ジュリー・ビンデル「リーズ市、ついに売買春容認政策に別れを告げる」

ジュリー・ビンデル

『スペクテーター』2021年6月17日号

【解説】イギリスでは一般に売買春は禁止されていますが(禁止主義)、実際には売買春は横行していました。そうした中、リーズ市の労働党政権は、2014年に「管理地域」政策と呼ばれる政策を実行し、ホルベックという貧困地域に売買春を自由化したゾーンを設けました。この政策に対して地元の住民やフェミニストは一貫して反対しつづけ、禁止主義でも管理合法主義でもない第三のアプローチ、すなわち売買春が助成に対する暴力であることを認識し、買春者やピンプを処罰しつつ、被買春女性に手厚いサポート(離脱サービスを初め)を提供するという北欧モデル型立法を要求していました。そうした努力が実って、ついに先日、リーズ市議会は、新型コロナ・パンデミックで一時的に閉鎖されていたこの管理地域を再開しないことを決定しました。以下に紹介するのは、このことについて論じたジュリー・ビンデルさんによる最新記事です。

 リーズ市の「管理地域(Managed Zone)」では、最も権利を奪われ自暴自棄になっている女性たちの性を合法的に買う許可が買春者に与えられていたが、ついにそれに別れを告げる時が来た。

 フェミニスト、地元住民、そしてこの管理地域で以前に買春されていた女性たちによる7年間ものキャンペーンを経て、今週、リーズ市議会は、新型コロナのロックダウンが終了した後、この売買春地帯を再開しないことを発表した。

 この「管理地域」政策が開始されたのは、リーズ市中心部の路上売春を取り締まるために警察や議会に圧力をかけたことがきっかけだった。使用済みコンドームを踏んづけたり、車をゆっくり流しながら路上の女性を物色する男たち(kerb crawlers)の嫌がらせをかわしたりすることにうんざりしていた地元の住民や労働者たちから、あまりにも頻繁に苦情が寄せられたので、彼らをなだめるためにこの管理地域が設定された。

 フェミニストたちは長い間、警察が女性たちを逮捕するのをやめるよう要求していた。女性を逮捕するのは不当であり、また逆効果でもあるからだ。というのも、結局、裁判所が逮捕された女性に罰金を科すと、経済的に困窮した女性たちが罰金を支払うためにお金を稼がなければならず、したがって再び売春をするという悪循環が生じるからだ。

 本来、議会とウェスト・ヨークシャー警察は、問題を特定地域に封じ込めるのではなく、女性たちを支援し、買春者を処罰するという選択をすることもできたはずなのだ。管理地域の運営に莫大なお金を注ぐのではなく、そのお金を、売買春からの離脱支援と薬物のリハビリテーション・サービスに回すことができたはずだ。また、車で女性を物色する行為(kerb crawling)や、売春目的で女性を勧誘することが犯罪であることを、買春者に知らせる啓蒙活動にもそのお金を回すことができたはずなのだ。しかしリーズ市当局はそういうことをせず、ピンプ〔ポン引き〕や売春業者が女性を搾取しやすい環境を作ることで、女性たちを地獄のような生活に置き去りにし、他の住民にも不安を抱かせる政策を選んだ。

 だが、2014年6月に設定されたこの「管理地域」政策は、大失敗に終わった。リーズ市南部の貧困地域であるホルベックに設置されたこのエリアは、2016年1月に常設化されたが、その数週間後には、この「地域」内で被買春女性が買春者によって殴り殺されるという、ダリア・ピオンコさんの残虐な殺人事件が発生している。

 2016年、この「管理地域」で〔売春に〕従事していた一人の女性が、ラジオクルーから「今は安全だと思いますか」と聞かれ、「いいえ。車に乗ってしまえば、警察は何もできませんからね。助けてくれはしません」と答えている。

 地元の住民や企業からの苦情には、夜間に何度も起こされる、夜8時から朝6時までという指定された時間以外でもピンプが女性をナンパする、子どもが路上で誘惑される、庭に侵入される、地元の人が買春者に嫌がらせされる、などがあった。

 2020年初頭、私はこの「管理地域」に住む一人の女性に話を聞いた。「(男たちは)逮捕されないから、何をしてもいいと思っています。私は実際レイプされたことがありますし、ある男は私に放尿してから写真を撮ったこともあります」。「管理地域政策(managed approach)」の最初の年に、警察が発表した数字によると、レイプの訴えはほぼ3倍に跳ね上がり、以前よりも大幅に高くなっている。

 サラ・フィールドはリーズ市議会議員で、2017年に労働党から離党して、「ガーフォース・アンド・スウィリントン独立党」に鞍替えしたが、労働党の指導者が「管理地域」を支持し続けていることに嫌気がさしたためだ。管理地域廃止の報を聞いて、彼女は私にこう語った。

「リーズ市の労働党政権が、路上売春に対するいわゆる『管理地域政策』をやめる必要があることをようやく認めたことを嬉しく思います。彼らは何年もの間、このような現代の奴隷制を公認するような行為をやめさせるために精力的にキャンペーンを行なってきた同僚の議員やフェミニスト、住民の意見に耳を貸そうとしませんでした。」

 「管理地域」政策の批判者たちは市議会に対して、次のような方向で働きかけてきた。すなわち、需要を煽るピンプや買春者に対してはゼロ・トレランス政策を実施しつつ、被買春女性向けの離脱サービスに適切な資金を提供することだ。「私たちは、売買春を男性による性暴力の一形態と認識し、北欧モデルに基づいたもう一つのアプローチを推進する必要があります」とサラ・フィールドは言う。

 リーズ市議会は、この「管理地域」を設置して以来、売買春擁護論者たちがでっち上げた誇大宣伝にしがみついてきた。昨年発表されたハダースフィールド大学による「独立の」評価報告書では、当初から安全性、取り締まり、公序良俗に関わる重大な問題があったことが明らかになっていたにもかかわらず、この「管理地域」は成功したと評価されている。このようなごまかしにもかかわらず、多くの住民や企業経営者たちがこの「管理地域」を嫌っていることは明白だった。

 この報告書において調査者たちは、「英国の既存の法律の範囲内で、路上での性行為に関連する問題を軽減するための、より効果的な介入や方法は見つからなかった」と結論づけている。しかし、私はより効果的な介入があると言いたい。  2006年にイプスウィッチ〔イギリス・サフォーク州の州都〕で5人の売春婦が殺害された後、イプスウィッチ市議会と警察が行なったことと同じことを行ない、リーズ市民に女性への虐待は許されないというメッセージを発信することだ。この恐ろしい社会実験の運営に注ぎ込まれていた資金は女性への支援や離脱プログラムに充てられるべきであり、このことを、性的搾取の被害に遭いやすい女性たちに理解してもらうことだ。いかなる女性も、自分と子供を養うために、虐待や下劣な行為に耐えなければならないはずがない。リーズの男たちは、買春行為が大目に見られる政策が終わりを告げたことを知る必要がある。

出典:https://www.spectator.co.uk/article/so-long-to-leeds-s-appalling-prostitution-zone

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投稿者: appjp

ポルノ・買春問題研究会(APP研)の国際情報サイトの作成と更新を担当しています。

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