北欧モデルを攻撃するDecrimNowの公開書簡に対するNMNの声明

【解説】売買春の完全非犯罪化を求めるイギリスの団体 DecrimNow が4月に出した公開書簡についてはすでに、Nordic Model Now! の代表であるアナ・フィッシャーさんがイギリス共産党の『モーニング・スター』に書いた記事をここに掲載しましたが、同じく Nordic Model Now!(NMN) としての声明の翻訳も紹介します。他にも、この恥ずべき公開書簡に対して、アボリショニストからの批判記事が複数出されています。Jo Bartosch, Stonewall backs the decriminalisation of prostitution, reports Jo Bartosch, lesbianandgaynews.com, 11 April 2021; Mary Harrington, Why are social justice warriors backing men who pay for sex over the women who are abused and exploited?, Daily Mail, 17 Apr 2021. 機会があればこれらの記事も紹介したいと思います。

Nordic Model Now!

2021年4月15日

 先週末、英国における性売買の完全非犯罪化を目指すロビー団体「DecrimNow」は、ウェストミンスターの国会議員たちに宛てた公開書簡を発表し、「北欧モデル型の法案を議会に導入しようとする継続的な試みに反対する」ことを呼びかけた。この公開書簡には、多くの学者や団体が署名している。

 私たちのフォロワーの方々から、この出来事に心を痛め、どのように対応すべきかを知りたいとの声がただちに寄せられた。そこで私たちは、この公開書簡がなぜ欠陥だらけなのかを簡潔に説明し、みなさんに何ができるのかを提案する。

  公開書簡のどこが問題なのか?

 公開書簡では、「人身売買の原因は、セックスへの需要ではなく、人々の貧困や選択肢の欠如にある。人々が人身売買業者の犠牲になるのには多くの理由が存在する」とある。

 性的人身売買は、他のどの人身売買に比べても非常に儲けが多く、最近の調査では10倍近い儲けであることがわかっている。これはまさに、多くの男性が弱い立場の女性や少女に対する性的アクセスに喜んでお金を払うからだ。この「豊かな鉱脈」〔買春者の払うお金〕につけこんで金儲けしようとすることが、人身売買の原因ではないと言うのは、極端なまでの無邪気さである。

 たしかに、貧困と残酷な移民法のために、多くの人々、特に女性や子どもは、彼女たちを収入源として利用しようとする人身売買業者に狙われやすい状況に置かれている。しかし、多くの男性が熱心に売春を利用しさえしなければ、彼女たちはこれほど素晴らしい収入源にはならなかったろう。貧困と残忍な移民法に対する解決策は、売買春を自由化することではなく、これらの不公平さに正面から取り組むことだ。

 「セックスワーカー」をより安全にしたいと公開書簡は言うが、それは矛盾語法である。あらゆる形態の売買春は本質的に危険であり、最も基本的な「健康と安全のガイドライン」に沿ったものにすることさえできない

 さらに、すべての証拠が示唆するように、買春行為は男性をいっそう残忍にし、男性の特権を強化し、女性や少女をレイプしたり、ハラスメントをしたり、子どもを性的に虐待したりする可能性を高める。つまり、売買春制度にゴーサインを与えることは(明らかに完全非犯罪化をすればそうなるが)、より多くの女性や少女が性産業に引き込まれ、必然的に広範な被害を受けるだけでなく、一般社会における女性や少女に対する男性の暴力もより増加することを意味する。

 しかし、この公開書簡ではそのようなことはいっさい触れられていない。このことは、彼らが誰の利益を推進しているのかという疑問が生じる。最も弱い立場にある女性や少女の利益を促進しているようには思えない。彼らはどうやら、売買春を貧困や不利な立場に対する解決策として提唱し、それが法律や政策において公認され認められるべきだと主張しているようだ。

 これが本当に私たちの目指すべきものなのか? 貧しい女性や少女が生きるために性を売るしかない世界が? また、それに伴って、膨大な数の男たちがその可処分所得でもって女性と少女に対する性的アクセスを購入するような世界が? それは、私たちが住みたいと思う世界ではない。間違いなく、それによって男女間の不平等はいっそう広がるだろう。

 私たちは、男女間の平等が可能であり、生きるために人間の尊厳に反することを強いられる人がいない、男性の家父長制的な「性の権利」がもはや有効ではないと考えられる世界を目指すことができると信じている。

