【解説】昨年の６月29日の投稿で、ハワイ州が刑法を改正して、売買春を商業的性搾取と規定しなおして、買春されている人々を非犯罪化し、買い手と業者を犯罪化するという、北欧モデルに沿った改革を行ないました。その投稿にも書いたように、それはあくまでも刑法改正なので、北欧モデルのもう一つの柱である被買春者への離脱サービス、さまざまな総合法的支援の提供は今後の課題でした。しかし、今年の国際女性デーにあたる３月８日、ハワイ州の上院は、この総合支援を定めた法案を可決しました。その支援の中には、売買春からの脱出をめざす人に、月額2000ドル（約23万円）を最長１年間支給するという規定が盛り込まれています。以下、この法案について報じたアンドレア・ノーブルさんの記事を翻訳紹介します。
アンドレア・ノーブル
4W, 2022年3月9日
国際女性デーの2022年3月8日、ハワイ州上院は、売春をやめた女性に月収を保証する法案が可決されたと発表した。発表したのは、ハワイ州「女性の地位委員会」の事務局長であるカーラ・ジャボラ・キャロラスのツイッターだ。「これは米国『内』では歴史的第一号だ」とカーラはツイッターに書き込んだ――「私たちは、平等主義の社会をダメにした家父長制を解体するために戦わなければならない！」。
この法案は最長1年間、毎月2000ドルの基本所得を提供すると定めたもので、2022年1月26日に州議会で提案され、州の保健福祉省の管轄となる。有資格者には、「性的人身売買の被害者と確認された人、または性売買からの離脱をめざす人」が含まれる予定だ。
この動きは、北欧モデルの導入に向けたキャンペーンを展開している女性団体、すなわち、売買春を女性抑圧の一形態とみなしてその廃絶を求めて闘っている女性団体から歓迎されている。北欧モデルのアプローチでは、買春されているすべての人はもはや犯罪者とされてはいけないし、性産業からの離脱を支援するサービスを提供されなければならない。また、北欧モデルは、セックスのために人を買うことを犯罪とし、「性的人身売買を促す需要」を減らすことを目的としている。
「私たちは人々の行動を変えたいのです。そして、その中にいる人たちには、その外で新しい人生を歩むためのサポートを提供したいのです」とカーラは語る。
売買春の中にいる女性たちが脱け出すためにとるべき対策のうち、「北欧モデル」では、「無条件のサービス提供」と「被害軽減カバー」に加えて、「離脱支援」を提供することを目指している。そこには、「住居、法律相談、依存症サービス、長期的な感情的・心理的サポート、教育・訓練、育児」も含まれる。
アメリカにはまだ北欧モデルを採用している州はないとはいえ、ハワイ州上院で可決された法案は、北欧モデルが掲げる離脱支援サービスに向けた重要な動きと言えるだろう。この月額支給は、家父長制社会の中で女性や少女が構造的な困窮状態に置かれていることに対する歴史的な損害賠償として理解することができるかもしれない。「売春をやめたい人はすぐにやめられるようにすべきだということには、誰もが同意できることです」とカーラはメディアに語っている。
同法案は、「アメリカの主流フェミニズムは、売春をする権利に焦点を合わせてきた」と述べている。
「ハワイ先住民の女性、有色人種の女性、性的マイノリティは、裕福で大卒の女性や白人の女性と同じように、性売買から抜け出す権利を持つに値する。売買春から離脱する権利は、性産業に従事するほとんどの人々にとって意味ある形で存在するとは言えない」。
同法案の起草者たちは、「家父長制から離れる権利は、女性に最も否定されている権利の一つである」と付け加えている。
ハワイ州「女性の地位委員会」は、女性や少女に関する主要な政策コンサルタントとしての役割を担う、州全体のフェミニスト政府機関である。3月8日、ハワイ州上院はそのツイッターアカウントを国際女性デーに充て、上院に属する10人の女性全員を祝福した。また、公立学校の教師が生徒から240ページもの証言を集めて証拠として提出したことから始まった、ハワイの公立学校での生理的貧困をなくすための法案も、３年間の闘いの末に上院で可決されたと発表している。
北欧モデルは、「買春処罰法」、あるいは「スウェーデンモデル」「アボリショニスト・モデル」「平等モデル」とも呼ばれ、すでにスウェーデン、ノルウェー、アイスランド、北アイルランド、カナダ、フランス、アイルランド共和国、イスラエルで実施されている。
出典：https://4w.pub/hawaii-monthly-income/
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