ジュリー・ビンデル「なぜリベラル派は性売買における人種差別に目を閉じるのか?」

【解説】以下の記事は2019年のものです。昨今、欧米および世界の左翼やリベラルたち、あるいは自称「アンティファ」たちの多くは、セックスワーク論を支持して売買春の非犯罪化を推進し、またトランスジェンダリズムを支持してラディカル・フェミニストに対する暴力的な攻撃を繰り返しています。彼らは人種差別反対、レイシズム反対については声高に唱えますが、売買春がまさにそのような人種差別に立脚していることを無視し、セックスワーク論や非犯罪化を唱えているのです。筆者のジュリー・ビンデルはこのような卑劣なダブルスタンダードと偽善を暴露しています。

ジュリー・ビンデル

『Unherd』2019年2月28日

 性売買がミソジニーに貫かれているのは秘密ではない。この数十億ドルの産業は女性と少女の痛みと抑圧の上に打ち立てられている。しかし、リベラル左翼の側にいる多くの者たちはこの虐待的産業を支持している。黒人、褐色、先住民の女性と少女が真っ先に売買春へと売り買いされているという事実でさえ、これらの弁護論者たちの心をかき乱さないようだ。いったいどうしてなのか? 他のどんなBME〔黒人や少数民族〕関係の問題でも、彼らは屋根の上から絶叫するだろう。ところが、売買春を擁護する男の利益はどうやら、売買春を支えている人種差別をも凌駕するものであるようだ。

 こうした観点から、「SPACEインターナショナル(SPACE International)」は、性売買における人種差別に焦点を当てた世界初のシンポジウムを組織した。SPACEインターナショナルは、売買春が女性抑圧の原因であり結果でもあると確信するアイルランドの性売買サバイバーたちが立ち上げた団体である。

 ロンドンのコンウェーホールで開催された「性売買に反対する有色女性会議(Women of Colour against the Sex Trade)」は満員御礼のイベントとなり、あらゆる年齢層とエスニシティの女性たち(とごくわずかな男性たち)が詰めかけた。オーガナイザーの一人であった私は、抗議が来るリスクを心配していた。ただし、心配していたのは、一般に予想されるような暴力的なレイシストや自分のビジネスモデルを防衛するピンプたちによるものではなく、国際セックスワーカーズ・ユニオン(International Union of Sex Workers)(多くの似非「セックスワーカーの権利」組合の一つ)のような自称「進歩派」からの抗議である。幸いなことに、2017年の私の新著出版記念シンポの時と違って、抗議者たちは姿を現わさなかった。おそらく、黒色と褐色の性売買サバイバーたちの声をふさぐのはさすがに体裁が悪いと思ったのだろう。

 とはいえ、白人中産階級の学生やその他の若者たちの多くが取っている流行りの「目覚めた(woke)」立場〔「woke」とは英米圏の新語で、社会的不公正や人種差別などの問題に目覚めたという意味。日本語で言えば「意識高い系」に相当する〕は、「セックスワークは仕事だ(sex work is work)」というものだ。このイデオロギーによれば、反売買春の立場を取ることは「ホワイト・フェミニズム」を実践することである。

 だが、主に金と権力のある男たちによって支配されている産業を、しかも、それを維持するために、最も貧しく最も権利の剥奪された女性と少女たち(とりわけ、発展途上国や戦争によって引き裂かれた諸国出身の女性と少女たち)の搾取にもとづいている産業を、どうしてフェミニストが支持することができようか? イギリスのような豊かな国々において、売買春に対する需要は、女性と少女たちが東南アジア、西アフリカ、東欧などから人身売買されてくる事態をもたらす。左翼たるものが、一方で被抑圧民衆の解放を訴えながら、他方で地上における最も搾取的な産業を支持することが、どうしてできるのか?

 コンウェーホールでの雰囲気は熱の帯びたものだった。発言者たちは、どうして性売買が閉鎖されなければならないかを情熱的かつ誠実に説明した。発言者の半分以上は売買春から逃れてきた人々であり、他の人々も、性的搾取に囚われた女性と少女たちを支援している人々だ。

 ニコール・ダニエルズは、アフリカ系アメリカ人の性売買サバイバーで、カリフォルニア州で、売買春に入るリスクのある女性と少女たち〔家出少女や貧困女性など〕を支援してきた。彼女は熱狂的な聴衆に対して次のように述べた。「性売買は人種差別の上に打ち立てられている。黒人女性は、(白人女性よりも)少なく支払われて、より悪く扱われている」。