 この公開書簡では、アムネスティ・インターナショナル世界保健機構(WHO)が完全非犯罪化を支持していることが紹介されているが、これらの組織が、性売買の罪で15年の禁固刑を宣告されたピンプから助言を受けていたことや、彼らの調査が一般的に非常に質の低いものであること、そして彼らの立場が厳しく批判されていることには触れられていない。

 この公開書簡のメインとなる主張は、北欧モデルは「セックスワーカー」の危険性を高め、「セックスワーカー」を非犯罪化することにはならず、人身売買の被害者を助けず、最も弱い立場の人々に罰を与えるというものだ。

 これはとてもひどいものに聞こえるが、私たちはそれは真実ではないと考えているし、少なくとも彼らが主張するような単純なものではない。私たちは以前、これらの議論の多くとその根拠となっている情報源について、例えば以下の記事で取り上げてきた。

    ・ダイアナ・ジョンソン議員の性的搾取防止法案への支持を

    ・北欧モデルvs完全非犯罪化――性産業のサバイバーは何を語るか?

    ・ドイツの元警察官が北欧モデルに反対する一般的な議論を打ち破る

    ・ジュノ・マックとモリー・スミスによる『Revolting Prostitutes: The fight for sex workers’ rights』の批判的レビュー

    ・性差別主義者のプリズム――売買春の取り締まりに関する警察のガイダンス

  彼らは私たちの主張を歪めている

 公開書簡の3ページ目には、私たちの記事からの引用と称するものが掲載されており、ここでは、太字で引用箇所を表示しておく。

「北欧モデルの提唱者は、『離脱サービス』の提供を重視している。しかし実際には、このような離脱サービスは存在しないか、反セックスワーカーのイデオロギーに基づいてサポートすることを条件としている。これには、コンドームなどの現実的な被害軽減手段の提供を拒否することも含まれる。アイルランドでは、北欧モデルの支持者たちも『アイルランドでこれらが実施されているという証拠はない』と認めている。」

 この引用箇所(太字部分)は、2019年の夏に私たちが発表した、アイルランドの女性が売春店経営のために刑務所に入っていることに関する声明がリンクされている。この声明には次のようなパラグラフがある。

「北欧モデル型の法律を制定するだけでは、けっして成功しない。それに伴う一連のトータルな諸措置が必要である。警察、検察、司法への研修、学校や大学での広報活動や教育、回復して外で新しい生活を築くための実際の物質的支援を含む、売春に関わった女性のための質の高いサービスのネットワークへの投資、女性の貧困や不平等に対処するための一般的な措置など。私たちは、アイルランドでこれらのすべてが実施されている証拠を見たことがない」。

 ここでも、彼らが再現した文章を太字にしておいた。彼らは「すべて」という言葉を削除し、私たちが離脱サービスについてのみ言及しているかのような印象を与えているが、私たちが言及しているのは、明らかに多くの一連の措置だ。アイルランド共和国には実際にいくつかの離脱サービスがあるし、私たちもそのことを否定したことはない。完璧ではないかもしれないが、離脱サービスは存在している。そしてその後、いくつかの施策の実施に大きな進展があったことも理解している。

 相手の主張を歪めて伝えることはみっともないことであり、自分の立場が実際には確固たる証拠に基づいていないことを示唆するものだ。しかし実際には、完全非犯罪化を推進する人々の間では、このようなことが平然と横行している(私たちはこの点について別の所で明らかにしている)。そして、彼らの主張がまったく辻褄があっていないからといって、驚くことではない。

  結論

 以上のように、多くの学者、NGO、労働組合がこのような公開書簡に署名したという事実から導き出される唯一の結論は、学術界が悲惨な状態にあり、ピンプの利益を促進する人々が市民社会の諸機関に恐ろしく浸透しているということである。これは、私たちのキャンペーンを強化することに向けた警鐘にならなければならない。

 売買春の被害と、効果的で人道的な解決策である「北欧モデル」についての認識を高めるために、みなさんの助けが必要だ。私たちのメッセージを広めるために、あなたの力をすべて発揮してほしい。

出典:https://nordicmodelnow.org/2021/04/15/response-to-the-decrimnow-open-letter-opposing-the-nordic-model/

投稿者: appjp

ポルノ・買春問題研究会(APP研)の国際情報サイトの作成と更新を担当しています。

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