性、その驚くほどの大衆的広がりについてはすでに、APP研の『論文・資料集』第12号や、ポルノ・買春問題研究会設立20周年記念のパンフレット『ポルノ被害と売買春の根絶をめざして』でも紹介してきましたが、ここでも改めて紹介します。

ジェン・アイザクソン&キム・テギョン

『フェミニスト・カレント』2020年6月15日

 ジェン(ジェニファー)・アイザクソン(Jen Izaakson)は昨秋、研究助成金を得た後、ケンブリッジ大学のワーキンググループの一員としてラディカル・フェミニスト運動の台頭を記録するため韓国を訪れ、40人以上の女性活動家にインタビューした。この記事はジェンと現在ベルリンで勉強しているソウル出身の韓国人ラディカル・フェミニスト、キム・テギョン(Tae Kyung Kim)との共著によるもの。

 韓国におけるフェミニスト運動の躍進のニュースは西側のメディアにも届いている。しかし、この躍進の原因についてはまだまだ取材不足だ。欧米の主流メディアはしばしば私たち(欧米の女性運動)の功績の影響が見て取れる側面ばかりを扱い、韓国人女性特有の功績や韓国の運動の最もラディカルな側面を見え難くしている。そこで、ジェンは昨年9月に、学術研究の一環として韓国のラディカル・フェミニスト運動に携わる女性40人以上にインタビューした。その調査結果がこの記事でまとめられている。本稿では、扱うことのできなかった情報は多いが、この運動がどのように発展してきたのか――その歴史的文脈、どのような戦術や戦略、政治形成が韓国のラディカル・フェミニスト運動を構成しているのか――について、最もわかりやすく示す資料を提示するよう努めた。

  男性からの暴力が女性を政治化しラディカルにする

 2016年、悪名高い「江南事件」をきっかけに女性たちは声を上げた。キム・ソンミンという34歳の男性が、23歳の女性(彼女の氏名は今も公開が禁止されている)をカラオケバー内のジェンダーニュートラル・トイレで刺殺したのだ。数人の男性利用者を見送った後、被害者の女性が入ってくるまでソンミンはトイレ内で待機していた。「女たちはいつも自分を無視した。だからやったんだ」と、ソンミンは法廷で犯行の動機を説明した。これは、暴力的な殺人を犯した他のインセル(非自発的独身者)たちが語ったものと同じだった。しかし、キム・ソンミン自身の証言にもかかわらず、政府当局はソンミンの犯行がミソジニー的な動機にもとづくものであることをはっきりと否定した。

 この殺人事件に対して、女性たちは江南駅外の通りや瑞草洞周辺地域に抗議のために押し寄せた。当時、この抗議に参加した女性たちの多くは自らをフェミニストだとは考えていなかった。しかし、この殺人事件の性質とミソジニー的な動機が彼女たちを政治化したのである。

 2018年には、「モルカ(molka)」(洗面所や更衣室で女性を盗撮、あるいは公共の場で女性のスカートの中を盗撮すること)という問題が韓国に広がった。私たちがインタビューした人々によると、韓国人男性には直接路上で女性にセクハラをする大胆さがないため、より「卑怯な」方法で女性に性的にアクセスしようとするから、このような問題が起きている部分があるそうだ。韓国にはこのような盗撮行為を取り締まる法律はあるが、警察がそれらを行使することはほとんどない。こうした状況が転換点に至ったのは、若いアートスクールの女子学生が男性モデルのヌードの写真を撮影した罪で起訴された時だ。私がインタビューした女性たちによれば、その男性モデルは裸のまま教室を出て行くのが常態だったので、学生たちは(嫌でも)彼の性器を見なければならなかった。ついに一人の女子学生が教室での男性の姿を写真に撮影し、ネット上に投稿して彼の行動を批判した。その女子学生は逮捕され、裁判にかけられて収監された。さらに男性に謝罪することを余儀なくされたのだ。公の場で性器をさらしている画像によって「心理的ダメージ」を負ったとその男性は語った。その女性は当初18000ユーロ相当の罰金を科せられたが、あの露出狂の男は女子学生を刑務所に送るように裁判所に要求し、彼女は10ヵ月の懲役に科せられた。

