【解説】CATW(女性人身売買反対連合)やその他のアボリショニスト団体によって作成された以下の「フェミニストの原則とインターセクショナリティの明確化」という共同声明は、セックスワーク派・トランスジェンダリズム推進の諸団体によって6月30日に出された共同声明「The Affirmation of Feminist Principles」(邦訳)に対抗して出されたものです。6月30日の声明には、トランスジェンダリズムにもとづくさまざまな主張(われわれはもちろんそうした主張の多くに異論を持っている)に加えて、「セックスワークを労働として承認すること」が掲げられています。以下の共同声明はその一点に対する反対声明です。署名者・署名団体をまだ募っているので、共感される方はぜひ署名してください。
本声明は、女性運動におけるインクルーシブネス(包括性)とインターセクショナリティ(交差性)を支援するためのイニシアチブが、労働として売買春を促進するために利用されていることに強い懸念を抱いて、以下に署名する世界中の諸団体および諸個人によって作成されたものです。「セックスワークは労働である(sex work is work)」という考え方は、あらゆる形態の搾取と差別に反対することを謳った「フェミニスト原則の再確認を呼びかける」という声明に示されている価値観とは、根本的に相容れないものであると私たちは考えます。
私たちは、性売買が組織的に貧困を食い物にし、有色女性、子ども、トランス女性、その他の周辺化されたコミュニティに不均等に大きな被害を与えていることを知っています。性産業を教育や雇用の代替手段として正当化しようとする動きは、ジェンダー平等という私たちの長期的な目標に逆行するものです。売買春は、私たちを抑圧し続けている家父長制の権力システムを明確に表現するものです。私たちは、男性の異性愛的規範が、女性や、現状に適合せずその脅威となる人々に対する、系統的な抑圧と構造的な差別につながっていることに同意します。真にインターセクショナルな原則に基づく普遍的な規範は、性(sex)とジェンダーの不平等を維持・促進する社会的に構築された有害なステレオタイプや性別役割(gender role)を永続させるのではなくて、人類の豊かな多様性を承認するものです。私たちは、男性が他の人々の身体に対する権限(entitlement)を持つことは、奴隷制度、植民地主義、その他の形態の人種差別、ジェノサイド、支配の特徴であることを認識しなければなりません。売買春のシステムは平等に反するものです。
したがって、私たちは、人権の普遍性、差別撤廃、暴力からの自由というフェミニストの原則を再確認するとともに、人権は性別(sex)ないしジェンダーにかかわらず、すべての人に固有のものであるという理解を承認します。そして私たちは、ジェンダー平等の目標として売買春を含めることを拒否します。私たちは多くの人々とともに、すべての人間が社会経済的な平等、健康、尊厳、そして暴力のない生活を享受する権利を保証された、売買春のない世界のために闘います。これこそ、私たちが実現を目指すフェミニストのビジョンです。
出典:https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSe4hHqYqiOor9xsnxR7KeC_7mTVRrN24HpYw8I_H_bvDX28Dg/viewform
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