ジュリー・ビンデル「オランダの『飾り窓』売買春の実態」

【解説】これまで売買春が合法化された国(ドイツ、オーストラリア、スイス、ニュージーランド)の実態について紹介してきましたが、オランダについてはあまり紹介していませんでした。ジュリー・ビンデルによる以下の記事は、2019年3月といういささか古いものですが、オランダのアムステルダムにおけるいわゆる「飾り窓」売買春の実態の一端について明らかにしているので、ここに紹介します。

ジュリー・ビンデル

『スペクテーター』2019年3月22日

 アムステルダム市は、同市の最も悪名高い「飾り窓」売買春エリアへのガイド付きツァーをついに禁止することにした。この地域はワレン地区として知られ、買春ツァーの最終目的地である。オランダが、それ以前からすでに十分はびこっていた性売買を2000年に合法化して以来、明らかになったのは、小さな下着だけを身に着け作り笑いを浮かべた女性たちが飾り窓の中で展示され、食肉のように売りに出されるだけでなく、この地域に押し寄せて人間動物園を見て笑いとばすツァー客の集団によっても同じように扱われるようになったことであった。

 私は、アムステルダムのまったく身の毛のよだつ売買春市場についてリポートするために、何十回となくアムステルダムを訪問する機会があった。昼夜問わずワレン地区を歩いていると、合法化が被買春女性とその他のオランダ社会にとっていかに「素晴らしく」機能しているかと説明されているツァー集団にいつも出くわす。これらの売春店の中で実際になされていることを美しく覆い隠す話が得々と語られているので、まるでそこで語られているのが投資銀行か何かではないかと本気で思ってしまうほどである。

 この飾り窓ツァーは何百万ドルもの儲けを上げたし、無害な楽しみとみなされている。2005年、イギリスの老舗の旅行代理店トーマス・クック社は、アムステルダムのさまざまな赤線地域をめぐる夜間ツァーを開始した。この企画には、かつて合法売買春の中で働いていた女性たちから「システム」について話を聞く場も設けられており、どんな年齢の子どもでも参加できるようになっていた。実際、トーマス・クック社は、3歳未満の子ども用の無料チケットを提供しさえしていた。トーマス・クック社のプレスリリースは、この2時間のツァーが観光客を「有名な赤線地域の奥深くへといざない、世界最古の職業の魅惑の姿を提供します」と謳っている。

 オランダの性産業は搾取のない業界としてしばしば称揚されているが、実際には、東欧、アフリカ、東南アジアから合法地帯で働くためにEU諸国へと流れ込んで来た貧困で立場の弱い女性たちの大集団によって形成されたものである。彼女たちの大部分は、よりよい生活とか多くの金を稼ぐチャンスとかを約束する犯罪組織や個々の業者によって人身取引されてやって来た。人身取引や、これらの女性たちの間でのヘロイン中毒・コカイン濫用の急増は、彼女たちがますます絶望的な状況に陥っていることを物語っており、したがって買春客の権力がますます増大していることを意味している。

 合法化がなされて以降、飾り窓や売春店を経営し売買春の稼ぎで生活している男たちは、今ではピンプではなく、「マネジャー」とか「ファシリテーター」と呼ばれている。革のジャケットを着た男たちがいつも飾り窓から数フィート離れたところに立っていて、いかにものんきそうにおしゃべりしているが、自分たちの「商品」をしっかりと見張っている。その一方で、女性たちは凍えて、疲れ、次の買春客をおびえながら待っている。私はこれらの女性たちの多くにインタビューしてきたので、彼女たちがいかに絶望的な状況にあるか、そしてそこから脱け出すことをどれほど切望しているかをよく承知している。

 グローバル性産業に関する私の著作のためのリサーチの一環としてオランダに滞在していたとき、私は専用ツァーガイドを雇った。彼は、まるで18世紀の大工みたいな恰好〔ヒップホップ風のストリートファッション〕をした若者で、中年女性を飾り窓売春店に案内しながら、「セックスワーク」は非常にエンパワー的で他のどの仕事とも同じだと語ることが、とても「意識の高い(woke)」ことだと思い込んでいた。そこで私は彼に、その女性はあなたとセックスしたくもないのに、お金を払って彼女の陰部に挿入する行為がどうして立派なことだと思えるのか尋ねてみた。彼は、女性の多くは「そういうセックスが好きなんだ」と言ったが、実際にそうであった具体的な事例を一つも挙げることができなかった。私は彼に、お金がどうしても必要だというとき、マクドナルドで単純作業をするのか、それとも数ユーロのために、他の男が自分の肛門か口に不衛生なものを突っ込むのを許すのか、どっちがいいか尋ねてみた。すると突然、バーガーを引っ繰り返す仕事がこの若者にとってまったく魅力的なオプションになった。

 ワレン地区売春インフォメーション・センターによって訓練された有料のツァーガイドたちは、あたかも売春が女性にとって入手可能な最良のキャリアであるかのように描き出す商業ビジネスであり、私がこれまで耳にした中でも最大級の嘘の数々を振りまいている。彼らには、合法化がいかにうまくいっているかというプロパガンダを何十万人ものツァー客に広めてきた責任がある。そしてこれらのツァー客たちが今度はこのでたらめを国に帰ってから友人や同僚たちに吹聴するのである。このツァーは、女性と少女に対する醜悪な人権侵害を生み出している産業を支えてきた。いちばん最近ワレン地区を訪問したおり、私は「飾り窓」売春店の外に立っていた若者にインタビューしたが、彼は自分が初めてセックスを買ったのは12歳の時だと誇らしげに語った。

 10年以上も経って、オランダの政治家たち、政策策定者たち、警察、市民は、合法化が壮大な失敗だったことを認めるようになってきている。この体制のもとで人身売買とピンプ行為は増大し、組織犯罪がはびこり、女性たちはいっこうに暴力から保護されていない。赤線地域へのツァーは、売買春の合法化が大成功だったとツァー客たちに信じ込ませるプロパガンダを与えた。たしかに、合法化は大成功だった。ただしピンプやその他の搾取者たちにとってだ。

出典:https://blogs.spectator.co.uk/2019/03/good-riddance-to-amsterdams-disgraceful-red-light-district-tours/

投稿者: appjp

ポルノ・買春問題研究会(APP研)の国際情報サイトの作成と更新を担当しています。

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