ニュージーランド売買春改革法20年――明らかになった真実

【解説】以下の記事は、ニュージーランドの売買春改革委法が成立した2003年から20年を踏まえて書かれたものです。この売買春改革法は、世界で初めて売買春のあらゆる側面を完全に非犯罪化したもので、売り手の女性の行為だけでなく、性産業の活動も買春もすべて非犯罪化(つまり合法化)するものでした。世界中のセックスワーク派はニュージーランドの全面的非犯罪化を見習うべきモデルだとして宣伝していますが、実際にはその実態は悲惨なものでした。以下は、ニュージーランドとオーストラリアのサバイバーがつくったアボリショニスト団体「ワヒネ・トア・ライジング」によるものです。

 「セックスワーカーの安全を守る」と称する法律が成立した日から20年が経つ。もしそれが本当だったなら、間違いなくこの日は祝われるべきだろう。毎日、「セックスワーカー」が生きて目を覚まし、子供を抱いたり、愛する人と抱き合ったりすることは、特に祝福されるべきことである。なぜなら彼女たちのすべての生活はとりわけ評価され承認されるべきだからだ。

 しかしながら、性売買の中にいるすべての女性たちに祝福する理由があるわけではない。売買春改革法は、誰も耳を傾けてくれない多くの声を封じ込めているからだ。そのほとんどは脆弱性を持った有色の女性と子供たちの声だ。

 ワヒネ・トア・ライジングの共同設立者でありサバイバーであるアリーマリー・ダイアモンドは言う。「このずっと続いている議論では、多くの声が聞き入れられていない。セックスワーカーを非犯罪化すべきでないとは誰も主張していない。非犯罪化するべきだということに、私たちは絶対に同意する。しかし、ドメスティック・バイオレンス、強要、性的人身売買が増加している今日、完全な非犯罪化は、私たちがみな必死になってなくそうとしている振る舞い――特に買春者の振る舞い――を増長し助長するだけだと認識している」。

 ワヒネ・トア・ライジングはニュージーランドとオーストラリアのサバイバー主導の団体で、性売買の中で搾取されている人々を支援している。同団体が支援する女性たちの多くは、子どもの頃に人身売買された経験があり、ピンプやマネジャー、同僚、さらには家族からの報復を恐れて警察に相談することができない。このような恐れから、彼女たちの声は聞かれないし、見向きもされない。

 政府に聞こえる声と政府に見える声だけが考慮されているようだが、隠されたままの多くの声はどうだろうか。この1年間でさえ、多くの勇敢な女性たちが、自分たちの声を聞いてもらえない、労働条件が劣悪である、女性たちがいまだにマネジャーや経営者にコントロールされている、などの理由で名乗り出たという記事をたくさん目にした。多くの女性、男性、子どもたちが売買春改革法によって保護されていない。なぜなら彼女たちは考慮に入れられていないか、ニュージーランド市民ではないからだ。特に住宅危機が深刻化し、ホームレスの数が急増する中、性売買の中の搾取や暴力が起こっていることを指摘する記事がニュージーランドで無数に出されている。

 「アファーム・ハワイ」という団体が発表した「ニュージーランド・モデルの失敗」という記事の中で、記事の筆者は次のように述べている。「ニュージーランドの売買春の中の人口統計は、人種とジェンダーによって分断されたままであり、圧倒的に女性が多く、その中でもマオリ族と太平洋諸島系の人々が不釣り合いに多い。憂慮すべきことに、人口の約16%を占めるマオリ族が売買春の31.7%を占めている。マオリと太平洋諸島系の人々は、他のどの民族よりも、売買春で支払われる額が最も低く、最も危険な環境である路上売春に従事している可能性が高い(それぞれ63.9%、9.4%弱)。マオリ族も太平洋諸島系の人々も、16歳未満でこの業界に入る割合がパケハ(白人)よりも高く、マオリ族の場合、5倍も高い。マオリ族の従事者の約3分の1は18歳未満で、16歳と17歳で売買春に入る割合は白人より2倍高い。データには明らかな欠落があるが(最新のデータは2007年のものだ)、わかっていることからしても、統計は十分悲惨なものだ」。

 売買春改革法の成立から20年を祝うために多くの人々が集う中、悲劇的に失われた命、苦しみ続ける命、声を上げられない命、強制された命を忘れないようにしよう。考慮されず、無視され、沈黙させられている子どもたちのことを思い出そう。最も重要なことは、人権は少数の者たちだけのものでなく、すべての人のためのものであり、最終的に私たちはみな、他人の性的快楽のために奴隷のように売買される以上の価値があるということだ。

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出典:https://nordicmodelnow.org/2023/06/26/the-new-zealand-prostitution-reform-act-20-years-on-the-truth-uncovered/

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投稿者: appjp

ポルノ・買春問題研究会(APP研)の国際情報サイトの作成と更新を担当しています。

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