 ほとんど何のお咎めもなしに男性が盗撮できている現状と合わせて、この事件はモルカ抗議の嵐を巻き起こした。盗撮を取り締まる法律が男性ではなく女性に対して適用されたことに激怒した何十万人もの(主に若い)女性たちが結集した。今日まで、のべ36万人もの女性たちが盗撮反対の抗議行動に参加した。これらのデモでは、高度に組織された行進が行われ、チラシに印刷された政治的スローガンが群衆に配布された。ステージでのスピーチは景気づけのスローガンの訴えで始まり、そこに抗議者が加わり、それが最高潮にたちした時には鬨の声のように聞こえる。ある集会では女性がステージに上がって断髪式を行ない、また別の集会ではゴミ袋に化粧品のコレクションを投げ入れる儀式が催された。

  女性のみの組織化の必要性

 江南駅での殺人とモルカへの抗議行動という現実世界での出来事は、極めて重要なネット上での出来事を背景に実現したものだ。2015年以降、ネット上では男女間の激しい論争が展開されてきた。特に大きな論争が勃発したのは、MERS(中東呼吸器症候群)が韓国に到達した時だ。全国に数百万のユーザーがいる人気インターネットフォーラムDC Inside Galleryで、男性ユーザーたちがある韓国人女性を第一号患者だと名指しするスレッドを立ち上げ、彼女は売春婦として中東を訪れ、MERSに感染して帰国したと主張した。さらに他の男性たちも加わり「韓国女は死ぬべきだ」「韓国女は無駄遣いをする」「韓国女は馬鹿だからこのウイルスを広めている」などとコメントした。これを受けて女性たちはフォーラムで独自のスレッドを始め、この明らかなミソジニーに反論した。結局、実際にはMERSは男性によって韓国に持ち込まれたことが発覚したので、自分たちの正しさが証明されたと女性たちは男性の掲示板に書き込んだ。しかし、このミソジニーが忘れられることはなかった。

 この事件に呼応して、女性たちはメガリア――Redditに似てはいるが、ミソジニーの無いフォーラム――を作った。メガリアは女性同士の友愛を育むためのオンライン・スペースであり、その根幹には友情と皮肉のきいたユーモアがある。しかし、メガリアには男性ユーザーもいた。サイト管理者の多くもゲイ男性でした。これらの男性たちは、初めは女性たちの経験したミソジニーに同情的だったが、会話のスレッドがゲイ男性のミソジニーやゲイ男性文化(ドラァグなど)について議論を始めた途端、女性たちのコメントを削除し始めた。

 女性の発言が厳しく管理されるというのはFacebook、Mumsnet、Twitterの多くのフェミニストにとっては驚くことではないだろう。自分たちの生の現実や自分たちが見て来たミソジニーについて自由で公正な議論をするには、男性の管理者なしに自分たちだけで議論を管理するスペースが必要だと女性たちは気づいた。この経験は女性のみを組織化することの必要性を証明した。女性たちは大挙してメガリアを離れ始め、2016年1月には何千人もの女性がWomad(ウマド)と呼ばれるオンライン・フォーラムに登録した。私がインタビューした女性たちによると、これは「ラディカル・レズビアン・フェミニスト」の場だそうだ。

 レズビアニズムが驚くほど普及しているという事実は、韓国の運動において最も顕著かつ重要な側面の一つだ。私が行なった40人以上のインタビューでは、すべてのフェミニストがレズビアンを名乗った。

 韓国ではラディカル・フェミニズムとレズビアン・フェミニズムは強く結びついており、「4비」/「4B」運動を生み出した(「4비」は英語話者には大体「4B」と聞こえる)。4Bはラディカル・フェミニスト運動を方向づけ、家父長制を破壊し男性から離れて女性がより安全な生活を送るためのガイドになる4つのルールに基づいている。そのルールとは、大まかに言って、男性と結婚しない、男性とデートしない、男性とセックスしない、そして、妊娠しないというものだ。今日では4B運動には5万人ものフォロワーがいると推定されている。

 2016年の調査によると、韓国の女性人口の50%は結婚の必要性を感じていない。結婚とは女性にとっては不公平な取引だと女性たちは気がついたのだ。そしてそれが政府に行動を促すことになった。人口の平均年齢の上昇と出生率の低下への懸念に対応するために、韓国政府は異性愛の素晴らしさを訴えるメロドラマをいくつも委託制作させた。結婚と出産を奨励するために、Heart Signal, We Got Married, Same Bed, Different Dreams、The Return of Supermanといったリアリティ番組の制作も委託した。これらのシリーズでは、異性愛者カップルが子供を望み、次に妊娠、出産という展開をたどる。各過程は細かく記録され、肯定的に語られる。