 ブリジェット・ペリエは、12歳の時に売買春へと引き込まれた先住民カナダ人活動家である。何年にもおよぶ虐待と貶めの後でようやくペリエは性産業から脱出し、フェミニスト・アボリショニストの団体「セックストレード101(Sex Trade 101)」を立ち上げた。ペリエは、売買春支持派のロビー団体「イギリス売春婦コレクティブ(English Collective of Prostitutes)(ECP)」のメンバーが、以前の論争の中で、彼女のことを「血ぬられた手」の持ち主と糾弾したことを語った。彼女が、セックスに金を払う男を犯罪化する法を導入するためのキャンペーンをしているからだ。

 ECPは、買春客を追及すれば男はより神経質になり、潜在的により暴力的になるのだと論じる。しかし、この法を導入した諸国は、その逆が真実であることを示した。男たちは抑止され、女性たちは、危なっかしい買い手に出くわした場合には警察によってサポートされる。なぜなら彼女はもはや犯罪者とはみなされず、買い手の男の方が犯罪者とみなされるからだ。

 コンウェーホールで、ペリエは、連続殺人犯ロバート・ピクトンの被害者の一人の娘を養育していることを話した。カナダ人農夫のこの連続殺人犯は、69人もの先住民被買春女性を殺害したことで有罪となった。「私たち女性を殺すのはスティグマでもなければ、法でもない」と彼女はほとんど叫ばんばかりに言った――「私たちを殺すのは、私たちを買う男たちだ」。

 性売買の合法化が「目覚めた人々」によってかくも声高に論じられるようになっている昨今、レーラ・リーフェルト(Roëlla Lieveld)のような反人身売買活動家の話を聞くことはきわめて重要である。アムステルダムを拠点として、人身売買と性売買に反対するキャンペーンを展開している団体「シェア・ネットワーク(Share Network)」の創設者であるリーフェルトの言うところでは、アムステルダムの売春店の飾り窓で食肉のように展示されている被買春女性の大多数はルーマニアと西アフリカから来ている。性を売っているオランダ生まれの女性もわずかながらいるが、彼女たちは、広告目的で、ピンプによってオランダの旗か「NL」(Netherland)という文字が書かれたステッカーを貼られている。

 ヴェドニタ・カーターはアフリカ系アメリカ人のアボリショニストで、1996年に「ブレイキング・フリー(Breaking Free)」を立ち上げ、ミネアポリスにおいて売買春の中の女性と少女たちを支援している。「黒人女性は社会という樽の底に位置しています」とカーターはコンウェーホールで語った――「私たちといっしょに売買春と闘うことを拒否するならば、もはや『シスターフッド・イズ・パワフル』と言うことはできません。黒人の女性と少女の体を売買することを支持することは、私たちに対する裏切りです」。「Black Lives Matter」のようなキャンペーンを支持している白人左翼は、性売買の中で搾取されている黒人女性の生(Lives)についてもっとよく考えてみるべきだろう。

 「平等社会を求めるアジア女性」のスザンヌ・ジェイは、男性による有色女性の搾取の歴史について語った。「フィリピンの米軍兵士たちは、彼らが搾取していた女性たちのことを『小さな褐色のファッキング・マシーン』と呼んでいた」。ジェイは日本軍による「慰安婦制度」についても語った。それは、日本軍の部隊が使用できるよう女性たちを性奴隷状態に置いておくという身の毛のよだつ制度である。これは、第2次世界大戦の勃発以前から始まり、優に15年以上続き、アジア太平洋地域において大日本帝国がその部隊を展開した各国で広く実践された。米軍は、日本を占領した戦後の数年間に、このシステムを復活させさえした。

 そして、発展途上諸国における軍関係者による性的搾取は今日も続いている。国連の平和維持部隊においてさえこの問題は蔓延し日常化している。売買春は性的・人種的不平等の上に打ち立てられている。そして、発展途上諸国における有色の貧困女性たちと、彼女たちを助けると称する白人男性の救済者たちとのあいだの権力の不均衡ほど歴然としているものはない。私がインタビューした買春客の中には、極度に貧しい女性たちに金を払ってセックスをすることは親切な行為である、なぜならそのおかげで彼女らは少なくとも食べることができるのだからと言い切る図太い神経の持ち主が何人もいた。

 アイルランドの性売買サバイバーであるレイチェル・モランは、「セックスワーク」は飢えるよりもましだと主張するヒューマンライツ・ウォッチの代表に反論してこう述べている。「食事をすることもままならない人がいるならば、なすべきことはその人の口に食料を与えることであって、ペニスを突っ込むことではない」。売買春は「セックスワーク」であり、それが女性にとっての真の選択であるという見解を信奉している「目覚めた(woke)」男たちと女たちは、モランの言葉を噛みしめるべきだろう。

出典:https://unherd.com/2019/02/theres-nothing-woke-about-the-sex-trade/

投稿者: appjp

ポルノ・買春問題研究会(APP研)の国際情報サイトの作成と更新を担当しています。

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