アナ・フィッシャー「なぜ労働組合は北欧モデルを支持するべきなのか」

【解説】以下の論稿は、ノルディック・モデル・ナウ!のアナ・フィッシャーさんがイギリス共産党の機関紙『モーニング・スター』に書いた最新エッセイです。本文にあるように、昨今、イギリスの左派と労働組合は急速にセックスワーク論へと流れており、女性の権利を踏みにじる立場に立ちつつあります。この傾向についてはすでに、このサイトでもいくつかの記事を通じて告発していますが、本稿はその最新のものです。

アナ・フィッシャー

『モーニング・スター』2022年6月1日

 今月末、ユニゾン〔イギリスの大労組の一つ〕の全国代表者会議で、ある決議が討議と投票にかけられることになっている。ユニゾンは売買春政策の「北欧モデル」を長きにわたって支持してきたのだが、北欧モデルが「セックスワーカー」のリスクを増大させるという理由で、その政策を終了させ、代わりに、はるかに安全であると主張されているニュージーランド・モデルを支持することをめざすという決議だ。

 ニュージーランドで実施されているような「セックスワークの非犯罪化」を求める同様の決議や提案が、ここ数年、さまざまな労働組合や労働党支部で多数可決されている。これらの決議はほとんどの場合、「セックスワークの非犯罪化」(別名「完全非犯罪化」)が、セックスを売る者だけでなく、売春店経営者、買春者、ピンプ(「マネージャー」と言い換えられる)を含むすべての関係者を非犯罪化するものであることをはっきり明示していない。

 通常、議論は非常に短く、その場を支配しているのは、北欧モデルやそれがいかに「機能しない」か、それがいかに「セックスワーカーに対する暴力を増大させ」、「セックスワーカーが搾取されやすくなる」という恐怖物語である。これらの主張はこれまでさんざん繰り返されているが、厳密な検証にとうてい耐えない代物だ。また、ニュージーランドの完全非犯罪化は成功しており、ドイツで大失敗した合法化されたシステムとはまったく違うという主張もそうだ。実際、これとは反対の証拠はたくさんある。

 もちろん、労働組合員たちは女性やその他の疎外された人々が危険にさらされることを望んでいないだろうから、これらの決議に賛成することへと押しやるかなりの圧力が存在する。そして、それに反対する人々を右翼だの、反セックスの堅物だの、あるいはその類の連中だとして退けられる可能性が高い。

 しかし、本当にそれでいいのだろうか? これらの決議は、売春は普通の仕事であり、したがって非犯罪化され、他の仕事と同様に扱われる必要があるという主張によって支えられている。しかし、これは本当だろうか?

 売春は本当にウェイトレスや保育と大差ないのだろうか? 「合意の上でのセックスワーク」は、本当に自由で同等な力を持った成人が結び、通常の社会的慣行によって媒介されたビジネス関係なのだろうか? セックスを購入する男性に関する研究は、そうではないことを示唆している。

 ロンドンにおいて買春男性103人を対象にした調査では、27パーセントが「いったんお金を払えば、自分がしたいどんな行為もする権利がある」と考えていると答えた。また、45パーセントが、「女性には売春行為中にはほとんど何の権利もない」と考えており、この調査では、売買春を肯定している男性と、さまざまなレイプ神話――「女性の言うノーは、本当はイエスの意味だ」とか、「挑発的な服を着ている女性はレイプされたがっている」など――を受け入れる男性との間に高い相関関係があることが明らかになっている。

 他の研究でも同様の結果が出ている。セックスを買う男性と買わない男性を比較したアメリカの研究では、セックスを買う男性の方が、性的に攻撃的でレイプ願望が強いという結果が出ている。

 もしこれらの結果が研究者の偏見によるものだと思うなら、男たちが買春した女性についてネット掲示板に書き込んだレビューを読むといいだろう。これらの書き込みは、上の研究結果を確認するものであるというだけでなく、さらにそれ以上のものを示している。以下はその例だ。

 「この経験は、そう、彼女はいるんだけど、彼女がセックスを嫌がったときに、無理にやっちゃったときの経験に似ている」。

 「本番は死んだ魚とヤルようなものだったよ(女のリアクションはゼロ)」。

 「今日は、頭空っぽの、ガム噛んでるハンガリーの娼婦。午後からずっとファックされてたらしくって、俺は……GFE(ガールフレンド体験)みたいなのを期待してたんだけど。しょうがないから、わんわんスタイルで激しく責めたてたけど、少し叫び声をあげるだけ。慣れっこなんだろう」。

 こんなことをされることが本当に普通の仕事だと思えるだろうか? あるいは、社会から疎外された若い女性が、裸で一人、そのような男たち(3分の1が自分の妄想するあらゆる行為をしてもいいと思っているような男たち)と同じ部屋にいることを前提することが、労働組合運動の価値観と一致しているのだろうか? どうしてそれが安全になりうるのか? どのようにそれが職場の最低限の基準に合致しうるのか?

 もしこれらの引用が買春者を代表するものではないとお考えなら、考え直してほしい。それらはけっして最悪の部類ではないのだから。

 ほとんどの人がこのことをちゃんと考えていないというのが本当のところだと私は思う。そして、完全非犯罪化を通じて性産業をノーマルなものにすることが、すでに広く蔓延している女性や少女に対する男性の暴力(これはすでに疫病のレベルに達している)にどのような影響を与えるのかについては、まったく考えていないのだ。

 もちろん、「セックスワーク」は普通の仕事であるとか、必要なのは通常の雇用保護下に置くことだなどと考えてすますことは、心を搔き乱す悲惨な現実に目を向けるよりもずっと簡単なことだ。しかし、民主主義は私たち全員に、自分の頭で考え、決まり文句や集団浅慮(group think)に陥らず、自ら真実を探り、社会問題の創造的解決を図るという重い責任を課している。そして、私たちのコミュニティの中で最も疎外されている人々の幸福を優先させることを求めている。

 そこで、6月7日(火)の午後1時~2時(日本時間で9時~10時)にノルディック・モデル・ナウ!が主催する「労働組合・労働運動はなぜ北欧モデルを支持すべきか」というウェビナーに参加してはいかが? 無料だが、事前の登録が必要だ。

 私たちは、性産業サバイバー、労働組合リーダー、サポートワーカーから、なぜこれらの運動が北欧モデルを明確に支持すべきなのかについて話を聞く予定だ。北欧モデルは、売買春制度が女性に対する構造的抑圧の一部であり、男女間の根強い不平等の原因であり結果であると認識する唯一のアプローチである。また、ピンプや売春業者の責任を追及する一方で、売買春システムに巻き込まれた人々(ほとんどすべての調査で、圧倒的多数が抜け出したいと切望していることが示されている)への支援、離脱支援、代替手段を優先させる唯一のアプローチでもある。

 当日のウェビナーに参加できない方は、その後すぐにYouTubeチャンネルで録画を公開する予定なので、それを視聴してほしい。

出典:https://www.morningstaronline.co.uk/article/f/come-and-find-out-why-labour-and-trade-union-movement-should-support-nordic-model

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投稿者: appjp

ポルノ・買春問題研究会(APP研)の国際情報サイトの作成と更新を担当しています。

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