  脱コルセット

 2015~16年から2017~18年の間に、美容製品と美容整形への韓国人女性の支出額は535億ウォンも減少し、代わりに自動車への支出が増加した。韓国人女性は客体化よりも自立を選択したのだ。このような、美容文化の女性による拒絶は、4B運動と「脱コルセット」によって拍車がかかった。シーラ・ジェフリーズの『Beauty and Misogyny』(韓国語タイトルは『コルセット――美とミソジニー』)に触発されたこの運動は、現代の「コルセット」――ムダ毛処理、化粧、ハイヒール、美容整形、長い髪、食事制限といった美容行為――からの脱却を目指している。韓国には巨大な美容整形産業があり、女性に最も人気があるのは「二重まぶた」手術だ。これはまぶたをより「西洋人っぽく」見せるために行なわれる手術だ。美白と同様、この利益重視の慣習はレイシズムによって特徴づけられており、術後感染症、まぶたの喪失、視力障碍、さらには失明にすらつながることがある。

 私がインタビューした人たちの多くが、「去年の1月に脱コルセットしました」「もう2年間脱コルセットをしています」と、この運動が彼女たちのラディカル・フェミニズムへの道のりの出発点であると語った。韓国人女性にとって「バックラッシュ」という用語は「脱コルセット」運動と結びついている。この用語は(欧米で使われるような)フェミニズムに対する外部からのバックラッシュという意味ではなく、個人的なバックラッシュ、つまり、女性個人が(脱コルセットを諦めて)女らしさに逆戻りしてしまうことを意味している。「親友と私は2017年に脱コルセットしたのですが、その後家族からのプレッシャーに負けて彼女はバックラッシュを経験し、再び化粧をするようになりました」とある女性は語った。

 この運動に普及しているスローガンは、女性の能力と決断力を中心に据える傾向がある。私がインタビューしたグループは「てっぺんで会おう」「大志を持て」「私たちはお互いに勇気を与え合っている」と私へのカードに書いてくれた。こういったスローガンは活動家のソーシャルメディアのプロフィール上でよく見かけるので、すぐにわかった。行動を呼びかけるために繰り返されるフレーズで有名なものに「私でなければ誰が? 今でなければいつ?」というものがある。このスローガンはユダヤ人の歴史において有名なバビロニア人、ヒレルの言葉を拝借して意訳したものだ。

  女性中心文化の歴史的基盤

 このように韓国でフェミニズムが発展してきたのには、歴史的かつ文化的な理由がある。私が話を聞いた女性たちによれば、韓国では歴史的に、西洋のような「騎士道」文化(男性の礼節と女性の社会的保護に重きを置く行動規範)がなかった。これは、男性支配の口実が欧米よりもはるかに少なかったことを意味する。1950年代初頭、朝鮮戦争を戦った兵士たちは、安全な道を確認するために女性たちに地雷の上を歩かせ、彼女たちの身体でもって爆発する爆弾を処理した。この行為に関して彼らに歴史的な恥の意識はない。私が「タイタニック号事件が韓国で起きていたら、誰が救命ボートに乗るかを決める上での『女性と子供優先』というポリシーは見られるでしょうか?」と尋ねたら、どっという笑い声と強い否定が返ってきた。インタビューした相手の一人は、騎士道の不在について、家父長制がどのように機能するかという点から言うと、男性が女性に対してあまり親切に振舞わなくてよいということだと語った。しかし、これは同時に、結婚式を挙げる前から男性の方は2人の結婚生活がどれほど不公平なものになるかについて隠し立てしないということでもあるので、女性側は結婚の誘惑に乗りにくいということでもある。これは欧米の男性と比べて韓国人男性が女性に対してより抑圧的に振舞うということではない。ただ、もっとその振る舞いがわかりやすく、悪びれないというだけである。男性による抑圧が欧米より隠されていないために、韓国人女性は結婚や家庭生活の落とし穴をより容易に見抜けるのだと言ったインタビュー対象者もいた。韓国では、結婚を選択することが女性にとって何を意味するのかが、はるかに明確なのだと。

