ジュリー・ビンデル「ホーハウス(娼館)からホワイトハウスへ――25年間の売買春を生き抜いた黒人サバイバーの自伝」

ジュリー・ビンデル

『アンヘルド』2021年7月16日

【解説】以下は、売買春サバイバーで人身売買問題に取り組む黒人女性活動家ブレンダ・マイヤーズ=パウエルが最近出版した自伝『風吹く路上を去って――メモワール』を取り上げたジュリー・ビンデルの最近の記事です。

 アメリカで3番目に大きな刑務所であるクックカウンティ刑務所があるシカゴのウエストサイドで育ったブレンダ・マイヤーズ=パウエルは窓際に座って、「ホーストロール」(赤線地帯)に向かって歩く女性たちを見ていた。これらの女たちはわずかなお金を稼ぐためにそこへ向かう。ウエストサイドは犯罪率が飛びぬけて高く、近所には売人や常習者があふれていた。

 ブレンダ・マイヤーズ=パウエルが最初に性的虐待を受けたのは――彼女が記憶しているかぎりでは――4歳のときだ。その後、数十年にわたって性産業の場にとどまった。彼女はそのすべてを、極度の性的虐待と搾取の人生を綴った衝撃的な著作『風吹く路上を去って(Leaving Breezy Street)』の中で語っている。

 「私の物語を読む人には不快に感じてほしい」と彼女は言う。彼女の物語は、暴力、虐待、麻薬中毒の物語であり、虐待者は叔父から始まり、祖母が家に連れてきた男たちもいた。その後、複数の暴力的ボーイフレンド、虐待的なピンプ〔ポン引き〕たち、そしてもちろん、ブレンダが「トリック」や「ジョン」と呼ぶ買春者たちがそれに続いた。

 彼女はこうした恐るべき経験を乗り越えて、女性と少女の性的搾取をなくす運動の中心人物となった。このような強靭な回復力は、彼女の生来のユーモアと楽観主義と希望から生まれたものだ。「私の本は、けっしてへこたれない一人の女の物語。私が生きのびるためにどれほどクソ頑張ったかが書かれています。そして、何とか生き抜いて、他の人たちを助けるようになった。ホーハウス(娼館)からホワイトハウスに出世ってわけ〔後述されるように、彼女はホワイトハウスの人身売買対策会議メンバーに任命される〕。どんなもんだい」。

 彼女の過酷な子供時代は、売春の準備過程のようなものだった。外で遊ぶこともできず、友達もおらず、大人たちに不適切なことをされても、ばれないすべを心得ていた。「私は、売春婦とは何であるかを知る前に、売春婦になるよう訓練されていた」。

 ブレンダは、彼女を身体的に虐待していたアルコール依存症の祖母に育てられた(母親は彼女が6歳の時に亡くなっていた)。13歳と14歳で妊娠し、2人の赤ん坊を養わなければならないというプレッシャーにさらされた。彼女は、近所でセックスを売っている少女に助言を求め、その少女がブレンダを地元のピンプに紹介した。最初の客は、彼女がまだ14歳であることを知ると、20ドル余分に払ってくれた。彼女はすぐ、未成年の黒人女性が白人男性に求められていることを知った。

 15年間の路上生活の後、彼女はハードなクラック常用者となり、売春関連の犯罪で何度か刑務所に入ったが、逆に言えば、刑務所に入っているときだけが本当にクリーンな状態でいられる期間だった。

 シカゴ訛りの強いブレンダは、自分が受けた恐ろしい暴力について、歯に衣着せず語る。「あいつらはアナル・レイプに夢中だった。そして売春婦を恐怖に陥れるゲームをするのが大好きだった」。刺された回数は13回、撃たれた回数は5回だった。25年経って、彼女はついに人生の転機を迎える。

 1997年、40歳を目前にした彼女は、買春客にひどい暴行を受け、走行中の車から逃げようとして瀕死の重傷を負った。彼女の服が車に引っかかり、6ブロックも引きずられたのだ。「あの夜、私は顔を半分失った」と彼女は言う――「思いもかけないことだったけど、それが売春をした最後の日となった」。数週間の入院の後、ブレンダは、売春をやめたい女性のためのシェルター施設であるシカゴのジェネシス・ハウスに入所した。

「私は本当に落ち込んでいた。最初の夜、バーバラ(スタッフの一人)が私の小さなベッドにやって来て、包帯を変え、薬を手渡し、体を毛布で覆って、テディベアを脇に挟んでくれた。私は『まじか! ここならいられるかもしれない』と思った。退院してからこの施設に入ったんだけど、この女性は私に優しく愛情を持って接してくれた」。