 インタビューした別の女性によると、歴史的に女性は田畑で働くものとされてきたため(しばしば男性よりも働いていた)、他の地域と比べ、男性は物質的な富の提供者としてはそれほど高く評価されてこなかった。女性は家庭内でも家庭外でも働いてきた。したがって、夫を持つことの経済的利益は――その夫が職に就いていたとしても――伝統的に女性が働くことを許されていなかった他の社会よりも、あるいは雇用市場へのアクセスが制限されていた他の社会よりも、ずっと少なかった。歴史的に、韓国には非常に厳格な階級制度が存在し、女性には階級外で結婚する機会がなかった。そのため、他国の女性のように、結婚を通じてより多くの物質的富にアクセスすることはできなかった。そういった利点がなかったために、韓国では女性が結婚を熱望する理由が(他国と比べて)一つ少なかったのだ。こういった歴史的な諸条件が合わさって、女性が結婚を拒否するのが一般的であるという(結婚するよりもしない方が明らかに得なので)、韓国特有の性の政治が生まれたのだという。

 韓国でラディカルな女性運動が成功するのを可能にしたもう一つの理由は、文字通り女性専用のスペースがあったことだ。前世紀の間に全国に女子大学が設立され、今ではほとんどの都市に女性専用施設が存在する(男性講師がいる場合もあれば、他の大学の男子学生がキャンパスで一定期間コースを受講できることもあるが、すべての男子学生には夜間外出禁止時間が設けられている)。学生自治会の建物内には男性教授や学生の男性親族は入場が許可されていない。これらは24時間、女性専用ゾーンなのだ。

 一部の女子大学は、「女たち、高級ハンドバッグを捨てろ!」と書かれたプラカードを掲げた男性権利活動家(Men’s Rights Activists、MRAs)から抗議を受けている。韓国ではどうやらフェミニズムの発展と男性の間には距離があったらしく、男性の中にはフェミニストが何を要求しているのかよく知らない人もいる。皮肉なことに、MRAが女性に対して女性用商品を消費しないように呼びかけているのだ。一方で、ラディカル・フェミニストの運動は、性差別的な広告を使用する企業のボイコットを呼びかけ、女性のお金が女性のポケットに入るようにするために、女性所有のレストランのみで食事をしたり、女性所有のバーで飲んだり、女性所有の店で買い物をすることを勧めている。

 女子大学は、未婚女性が男性と交流するのは不適切だというキリスト教的な思想から生まれたが、同時にフェミニズムが繫栄するための豊かな土壌を提供した。これらの大学のキャンパスの多くは、女性だけが頻繁に利用する通りに囲まれ、そのような通りにあるお店やカフェの客のほとんどは女性である。このような文化的規範の結果、ほとんどの都市には少なくとも一軒、あるいは数軒の女性専用バーが存在する(韓国はまだジェンダー・アイデンティティ政治に取り込まれていないので、正真正銘、女性専用だ)。

  周縁化が政治的な行動を誘発する

 文化や政治の違いにもかかわらず、4B運動とラディカル・フェミニスト思想は過去5年間に韓国全土に広がり、さまざまな町や都市に定着した。

 韓国で4番目に大きな都市である大邱(テグ)は、首都ソウルとは対照的に最も保守的な都市であり、性別選択的中絶のせいで女性は7人中3人だけだ。大邱でどれほど男の子が切望されているかというと、もしある家庭に娘が続けて2人生まれたら、下の子にはしばしば「息子を望む」「次は男の子を」といった名前が付けられるほどなのだ。男性が女性より倍以上多いという状況では、性政治もそれに応じたものになる。大邱在住の女性によると、ソウルの女性たちはDVを警察に通報するが、大邱の女性たちは警察が加害者の味方に付き、あまつさえ暴力を振るってくるのではないかと恐れている。

 にもかかわらず、大邱の女性たちは断固としている。ほぼ確実に失業につながるにもかかわらず、彼女たちは化粧することを拒否している。大邱は隣の釜山や北のソウルよりも貧しい都市だ。しかし、大邱のフェミニストたちは、失業が女らしさを拒否した結果であるとみなして、組織化を通じて失業の問題に取り組んでいる。彼女たちは女性「カルテル」を組織し、リソースを出し合ったり、安価な住宅で共同生活を営んだり、新たな女性メンバーを獲得するために路上キャンペーンを行なったりしている。こういった「カルテル」は組織化されたグループだが、同時に柔軟でオープンな構造を持ち合わせ、アウトリーチに焦点を合わせたものでもある。これは欧米のラディカル・フェミニストの傾向――友人/恋人間の小さなグループを通したプライベート・ネットワークとしていっしょに活動することで盛り上がる傾向――とは対照的だ。大邱の女性たちは主に政党連合を組織して、新メンバーの公募やキャンペーンに携わっている。

 韓国の男女賃金格差はすべてのOECD諸国(GDPを基準にして最も豊かな37ヵ国)で最も大きく、女性の平均年収は男性の3分の1程度だ。欧米フェミニストたちは、仕事も資産も協力的な家族も持っていて、女性的な慣習に従わないことで直接的な差別を受けることもないが、それでも経済的不安と報復を恐れてラディカル・フェミニストであることをオープンにできないと語るが、大邱の女性たち――収入は不安定で、はるかに男性優位な社会で生きている女性たち――はラディカル・フェミニストであることを堂々と貫いている。大邱でフェミニストと出会った経験は、社会的および経済的不安はフェミニスト的な問題について意欲的に発言することの、何の妨げにもならないことを私に強く印象づけた。欧米の「ラディカル・フェミニスト」は、経済的に大邱の女性たちよりはるかに恵まれた地位にいて、それゆえに失うものがより多いために(職業、世間体、地位、お金)、ネット上で匿名のままでい続け、公的生活では沈黙していることを選ぶのかもしれない。

 韓国の現在の法律では、女性は男性の親族、または恋人/夫/パートナーの同意がある場合のみ中絶を受けることができる。もし女性が男性からの許可なしに中絶をした場合には(たとえば海外で中絶手術を受けたり、男性の友人に恋人の振りをしてもらったりして)、裁判にかけられ、懲役または2000ドル相当の罰金が科せられる。この法律を変えるためにフェミニストは懸命に闘ってきた。そして今年の4月、韓国の憲法裁判所は中絶を犯罪とする法律は違憲だと判断した。裁判所は2020年の終わりまでにこの新法を施行するように議会に要請した。フェミニスト運動の明らかな勝利だ。

 2020年2月には女性党が結成され、3月までに8000人のメンバーを獲得した。現在は1万人に増えている。この政党はすべての世代の関心を代表することを目指しているので、異なる年代(10代、20代、30代、40代、そして50代)から5人の代表者を選んでいる。女性党は先の総選挙で20万票以上を獲得したが、議席を得ることはできなかった。しかし、女性党はとくに若い女性たちから多大な支持を得ている(欧米とは異なり、若い女性がラディカル・フェミニズムの最大の支持層なのだ)。理論的には、推定6万人の少女たちが、もし彼女たちが18歳未満でなければ、女性党に投票した可能性があることが指摘されている。

  言葉を変えることは文化を変える

 近年のフェミニストの躍進に対して、この新しいフェミニスト運動に対抗するために韓国の男性権利活動家は戦術を変えてきた。自分たちは単に「平等」を求めているだけで、ラディカル・フェミニストたちが言うような「暴力的な」排除や偏見などを求めていないのだと主張し始めた。このようなリベラルなレトリックの採用という戦術は、フェミニズムが女性を優先させることに反対する欧米のトランス活動家のそれと驚くほど似ている。韓国の男性は比較的組織化されており、時に行動を起こす。MRAのサイトを始めたジェギという男性は、フェミニズムによって男性が陥った苦境を表現するために橋から飛び降り、誤って水面下のスパイクに肛門から串刺しになって死んでしまった。それ以来ジェギは男性の自殺を意味する動詞として使われるようになった。フェミニストがMRAに「ジェギしろ」という時には、「失せろ、そして死ね」を意味している。

 きつく聞こえるかもしれないが、これは韓国語に特有の言葉の逆転と言葉遊びを使った「ミラーリング」の一例なのだ。ネット上や現実で女性が男性の手によって受ける暴言や肉体的な暴力に対するダイレクトな反応として、「ジェギする」のような動詞が生み出されたのだ。