 施設を出ると、彼女は女性の治療センターで知り合ったステファニー・ダニエルズ・ウィルソンとともに、弱い立場の女性を支援する組織でボランティア活動を始めた。この2人の女性は、売春経験者が運営する被買春女性のためのサービスが緊急に必要だと考えた。それが「ドリームキャッチャー」だ。それはサバイバーによって運営されている。

 彼女は言う。「私は娼婦たち(hos)を愛している。私も娼婦(ho)だったから。私が娼婦を救うのではなく、彼女たちが自分自身を救うのです。もし助けが必要ならば、私に言ってほしい。私はただ彼女たちが這い上がってくるのに手を貸すだけ。ここでは、宗教団体のように『私たちが娼婦を救います!』と叫んで走り回ったりはしない。そんなことはしない。私は、仲間が誰かを必要としているときに、助けの手を差しのべるだけです」。

 ブレンダ・マイヤーズ=パウエルには衝撃的な話が語りきれないほどあるが、最も心がざわつくのは、中年の男たちが未成年の息子たちを連れてきて、息子の童貞を奪って「男」にしてほしいと頼んでくる話だろう。「私はお金をいただいたけど、小さな男の子を後ろに連れて行って、『あんた、ほんとはこんなことしたくないだろ?』と言うと、少年はうなずいて、『嫌だけど、お父さんがやれって』。『じゃあこうしよう、あんたの親父さんには私たちがやったと伝えよう。でも、親父さんのくそ忌々しいお金はちょうだいするよ。だって、あんたの親父はアホだし、どうせ酔っ払っているんだから』」。

 ブレンダはまた、世の中の考え方を変える必要があると断言する。根本的な社会問題があるのだ。「売春婦は、ほとんどアメリカンパイのように語られている。カクテルパーティーのジョークのようなもの。私たちは最古の職業だと言われてるけど、そうじゃない。それは最古の奴隷制、最古の抑圧なんだ」。

 しかし、男には、女性の体を買う権利があるという意識が植えつけられている。「ストリップクラブに行ったり、ポルノを手に入れたりする権利があると彼らは感じている。それが男としての権利だとずっと言われ続けてきたから、そうすることができると思ってるんです。しかし、それは彼らの権利などではない。だから、彼らの子供の頃から始める必要があります。『他の人間を買うことは、自然に反する行為をしていることなんだ』と。そんな風に少年たちを育てなければ」。

 ブレンダ・マイヤーズ=パウエルは、性産業から抜け出して初めて、売買春が男性の価値観というより広い問題の一側面にすぎないことを理解することができた。「回復過程にあるとき、私たちに料理を作って、それを高価な容器に入れて持ってきてくれる郊外の女性たちがいたんです。そして彼女たちから、大学でデートレイプされたとか、結婚生活がひどいものだとか、彼氏にひどい扱いを受けたとか、そういう話をしょっちゅう聞いてた」。「そうか、みんな私たちと同じような目に遭ったんだな、ただお金はあるんだな」と思ったという。

 彼女は、売買春を表現する体裁のいい言葉にも怒りを感じている。「セックスワークだって? 私には雇用権もなかったし、休暇もなかったし、退職金もなかった。それはいったい労働人口のどの部分なのか? 口当たりをよくするために、なぜ『セックスワーク』と呼ぶのか。そのゴミクズを私の喉に押し込むのをやめてほしい。私はそれをありのままに呼ぶ。私たちは売春させられた女であり、人身売買業者とそれを利用する男たちの支配下にあった。私はセックスワーカーなんかではない」。

 ブレンダが傷を癒すのに何年もかかった。施設を出た当初、彼女はただ「普通になりたい」、税金を払って他の人と同じように暮らしたいと思っていた。しかし、他の女性たちがどのような生活をしているのかを知った彼女は、取り残された人々を支援するために再び路上に出た。

 彼女はクラックの習慣を断ち、2人の娘と再会し、他の女性を支援するために自分が果たすべき重要な役割を徐々に理解していった。彼女はついにFBIから表彰され、ホワイトハウスの米国人身売買対策会議のメンバーにも任命されるまでになった。「自分が経験した悪夢を、誰の女の子にも経験させたくなかった」からだ。

 『風吹く路上を去って』は、ハッピーエンドのホラーストーリーだ。しかし、現在、世界には約400万人の人身売買被害者がおり、そのうち100万人が子どもで、99%が女性と言われている。これらの人々にとっては、悪夢はまだ続いている。

出典:https://unherd.com/2021/07/prostitutes-are-slaves-not-workers/

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投稿者: appjp

ポルノ・買春問題研究会(APP研)の国際情報サイトの作成と更新を担当しています。

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