 韓国語には100万語以上の単語があり、その語彙数は英語の2倍以上である。韓国語の文法では新しい単語を作るのが容易であり、そのため言語がどのように女性の抑圧に使われているかを白日の下にさらす。韓国語で「親」という単語は「부모님」(bu-mo-nim)だ。「bu」は父親、「mo」は母親を意味し、男性の方が重要視されるために父親が先に置かれている。韓国のフェミニストは「모부님」(mo-bu-nim)と、順番を変えて「母親」が先に来るようにした用語を代わりに使い始めた。韓国語で「ベビーカー」という用語は「유모차」(yu-mo-cha)だ。「yu」は子供、「mo」は母親、「cha」は車椅子を意味し、子供の世話は母親の役割だというメッセージを伝えている。フェミニストはこの単語を「유아차」(yu-ah-cha)に変えた。「yu-ah」は小さな子供を意味する。つまり、「母親」という単語は取り除かれて、「子供の車椅子」を意味するようになった(これはブリティッシュ英語のpramと大体同じような意味だ)。韓国語ではこのように意味を変えるような単語の修正が可能なのだ。

 女性のミラーリングの例には他にも「6.9」(文字通り6.9という数字)という用語がある。これは身体のサイズによって女性を評価する文化に対抗したものだ。「6.9」は韓国人男性の陰茎の平均的長さ(6.9㎝)を指す。ソーシャルメディアのプロフィールや男性との議論でこの用語を使うことで、男性が女性の胸や他の身体の部位のサイズについて話す時に女性が受ける辱めと同様の辱めを男性にも受けさせ、さらには、ペニスのおかげで男性が自分たちには特別な力があると信じているという事実を揶揄しているのだ。

 残念なことに、男性が女性の親族のヌード写真を共有してソーシャル・キャッシュや「いいね」を稼ぐILBEのような男性オンライン・コミュニティのせいで、新たに女性蔑視的な言葉が増えている。「干物みたいに味を良くするために女は3日おきに殴られるべきだ」「ヴァギナの中に電球を入れて壊せ」などといった表現をユーザーが思いつき、その後そういった表現が日常会話にも浸透してきた。

 こういった表現は韓国ではありきたりなものだとみなされている。それゆえ、若い韓国人フェミニストたちはこういった表現に対応して、元は性差別的な用語を再定義し、新しい言葉を作り出してきた。

 韓国のラディカル・フェミニストたちは、「女らしい」という言葉を、強く、たくましく、野心的な女性を意味するように戦略的に用いた。さらには「男らしい」が嫉妬深く、薄っぺらで、子供っぽく、自らを飾り立てたがるような性質を示唆するよう再定義した。知らないうちにどれほど多くの性差別的な用語を私たちが日常的に使っているのかをミラーリングは気づかせてくれる。そして同時に、女性に対するサディスティックな表現への強い忌避感を生み出し、ユーモアを通じてそういった表現の効果を反転させる。「女らしさ」が再定義された今、韓国人女性は自分自身の願望を実現するために自己啓発に取り組み、強く優秀になるために努力している。ミラーリングとは、女性が言語を使って男性からコントロールを奪い取る手段なのだ。

  欧米にとってのモデル

 韓国のフェミニスト運動は、欧米と比較してとりわけミソジニスト的な状況から発展してきた。そうした状況が政治的組織化にとってはより好都合な条件であったこと、そしてそれがラディカルな行動を必要かつ実行可能とする状況を作り出した。これらのユニークで、同時に矛盾した諸事情が、女性たちがラディカルに行動することが喫緊かつ可能であるという社会的な状況を生み出したのである。

 韓国フェミニスト運動の内部に完全な意見の一致というものは存在しない。しかし、欧米と何が違うかといえば、それは、ネット上だけでなく現実でも、意見の相違が率直に議論されていることだ。ダイレクトな議論は、破壊的な力を持った、何としても避けるべきであるようなものではなく、政治において必要なものだとみなされている。このように真に盛んな運動があるおかげで、韓国人女性の間ではより多くが共有され、より協力的な関係が築かれているのである。

 集団として組織化する能力、政治、創造力、創意工夫の才を重要視すること、そして、おそらく最も大切なことだが、街頭政治を実践することなど、欧米の女性たちは韓国の姉妹たちから多くを学ぶことができるだろう。

出典:https://www.feministcurrent.com/2020/06/15/the-south-korean-womens-movement-we-are-not-flowers-we-are-a-fire/

投稿者: appjp

ポルノ・買春問題研究会(APP研)の国際情報サイトの作成と更新を担当しています。

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